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Rain and passion【シリアス?夢】





『貴方に触れたい』

『貴方の髪に
頬に 額に 唇に 首筋に 指に口付けて
啄んでから
噛み付くように痕を残したい。』

『舌を這わせて
貴方の温もりを感じたい。』

『愛している
ただその感情が支配した身体は今も尚、蝕み続ける。』

『これを生き地獄といわず
何と言おうか。』


こんな歯の浮いた台詞
本の中だけでの話











「雨、止みませんね。」
「ついでに残業もな」

「それは貴方の行いのせいです。手伝ってあげてるんですから頑張って下さい」
「グレン君、手厳しい」

しとどに降る雨が窓に当たる
その様子を窓際で見ながら、隣で書類の束に頭を抱える上司兼恋人に薄く笑ってしまった。

出会って13年
付き合い始めて1ヶ月
周囲には公言はしていない
一部知っている部下がいるくらい…後、上司であるつる中将。
これはこのば…じゃなかった。クザン大将が嬉しさあまって言ってしまったようだ

『あんたいつから男がいけるようになったんだい』とつる中将に言われた時はクザン大将を急いで捜し、殴り付けた覚えがある。

「何考えてるのー、グレン君」「………大将が男に走ると思わなかったもんで」

「いやぁ、俺もびっくり。」
「俺もびっくりです」

でも不思議ではないのかもしれない。
今まで女に興味が湧かなかった。
言い寄られた事は数多くあった。
が、恋愛感情に発展する事はなかった

幼少期のトラウマに問題があったからか。
だから別に男を好きになるのは道理ってもんかもしれない


「……付き合って1ヶ月」
「大して発展は無かったがなー」

「何ですか、発展が欲しいんですか?」
「まぁ…普通欲しいでしょ。」

「…キスしたじゃないですか。」
「あれ一回きりだけどね。」

グレンはクザンの言葉に黙ってしまった。


…この人、性欲濃いのか?
いや男は恋愛をするとまず性欲が動くというが
それか?
確かにこの一ヶ月、キス一回しかしてないが

じゃあなにか?
セックスがしたいのかこの人?

「クザン大将…セックスしたいんですか?」
「ぶっ」

クザンは飲んでいた茶を吹いた。
「大将…汚いですよ」
「いや君が真顔でそんなこと言うから」

もう40近い男が噴くとは思わなかった
グレンは白衣のポケットからハンカチを取り出し、クザンに無言で差し出す

「……クザン大将」
「なぁ、そろそろその呼び方止めない?」

ハンカチで口から滴る茶を拭き取りながらクザンはそう言った

「…男同士のセックスって女役と言いますか受け側に大分負担がかかるのをご存知で?」
「俺の言ったことはスルーね。」

しかしグレンも負けない。
彼は仕事は仕事
私生活は私生活と切り分けて生活したいタイプなのである

「真面目に話しているんですが…もしセックスするとしたらどっちが受け側なんですか」
「え、普通はグレン君でしょう」

…………

「…それは私が女顔だからですか」
「いや、よく考えてよ、グレン君。俺が女役とかのマニアックないかにもガチホモの濡れ場とか誰が見たい?」

グレンは考えた
脳内で少し想像してしまった

『ちょ…グレン君』
『少し黙ったらどうですか』

『いや…そこは…っ』
『ここがイイんでしょ?』

「……………それはそれでありじゃないでしょうか。」
「えっ!?いやいや無理でしょうが!全然良くないから」

「じゃあ交代にしますか?痛みもお互い分かち合うべきじゃないですかね」
「…グレン君、単にやりたくないだけなんじゃない?」

「別にしてもいいですよ。只、医者として言わせてもらうと…吐き気が」


医者というのは
知りたくない現実を知っているのが性というもの。
愛の営みとやらがそんな美しいものではないとグレンは13歳の頃から悟っていたのだ

「思っている程綺麗なもんじゃありませんから諦めましょう」
「夢のないこと言うなぁ」

確かに痛みだけではないだろう。
しかも相手は百戦錬磨のこの男、男との恋愛は初めてとは言えど…その手に関しては経験豊富そうだ

加えて女性とは味わえない快感で男同士のセックスは病み付きになるとかを何かで聞いた。
部下だっけ
まぁそれはいいか

「グレン君」
「はい」

「お茶淹れて」
「……仕事サボらないで下さいね」

空になった湯呑みを受け取った瞬間手首を掴まれた

一瞬目を見開いてしまった。
あまりにも真っ直ぐ見てくるから

いつもはだらけきっているくせに
茶化してばっかりのくせに…

「……ずるいですよ、クザン大将」
引き込まれていく戻れなくなってきている
この人に惹かれていく自分がいるのが何とも言えない。

心が疼く…

二人はどちらともなく口付けていた。
今日はグレンも前とは違い、嫌々ではない

どちらもが求めている行為だった。

グレンは湯呑みが机に落ちた事も気付かず、唇を重ねた

かさかさとした柔らかい感触、自分以外の人の温かさが唇を通じて伝わってくる感覚は何とも言えない


机に隔てられての口付けはもどかしく、どちらもが動き
窓にグレンを押しつけるようにキスをするクザン

自分より小さなグレンの頭と細い柳腰に両手を回し、腰と首を屈ませる

それはすっぽりと愛しいものを隠すように。

誰にも見つからないように

「ん…っふ」

グレンは羞恥から目を瞑り、クザンの広い背に手を回した。

自分とは違う体格
同じ男で同じ軍にいると言うのにどうしてこうも違うのか。

白い背広の布地を掴み
徐々に深まる口付けの感触を感じた

舌が中に入り込んでくる
まるで生き物のようだ
生温かいものが口内を這いずり回り、何かを探すかのようにそれが蠢く。

慣れない行為だ
こんなに自分を求める存在もいなかったし
自分がこんなに入れ込む存在もいなかった。

「ふ…はっ…ぁ」

『快楽』とはこういうものなのか。

外から聞こえる雨音に混じり合う水音

互いの唾液が混じり
舌が絡み合う度に鼓膜を刺激する

しどろもどろに慣れない動きで必死に舌を絡ませるグレンにクザンは内心爆発しそうだった

『やばいでしょ…これはさ…やべ、可愛い』

端麗な顔立ちをした愛しい恋人が自分の口付けに応えようとしているのだ

クチュッ クチュ

瞑った瞼に縁取られた長い白い睫毛が微かに震えている。

白衣越しのほの温かい細い華奢な身体を左手に感じながら
グレンが喘ぐ様を垣間見ながら思った

愛おしい…ってこう言う事を言うのだと

チュッと互いの唇を離した
グレンは上気する顔をふいと横に向けて回していた手を離した

「グレン君…やっぱすんごい好きだわ」

「…そりゃあどうも」

(この熱情を雨よ、どうか冷まして)
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あきゅろす。
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