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悪徳の栄え*【悪徳の華続編/シリアス/裏表現含む/ドフラミンゴ夢?】




願うことなら
この悲しみが貴方の幸せになりますようにと。
世界の片隅でそう祈りながら
自分が地獄へ向かっている気がした。

否…きっともうとっくに自分は闇の中にいたのだ
この黒より暗い闇はぐるりと塒を巻いて嗤っている。



『悪徳の栄え』








あの日を境に変わったことがある。
王下七武海の一人、ドンキホーテ・ドフラミンゴとの関係が明るみに出たと言う事。
明るみと言ってもマリージョア内部だけだが、驚いたことに『夫』であるチャルロス聖及びロズワード聖達は簡単に承諾し、ドフラミンゴと正式的に愛人関係として受理された。
裏で何かが動いたのをフジは悟った。

だが、公認の関係になったとてまだ以前と同じくしてフジは聖地マリージョアの片隅で憂いているには変わらず。


「頂上決戦…」
ドフラミンゴが数日前にフジに届けたのは新聞だった。
フジが現在の世界情勢を知りたいと頼んだ結果に届けられたのが世間で出回っている新聞

世界政府公認の海賊とは…何故マリージョアの政府関係者が使うあの部屋に居たのかが疑問だったがすぐ新聞を見て理解した。

海軍本部がかかりっきりだった別件こそが現在世界を騒がせている事件だったのだ。

『頂上決戦』と呼ばれる歴史に名を残すであろう大事件

偉大なる航路後半の海、『新世界』を統べる四人の海賊の一人『白ひげ』
その大海賊率いる海賊団及び偉大なる航路でも名を上げる傘下の海賊勢と

海軍本部センゴク元帥と三大将及び海軍本部の将校達、そして世界各国に散らばる選りすぐりの優秀な精鋭達を集めた海軍勢は王下七武海を協定に従い、召集した。

あの場所に彼がいたのは偶然ではない
この戦争のために召集命令を受けていたからこそあの場にいたのだ。

フジはこの数日新聞に目を遠しっぱなしである。暇な時間は大抵を自分の部屋で新聞に目を遠しながら思考を巡らせることを繰り返していた。

『海賊と海軍の全面戦争…』

悪と正義の大きな戦争の引き金は白ひげ海賊団二番隊隊長ポートガス・D・エースの公開処刑だった。
予定より早くに決行とは政府も上手くやったものだ。

どんな事情があったのかは知らないが…
世界を騒がせる大事件は『寵姫誘拐事件』を世間の頭の中から書き消して上書きしてしまったのだから

これで寵姫に関して世間も無闇な探索はしないだろう
寧ろ、今日出たこの全面戦争の結果の方が今は気になる筈だ。そして大いに騒ぐ筈だ。

『勝者は…海軍』

大海賊白ひげの死、そしてポートガス・D・エースの処刑は結果的に実行された。
白ひげ傘下の海賊達は散り散りに、海軍本部の勝利で幕を閉じた。
世界中に海軍の勝利、その言葉が伝わり
世界は喜びとその半面、多くの悲しみが生まれていることだろう

そして自分は…

「失礼します。奥方様、例のあの方からご連絡が」

フジ専属の唯一の侍女であるその老女は部屋に入るなり顔をしかめた。

「奥方様…そのように近くで読んでいますと目が悪くなりますよ。」
「あぁ…すみません、エリーゼさん」

前髪から後ろ髪までひっつめて後ろで纏めた白髪混じりの金髪の彼女は厳格そのものだった。
貴族の使用人はそれなりの貴族出身者が多い
彼女も貴族出身だった、落ちぶれた没落貴族になり路頭に迷っていた所をフジに拾われたのである。
それ以来彼女は影のようにフジの側で仕えている。

フジは新聞を彼女に渡すと立ち上がり、彼女の側に歩むと外に出た。
廊下を歩くフジの後ろにエリーゼはついていく

「よろしいのですか、付き人もなしにドレスローザまで赴くとは」
「途中までは護衛がつきますので大丈夫ですよ。」

「それも愛人などと…奥方様の身体が心配です。良いように利用されているのでは…」
「私の身体は案外丈夫にできていますから…それに利用されるのは今までも同じ事。大して変わりません。」

頭を下げる他の使用人達を軽く制止ながら、フジは自嘲気味に笑った

「それで、相手方から連絡はありましたか?」
「はい…ドレスローザの城で待つと」

「そうですか…」

調べて驚いた
ドンキホーテ・ドフラミンゴは一国を治める王位を持つ男だったのだ。
王位を持つ男がどうして世界政府の下で海賊などというものを続ける意味とは…確かに王下七武海の海賊女帝も一国を治める身分だ。一国の平和の為だと言うなら美徳だが…彼がそんな人物とも思えない
知る術はないが、何か企みの一つもあるのだろう。

自分と会うと言ってきたのは戦争が終わり、一段落したからかもしれない。
フジは思考を駆け巡らせながら、静かに口を開いた

「直ぐ船の準備を…」
「既に準備は整っております。…奥方様、船旅は長いのですからこの年増女一人途中までではありますが話し相手に如何でしょうか」

「ありがとう…エリーゼさん」

本当は怖いのだ。不安で震えそうになるのを抑え、毅然とした態度が出来ているのかすら分からない
エリーゼは気を遣ってくれているのだとフジはすぐ理解した。

大丈夫、きっと大丈夫。
フジはそう言い聞かせながら歩いた。


―――――――――――――――

ドレスローザにて
頂上戦争が終わり、国に帰ってきたドフラミンゴは自分の城で暫しの安息の時を迎えていた。

温かい日差しがプールの水に反射してきらきらと輝いている。
そんな中を水着姿の女達がきゃっきゃと楽しげな声を上げて戯れている姿を見ながらプールサイドに広げたパラソルの下でドフラミンゴはロックグラス片手に椅子で寛いでいた

そんな時だった、開放的なこの空間に異質な空気を纏った人物が現れたのだ。

「よぅ、お姫様」

純白から青へとグラデーションした涼しげな色合いの着物、帯は白を基調としている。銀糸の流水紋が実に見事だ。
帯留めは硝子細工で出来た赤い魚をモチーフにされたもので青と赤の対比がよく映えている。
白い足袋に白塗りの下駄を履いたフジが色とりどりの水着を着た肉体美の女達を横目に涼やかに、ゆっくりと歩いてきた。
その端正な顔は緊張と不機嫌さがかすかに滲み出ているように見える

そして周囲の視線を集めながらゆっくりと歩み、ドフラミンゴと対面するのだった。

「呼び出しておきながら良いご身分ですね…玉座に座るお方ならそうも優雅なのかもしれませんが」
「ご機嫌斜めだな、どうした?」

「どうしたもこうも…ないじゃないですか。こんな…破廉恥な」

ドフラミンゴを見上げるフジはそう言い終えると視線を地面に落とした。
その白い首筋がほんのりと赤く染まっていくように見えたのは日のせいではないだろう。
水の中、裸体同然の姿で戯れる女達をちらりと見たドフラミンゴは成る程と理解した。

「………なんですか。」
豊満な身体をした女達を見ないとばかりに俯く姿をにやにやと笑いながら、こいつは驚いたとばかりにドフラミンゴは笑う

「おいおい、さっきまでのお高く気取った澄まし顔はどうしたよ…フフフフッ!!こいつはおもしれぇじゃねぇか」
「…気取ってなど…いません。」

ドフラミンゴの座る席の向かいに立ったフジは唇を噛み締め、羞恥にさらに項まで赤くしていた。

「おいおい、顔が赤いぜ?」
「若い女性が…はしたないです。あんな薄布で一枚で」

涼しげでどこか余裕ありげに見えたが実際は違った。確かに女ではない、がどこか可愛らしい。

同世代の男なら水着姿の女達によからぬ妄想を繰り広げ、あわよくば声をかけようと行動に移しているかもしれないというのに
年頃の初(うぶ)な少女のように赤く頬を染めているのだから笑えてくる。
ドフラミンゴは心底面白がっていた

「なんならあんたも着てみるか?似合うと思うがな…フッフッフ」
「っ…お戯れが過ぎますよ、ドフラミンゴ殿」

「そいつはすまねぇな、あまりにあんたが可愛くてよ」
「ご冗談を…」
ドフラミンゴはぐいとフジを腰を掴み、引き寄せた。耳元でそして囁く

「…天竜人達はあんたと俺の関係を承諾したぜ?さぁて…なにからするかな」

低音が耳に色を含みながら響くとフジの身体がびくりと震え、唇を噛みしめるとフジは口を開く

「一体…どうやって手を回したのですか」
「フッフッフ!野暮な事は言いっこなしだ。その過程に何の意味もない」

「貴方という方は…」

フジは一瞬目を閉じて、覚悟を決めるように息を吐いた。

ドフラミンゴが普通の人間でないのは確かだ
只者ではない。
一国の王でも海賊でもあの天竜人と関われるなど…並大抵ではできない


「…秘密は誰にでもあると、言うことですね」
「あぁ、そうだ。あんたにだってあるだろう?このお綺麗な顔の下には」

近距離で向かい合う
ドフラミンゴの大きな手がフジの頬をなぞり、顎を持ち上げた。

「どれほど塗り固めた嘘があるんだろうよ」
「………なら、私達は似た者同士ですね」

もう汚れる隙間もないほどに自分達は汚れているのだ。
光輝く世界に戻ることなど出来ない
堕ちるところまで堕ちるしかないのだ

「似た者同士…だと?」
「えぇ…我々は悪徳の栄えに立つ、人間ではありませんか」

欲望の渦に巻き込まれる
闇よりも深い穢れの淀み
血よりも濃く、そして落ちない染みになっていくのを自ら塗り固めた嘘で自分を守っている

「私も、貴方も清廉潔白に生きるには難しいこの世界で躍り続けるしかないのですね」

フジは美しい笑みを浮かべながらドフラミンゴの寄せた手に己の手を重ねて唇に近付ける

「なんて…愚かなのでしょうね。厭になりますよ…本当に……。」




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※この先裏表現を含みます。
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「っ…う…くっ」

痛い、痛いのに逃げられない。
腰を掴まれて下から突き上げてくる衝動に唇を噛み締め堪える。
これだけの体格差があれば中に受け入れるのは至極辛いとは思ってはいたがこんなにもとは。
潤滑油の滑りが腰を打ち付けられる度に粘着質な水音をたてながら耳に響く。

フジは後ろから胸を弄ってくるドフラミンゴの手に自分の手を重ねるがそんな抵抗は無に等しい。
胡座をかいたドフラミンゴの上で厭らしく腰を揺らすしかないのだ。

「一体…いつまでっ、あっ!」
「これが、あんたの仕事だろ?そう簡単にへばってもらっちゃ困る」

一体どれくらい果てただろう
もう五回は達しているというのにあちらはまだ一度も達していないという現状は受け入れがたいものだった。
抵抗する体力はもうないというのに

フジは床に無惨に落ちた髪飾りを見ながら思った。
着物はどちらとも言えぬ体液が媚びりつき酷い状態だ。
汗で髪が首筋にへばりつく不快感に眉間に皺を寄せていると後ろから首筋の髪を大きな指が払い除ける。


「っん…く…ふ」
「声、我慢しなくていいぜ?」

「…んな…ことっ」

負けるものか
これだけは、ここを耐えきらなければ
畜生にも劣る生き物になりたくない。

『フジ』

なんでこんな時に、ふとあの人の顔が浮かぶんだろう。

「…様っ、ロー様」

貴方に会いたい
また髪を撫でて欲しい、手を握って欲しい。

抱き締めて、欲しい。

グッと髪を掴まれて寝台に倒れていた上半身が持ち上がる。

「っ…!」
「おいおい、ヤってる時に他の男の名前は卑怯ってもんだろ?お姫様」

「自分でも…っ…分かり…ませんよ」フジは髪を掴むドフラミンゴの手に触れ、力なく微笑んだ。

闇に堕とすなら落として欲しい。
一筋の光すらなく、救いの希望すらをも奪って蹴落として欲しい。

分かっているのだ。
あの恋に終止符を打てぬままに終わってしまったからそれを女々しく引きずって、有耶無耶に処理できていない自分がいるのだと。

「貴方が…忘れ…っさせて下さいよ。っ…」
「はっ…イイ面構えだな、嫌いじゃねぇよ」

グリッ

「どん底まで堕としたくなる…っ!」
「はっ…ぁ!」

前立腺を刺激され、思わず仰け反ると髪から手を離したドフラミンゴのにやり顏が横目に見えた。執拗な攻めは感じる場所を的確に突いてくるのだ
口端から零れる唾液が顎を伝ってシーツに染みをつけていく。

「あっ…っん…!」

耐えきれなくなる。
体の奥から燃えるような、痛みにも勝る感覚
これが快楽だ。

「最初は男なんざとは思ったが…悪くないぜ?お姫様。」


一筋の光すらない闇の底へ堕ちていこう。
貴方を忘れ去る為に
どろどろに汚れて身動きが出来なくなるまで
踊り続けよう

(悪徳の栄えに雲雀は嗤う)





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