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お熱いのがお好き【メイド主/エースでギャグ?甘夢/続くかも?】


熱い。
視線が熱い。
真っ直ぐと射抜くように、心を見透かされているかのように見つめる視線と混じり合う。







『お熱いのがお好き』





どうしてこうなったのか。頭が理解に苦しんでいる。
だが、これがよく恋愛ドラマにあるシュチュエーションだというのは分かった。

細いが程よく日に焼けた肌が健康的な男らしい両腕が自分の両頬を掠めるように壁についている。それは顔を動かすことができないくらいに近い。至近距離につい最近白ひげに入ってきて色々問題児な雀斑美人(勝手に呼んでる)ことポートガス・D・エースがいた。

年も近いせいか何故か世話役に押し付けられた彼は最初はまぁ、口が悪いわ。目を離すと船長を殺しに行こうとするわ。飯は食わないわで何度か海に叩き落とした成果もあってかは知らないが最近では『姉』と慕ってくれていたのだが…これはどう言う状況なのだろうか。

物置に押し込まれてこの密閉空間で壁ドン状態で互いに沈黙を保っている。物置といっても小部屋に近いのだがそれでもこの至近距離なので狭く感じてしまう。

踵に酒瓶の入った木箱に当たると同時にエースは口を開いた。

「小夜子姉」
「…なんでしょうか。」

これが容姿残念の中身クズ野郎なら良かったのにと小夜子はつくづく思った。
簡単にこの腕をすり抜けることはできる、逃げ出すことも反撃することもできるだろう。
自分はこの船で厄介になって一年、修行を積んで覇気を身に付けることができた。

いくら彼が悪魔の実の能力者で腕が立つといっても、少なくともそこらの輩より一発は彼に攻撃できると踏んでいる。のだが…この状態からはまだなにも言えない。

「あの、エース。私、洗濯物を皆さまに届けなくては…」
「その前に…答えてほしい。」

外に散らばった綺麗に干した洗濯物の山を見て誰かこの異変に気付いてほしいと心底思った。

小夜子は内心溜息を着いた。深く、深く。そして苦笑いを浮かべた。

「近いうえに…暑いのですが」
「…分からねぇんだ。」

「何がですか?」
「……」

「黙り込んでいるのはキャラじゃないと思いますがね。エース」
そう言い終えると同時に抱き締められる。
それがあまりに力強いものだから、一瞬固まってしまった。

「…なんなんでしょうね…困ったさん。」
ぽんぽんとエースの頭を叩いてやる小夜子。エースは黙ったままなにも喋らない。

「そんな初めて恋を知ったような少年のように熱くならないで下さいな。」
「……っ」

「おや、図星ですか?」
小夜子は心地よいテンポでエースの頭を優しく叩く。黙ったままのエースの耳が赤くなっているのを見過ごさなかった。
彼は恋をしているのだと瞬時に理解した。

「で、誰が好きになったんです?まさか、マルコ様…「なんでマルコになるんだ!?」

「仲いいじゃないですか。あ、もしやサッチ様。「もしやじゃねぇよ!!なんでそうなる!?」

「ですから、仲が良いじゃないですか。それを言ったら容疑者が多数になってくるのですが…「あんただよ!」

おや……?

「おやおや、それはそれは」
「ばあさんみたいな返答すんじゃねぇ!」

「いえ、少し頭がついていかなくて…私に好意を持っていると、考えてよろしいですか?」
「……あぁ」

「その好意はどの意味を持つのでしょうか…ね。兄弟として、仲間として、友人として…恋愛対象として?」
「全部…だと思う。」

「ほぉ…」
「おちょくってんのかよ!」

小夜子はエースの薄い唇に人差し指をあてて、言葉を遮った。

「少し声を抑えましょうね。バレますよ?」
「……なんで、そんな冷静なんだよ。」

「申し訳ありません。私、そのような教育を受けて育ったものですから」
「で…答えは」

「あぁ…そうですね。」

するりと頭を叩いていた小夜子の手がするりと後頭部から首筋へと下へ、そして腰へと回る。

「どうしましょうか…ねぇ」
手袋越しの指が唇を厭らしくなぞり、小夜子がにやりと微笑む。

「貴方のことは好きですよ?好きですが、貴方は私になにを求めますか」

愛?
心?
身体?
ひっくるめて総て?
「可愛いエース、私は貴方が大好きですよ。懐を許した相手にしか懐かない子猫のような貴方が好きです。でも、私…秘密があるんです。」

愛おしい、そう言いたげな微笑みで小夜子はエースを抱き締めた。狭い密室で2人の吐息が互いの鼓膜を微かに震わせる。

「秘密?」
「えぇ。実は私…」

エースの手に自分の手を重ね、導くように小夜子は自らの股間へ手を動かせた。ほっそりとしたエースより小さく、白い指が添えられてワンピースの生地越しに柔らかいその感触に誘導させられるとエースがびくりと身体を震わせた。

「女では…ないんです。」
「え…っ、な…な、いや…嘘だろ」

「残念ながら嘘ではないのですよ。まぁ、生まれて間もなくして去勢させられたので殆ど男として成長はしていません。身体のラインも女性に近いでしょう?コルセットを締めて生活していましたから…」

女性になりたいとは一度も思ったことはありませんがね、と小夜子はにこりと微笑む。
エースは開いた口が塞がらないようで人差し指でくいっと顎を押してやると渋々口を閉じた。

「なんで女の格好を?」
「理由は色々ありますが…私、童顔なものですから女性の格好をしていた方が自然に見えるのですよ。武器も隠せますしね」

「あぁ…納得だわ。」
「ご理解が早いようでなによりです」

「また、似合ってるし」
「ありがとうございます。」

「小夜子姉が男でも気持ちは変わらないのが事実なとこだ。」
「気持ち悪くありません?」

「…寧ろ、男の格好をしてる方が想像がつかねぇ」

小夜子はエースのその言葉に微笑みを増した。柔らかな微笑みを浮かべながら額に口づける。

「……エース、ぎゅってして下さい。」
「…あぁ。」

小夜子の言葉にエースは従順だった。
小夜子の細い柳腰に片手を添え、背中に手を回した。胸に収まった小夜子もエースの背中に手を回す。

力強いその腕に小夜子は脈打つ鼓動を耳で響くのを聞きながら目を閉じた。

「ふふっ、エースの匂いがします。」
「まぁ……俺だからな。あんたはいつもいい匂いがする。」

小夜子の愛用のサボンの香り。
バニラとサンダルウッドの甘いがしつこくない上品なその匂いが体臭に混じり、さらに深みを増した香りになっているのをエースは鼻腔に感じていた。

速る鼓動を抑えられない。
好きなその人が自分の腕の中にいるのだからそうなるのだが、相手はどうなのだろうか?
腕の中で静かに目を閉じて微笑んでいるその人は年はそう変わらない筈なのにどうしてこうも余裕なのだろう。

見てみたい。
焦る姿も頬を赤く染める姿も、この船の連中が見たこともない姿さえも見てみたい。

「イイものですね。こうして、自分を想ってくれる人がいるということは。」
「あぁ」

「もっと、ぎゅっとして下さいな。」
「壊れそうで…怖い。細すぎだろ」

「壊れませんよ。そんな柔じゃありませんから、私。」

より密着する。二人して抱き合うだけだが、狭い倉庫の温度が上がったようにも思えた。

「さて…この後どうしましょうね。」
「……」

「エースは童貞という訳ではないですよね?どのくらい経験ありますか?」
「なっ…!?」

ムードぶち壊しの爆弾発言に今度はエースが小夜子の唇に人差し指をあてがった。

「ズバッと言い過ぎだ…」
「大事なことですがね。どっちが男役とか女役とか、役目は決めとかないと。」

「…俺が男役じゃねぇのか、普通に考えて」
「そうですか?貴方、女役っぽい顔じゃないですか」

「あんたに言われたくねぇ!」
2人でどちらとなく笑い合う。
抱き合ったまま2人で暫く笑った後に、小夜子はすっとエースの拘束から離れて倉庫の部屋を開けた。

「まぁ、次の島に宿屋があることを願いましょう。話はそれからです。」
「それまでお預けってことかよ」

「ちゃんと、『待て』ができればご褒美をあげますよ。たっぷりと…ね」
倉庫の外を出た所に散らばった洗濯物を拾いながら小夜子はにやりと微笑んだ。

「では、後ほど。」

一糸乱れぬその姿は余裕たっぷりという感じで背筋の伸びた小柄な身体が優雅に踵を返してその場を離れていく。

そんな後ろ姿を眺めながらエースは力が抜けたようにゆっくりとしゃがみこんだ。

「あぁー…畜生。」

どうしようもない感情にただ今は支配されるしかない。
遊ばれているのか、本気なのかすら見抜けない。ただ、あのにやり顔で微笑まれてはリビドーがふつふつと身体の奥底に募るだけ。

「えらいのに…惚れちまった……」

手に残る柔らかな感触にまた頬を赤くするエースであった。

『皆、お熱いのがお好き』
.
(触れた温もりが愛おしい)




あとがき
『もしも』なエースと小夜子のお話でした^o^
エースとこんな感じでくっつけるのもいいなぁとか考えてます。
誰とくっつけるか悩みどころ…うん。

小夜子は案外可愛い顔して凄いことサラッと言っちゃったり、大胆な行動に移したりする男らしいとこもあったりする子です。
たじたじなエースとか振り回されるマルコとか見てみたい気もします笑
では次回の更新で!

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あきゅろす。
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