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前編T
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俺は今、自分のベッドの上で課題曲の詩を考えている。

―パシャ、パシャ…

「ぁあ、その表情も可愛いです、翔ちゃん」

「……」

しかし、それを邪魔するかのごとき部屋中に響き渡る那月の声と写メのシャッター音。

―パシャパシャッ…

「あっ、翔ちゃんそのままでもう一枚っ!」

「………」

楽しそうに、アホ毛をピョコピョコ動かしながら俺を撮り続ける那月。

いつものことだが、こいつは何でこんなに俺の写真を撮りたがるんだ…。

―パシャ、パシャ

「ちょっと動かないで下さいね、うん良い感じです〜!」

「…………」

まぁ、そんな事なんか今はどうでもいい…、マジでウザッたくなってきたから…。

「だぁああーーー、うるっさいっつーの那月っ!!」

翔は那月の胸ぐらを掴んで大声で怒鳴った。

「ぁあ〜、その怒った顔も可愛いです、翔ちゃん!」

「ったく…」

怒っていると言うのに、那月はそんな事を微塵も感じていない陽気な顔で、目の前の翔の顔をパシャリと一枚撮る。

「おい那月っ、お前なんでそんなに俺の写メばっか撮ってんだよ、他にも可愛いもんはいっぱいあるだろうに!」

「え〜、何言ってんですか〜翔ちゃん、翔ちゃん以上に小っちゃくて可愛い人なんて居ませんよぉ〜」

「小っちゃいって言うなぁあーーーっ!! はぁ…お前バカかっ! 俺は男だぞっ、俺なんかより七海の方が全然可愛いだろ、女なんだし…」

俺は可愛いと言われるのがキライだ。

あと小さいとか身長の事を言われるのも。

でも那月にだけは可愛いと言われても何故か全否定出来なくて…、言われると怒るけど嫌じゃないと言うか何と言うか…、変な感覚なのだが…。

「春ちゃんはマスコット的な可愛さなんですよぉ〜、翔ちゃんは違います」

「ぁあ? どう違うんだよ?」

「翔ちゃんは〜、人として内面にも外面にも可愛い魅力があるんですっ!」

「っ…//」

キリッ、じゃねぇよ…。

何故にこんなにこっ恥ずかしいことをサラリと言えるのか、那月の脳内はどうなっているんだよ?

「どうしたんですか翔ちゃん?」

俯く翔に心配したのか、那月は姿勢を低くして翔の顔を覗きこむ。

「なっ、なんでもねぇよっ、クソっもう課題の詩も思い浮かばねぇ! 風呂、入ってくる…」

「お風呂ですかっ?」

「おいっ何笑顔になってんだよ、那月が期待する様な事なんか起きねぇからな!!」

「ふふっ、分かっていますよ翔ちゃん、残念ですが僕も今から少し用事がありますから…」

残念って、用事なかったら俺はどうにかなっていたのだろうか…。

パタンとケータイを閉じた那月は翔に掴まれ乱れてしまった襟元を整えると、教科書や必要な道具を持って部屋を出て行った。

「では翔ちゃんまた後で!」

「あ、ああ…じゃあな」

意外と素直に出て行った那月に翔はなにか物足りなさを感じながらも、備え付けのバスルームへと向かった。





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