SS reflection in the water(親政/微死ネタ) reflection in the water 夜の海は嫌いだ。 俺がそう言うと、お前は一つしかない綺麗な琥珀の瞳を、満月みたいに丸くした。 月と同じ色の癖に、きらきら光るその様は、太陽なんかよりずっとまぶしい。 「嫌いって、お前仮にも海賊だろうが」 そうしてお前は、駄々をこねる子供を相手にするように笑う。 確かに、海に生きる男が海を嫌いだなんて、そんな話聞いた事もない。 だけどお前は、夜の海を知らない。 「嫌い、なんだよ」 お前は、何かを言いかけて、結局、そのまま口を閉ざして。 ただ、そっと、その細い腕を俺の躯に回し、何かから守るように抱き締めた。 甲板の上を、冷たい風が吹き抜ける。 俺は、僅かに残った温もりを持て余すように、じっと自分の掌を眺める。 何をしても消える事のない紅に、思いを馳せる。 闇を映した水鏡。 尽きる事なき漆黒の中。 船は浮かぶ。 行く宛もなく、ただ、独り。 夜の海は嫌いだ。 境目のない蒼に消えていったお前を、探し出す事さえ出来ないから。 (うつしだすのは、おれのこころ) end [前へ][次へ] |