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メイドとナース【マルコ寄り?な白ひげ海賊団】



お嬢様、こちらの世界に来て一番困ったことが起こりました。
困ったことに…こちらの世界の方々の標準身長は高すぎます。




『メイドとナース』








小夜子は困っていた。
それは、着替えがないということである。

ワンピースに下に着ていた抱腹と呼ばれる黒地に白い蓮の花が描かれた腹掛に女性用の黒のボクサーパンツにオーバニーソックスにブーツ姿で椅子に足を組み、ナイフを磨きながら小夜子は溜め息をついた。

なぜこんな格好なのかというと、数十分前
元の世界に戻れるかどうかの実験をしたのである。
海を漂っているならもう一度海に落ちてみたらどうか、と考えて落ちてみたがなんともならず。何にも起きずでずぶ濡れ損をしたのだ。

シャワーを浴び、下着などの小物類だけでもさっさと乾かそうとドライヤーを借りて乾かしたが…流石に服は現在甲板で乾かしている。

着替えをナースの女性陣に借りようと訪ねたのだが…サイズがあわずで、結局この姿のままだ。

『この世界の女性は皆スーパーモデルサイズなのでしょうか。』

自分は『男』なら身長は低いとは思っていたが『女』と考えれば別に普通だと思っていた。5cmヒールの編み上げブーツのおかげで170cm近いのだが…なんだろう、ここの女性陣は170cm以上あるのだ。そしてナイスバディな素敵な体型をしている。
男性陣は…論外だ。サイズが合わないのは目に見えている。

クロスで研ぎ終わった愛用のファイティングナイフを磨き終わると銀色の美しい輝きを放っているのを見て太腿に嵌めていたホルスターにしまった。


「そろそろ…乾きましたかね」

このままの格好で行くのは自分の品格を落とす気もするが致し方ない。生憎、羞恥心というものはさらさら持ち合わせていないのだ。




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「…小夜子」
「はい」

「なんだよぃ、その色っぽい格好は」
「着替えが…ないので、仕方なく。あぁ、もう少し乾かさないといけませんね。」

甲板にいた船員達はぽかんと開いた口を閉じれなかった。いつも露出は髪を上げた項と手と顔くらいだったのに、今はどうだ…
後ろから見ると露わになった背中、ゆるやかなラインを描く腰回り、短いパンツから覗く細いが柔らかそうな白い脚は程よく筋肉がついている。
オーバニーソックスにブーツを脱がしたくなったのはこの中に何人いただろうか。
マルコもその一人であるが

「目の毒だから早くなんか着ろよぃ」
「ナースの方々が服を貸してくださると言ってくださったのですが…サイズが全くと言っていいほど合いませんで…」

「羞恥心はないのかよぃ!」
「ありません。全裸になる位は大丈夫です。まぁ、お嬢様の品位を落とす訳にはいけませんので人前で全裸にはなりませんが。」

何も言えなかった。真顔で即答されると返す言葉がなかったのだ。
マルコは黙って自分の着ていた紫のシャツを脱ぎ、羽織らせた。

「マルコ様…」
「着てろ…次の島で服を買ってくれ。」

「こちら、いつお洗濯致しましたか?ついでにこちらも洗いましょう。」
「お前は人の気遣いっていうものが分からないのかよぃ!」

「マルコ様にはいい香りでいて欲しいと思う私の気遣いですよ。」
「無神経か!俺が臭いって遠回しに言ってるのかよぃ」

「そのようなこと私が言うわけがないじゃないですか…少々男臭いだけでございますよ。」
「だから、遠回しに臭いって言ってるよぃ!」

まるで、夫婦漫才だと思ったのはここにいる誰もが思っていただろう。笑い声が海の上で響いた。

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「と、いうわけでして皆様の要らなくなった服などございませんか?サイズを直して何か作りたいのですが」
「あら、服着るの?その格好可愛いのに」
「ほんと、脚なんてこんなに綺麗」

皆々様の方がお綺麗ですよ。と口に出したら頭を撫でられた。

「女性の前で下着姿というのも失礼ですし」
「女性の前でって…あなたも女じゃないの?」

医療従事者の彼女らなら話しても大丈夫か、と小夜子は口を開いた。

「『元』男、と言いましょうか。実は去勢手術を幼い頃訳あってしまして…複雑なのでございます。」
「なるほど…そういうわけね!」

睾丸摘出及び切除手術を受けたと言った時のナースの食いつきは実に良かった。確かに滅多にいないだろう。

「だからムダ毛殆どないに等しいのね。うわぁツルツルすべすべ、若いっていいわー」
「はい、男性ホルモンがでていませんから。」

小夜子は数着ナース達のお古を貰い、吟味しながら会話を続けた。


「じゃあ、小夜子ちゃんモテたんじゃない?でも男にモテそうよね。」
「他人とそう話す機会がないものですからそうありませんよ。それに私はお仕えする身ですからお付き合いや結婚なんて縁のないものですよ。まして、子供を作れることもありませんし。」

「まぁ、子供や結婚だけが人生じゃないしね。楽しんだもの勝ちよ」
「えぇ、私もそう思います。」

ふと、お古のナース服があったので手にとってみた。

「小夜子ちゃん、ミニスカートは嫌い?」
「見る分には好きですが、着るのはどうも。武器を隠しにくいですし」

「海賊船にいるのよ?武器は堂々と持てば良いじゃない。ここの人はみんなそうよ。」
「私、一応一般人の身分ですから。」

今までの経歴は一般人離れしているが、『一応』こちらの世界では一般人である。
帰る方法を探すにしろ、こちらの軍隊的な『海軍』に目をつけられるのも厄介だ。
海賊の彼らと今は共にしているがいずれかは船を降りなければならならない。

「あ、スキニーパンツ裾上げする?これ、あげるわ。もう着ないし」
「ありがとうございます。大切に着させて頂きますね」
黒革のスキニーパンツやナース服のお古、ミニスカートなどを貰い、小夜子は針箱を手にまた甲板へ出た。

『やはり美人の女性は性格まで美しいのでしょうか。流石、エドワード様が選んだナースと言うべきでしょうかね。」

針仕事をしなければ。

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取り敢えず、甲板に出るとブーツを脱ぎ、スキニーパンツに足を通すことにした。
ウエストは少し緩いがこの程度なら大丈夫だろう。裾を少し上げれば大丈夫だと確信すると折り目をつけまち針を刺す。
それから脱いで、甲板の隅で船員達が鍛錬に勤しむ声や音を聞きながら正座をすると裾上げに取り掛かった。

針に黒糸を通して、糸を適度な長さまで伸ばすとそれを切り、玉結びをする。
パンツを裏返してから縫い始める。

『…………。』
縫い物をすると無心になる小夜子、周囲の喧騒すら耳に殆ど聞こえていない。
右頬横にハプニングで飛んできたナイフを自然に避け、手の動きを止めることはない。

こんな姿を見て、やはり一般人ではない。と船員達はしみじみと思うのだ。

「やっぱ、小夜子ちゃんって只者じゃないよな。」
「能力者ではなさそうだけど、こう無駄がないな。」
「手合わせ、頼んでみたいけどなんかコテンパーにやられそうだからやめとこ」
「ついでに破れたシャツ縫ってくれねぇかな」
「それは頼んだらやってくれるだろ。」

小夜子はあっという間に裾上げを終わらしたらしく、スキニーパンツを履くとブーツを履いて針箱を直すと足早に中に入っていった。溜まりに溜まっている洗濯物を片付けに行くのだろう。それに晩の仕込みをそろそろしなければ追いつかない。


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夕食時には小夜子はいつものメイド服に変わっていた。
大して意味はないであろうフリルカチューシャまでして一切の乱れ、隙がない。いつもの状態である。

「なぁ、小夜子」
「はい。」

「昼間のアレと今のソレの間くらいの格好したらどうだよぃ」
「…それは、ご要望でしょうか。マルコ様」

マルコは至って真面目な顔で、小夜子も同様真面目な顔で視線を交わしあっていた。

「本当に…ご所望ですか?」
小夜子の黒い目が光を放った気がした。ニヤリと口端を上げて意味ありげにマルコに微笑みかけた。目は笑っていない

「マルコ様は大英帝国が発祥のヴィクトリアンメイドを模倣した下品な胸元の開いたミニスカートワンピースに猫耳とかつけて『ご主人様とにゃんにゃんしたいのにゃあ』とか言うあざとい邪道な軽い頭のメイドがお好みでございますか?それはそれは…良いご趣味をお持ちですね。」

途中意味が分からない言葉だったが両手を丸めて、首をかしげる仕草が猫のようで不意打ち的に可愛いとか思いそうになったのをマルコはぐっと堪えた。

「生憎私、この船のナースのお嬢様方の様に可愛さも美しさも持ち合わせておりませんのでご勘弁下さい。」
「小夜子ちゃん!口が上手い!」
「お世辞が上手いを通り越して嫌味にしか聞こえないけど可愛いから許すわ」

「私、嘘はついておりませんよ。」
ナース達が小夜子のサラサラツルツルの手触りの纏めた黒髪を撫でて抱きついている姿を見たマルコは思わず口が開いてしまった。

たった数日でこの船の誰ものハートを掴んでしまったというのか、このメイドはとても人の心を掴むことに長けすぎている。
話術も振る舞いも、細やかな気配りも全てが連結してこの小夜子という人物を作り出したというなら一体どんな出生で、どんな人生を歩んできたというのか

18歳と言っていた、一般人にしてはどうも『手慣れ』過ぎている。
どうにもこうにも謎が多い人物であるが女性陣からの評判は良いようだ。

(味方につけるには女性から)

『豹柄のニーハイブーツにミニスカートナース服とは血圧が上がりそうな格好ですよね。』
『小夜子ちゃんも着てみる?』

『…ご所望とあらば、でございますね。』

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あとがき
白ひげ海賊団の女性陣と言えばナース軍団ですよね^o^
ミニスカナースとは刺激的すぎます、オヤジ!
ナース軍団のお姉様方にすっかり気に入られた小夜子ちゃんはこの後、着せ替え人形の如くナース服を着せられたりします笑

拍手にてコメントなど下されば喜び舞い踊りますのでよろしくお願いします^o^
では次回更新で!

椿

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