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雲雀の夢【シリアス夢】





美しい籠の雲雀は夢を見る

それは美しい儚い夢
翼を幾ら伸ばせど届かぬ籠の外
自由広がるその空を
何れ飛び 囀ずり謳う日を
幾度夢見ても
豪華絢爛の籠の中
醜き汚れた檻の中

されど一人寂しく夢を見る。
いつか籠越しに見上げた空を羽ばたける事を













『雲雀の夢』














「呼吸、脈拍、心音、状態は安定してる…が」

まだ目を覚まさない。

ハートの海賊団の船である潜水艦、とある一室、医務室の中では一定の感覚で電子音が鳴っている以外は至って静寂に包まれている。

清潔な白の寝台に横たわってる人物はただ静かに眠っている
それをローは黙って近くに椅子を引き寄せて座り、見ていた。
もうかれこれ1日と数時間は見つめていたが不思議と眠くならないのだ


フジと言ったか
通称『寵姫』
世界政府の創始者である王達の末裔、天竜人と呼ばれる世界貴族

その天竜人の一人、チャルロス聖の正室に籍を置く。
一介の人間は見ることも許されていない存在だとか

五年前、婚礼の祭典の記事が新聞に載ったらしいがその時は興味もなく、ただ目を通しただけだった

『海賊女帝』にも退けをとらぬ美貌をしたワノ国の姫…だとペンギンが言っていた

傾城の美女
貴族達の社交界の華
その身に天竜人達の寵愛を一身に受ける存在
老若男女問わず、誰もが恋をするとかなんとか…あまりにも謎が多い人物だ。

『…まさか男だったとは』

確かに抱き止めた時、華奢なわりに重いとは思った
筋肉質というわけでもないのに女特有の柔らかさが感じられなかった。

治療する際、衣服を脱がした時に見た身体は成長未発達の男の身体だった

厭に白い肌には赤黒い鬱血痕が身体中に散らばり、背中には青紫の打撲傷と鞭で打たれたような跡があった

『こいつ…何されてきた。』

暴力を受けている、相手はあの狂った天竜人
大体は想像がつく…が、何故か苛立ちを覚えていた

何で苛々しているのか
胸のモヤは何なのか
この不思議な感覚は何だ?
疑問だらけな事にも苛立ちを感じ、ローは軽く舌打ちをしたがすぐに現実を見ることになった

「…ぁ…はっ…っ!」

寝台で意識もなく寝ている筈のフジが何かに魘され、発作を起こしている
ヒュッと一度喉が鳴り、呼吸が乱れる

だがこれに遭遇するのは初めてではない
つい3時間前にもあった
過換気症候群による過呼吸発作だ。

精神的な不安によって過呼吸になり、その結果、手足や唇の痺れや動悸、目眩等の症状が引き起こされる心身症の一つ。

原因は『精神的な不安』
只の推測でしかないが精神的にかなり来ているものがあるのだろう
肉体的にも精神的にも暴力を受けているからではないか

ローは至って冷静だった。
医者として一人の患者と接するような対応をした
近くのサイドテーブルの上に置いてある紙袋を手に取り、手慣れた手つきで紙袋でフジの口と鼻を覆い、その中で呼吸をさせる。

「落ち着け…気を楽にしろ。」
意識が無いのは分かっているがローは無意識に声を発していた。
まるでフジを落ち着かせるような優しい声色だった

いつも冷静沈着、残忍な行為も簡単にするような男にしてはそれは驚きだ

無意識か、フジの手はローのパーカーの裾を掴んでいた
すがりつくように強く掴んでくるその手は自分のそれよりも小さかった。


「た…すけ……て」
「…あぁ」

小さな声が乱れた呼吸と紙袋の中で微かに聞こえてきた。
助けを求める声
何故だかは分からないがローはそれに答えていた

『…らしくねぇ』

すがり付かれた手を払いのけることは出来なかった。












----------------

「お姫さんまだ起きねぇなー」
「あぁ、傷はそんな深くないみたいだが…やっぱ精神的なもんかね」

「しかし船長…付きっきりだな」
「徹夜だぞ?…で、もう朝だ。」



「「絶対船長おかしいな」」

医務室の外で毛布にくるまったペンギンとシャチは互いに顔を見合わせて、頷いた。

「だってあの船長が、いくら美人だからって攫ってくるか!?相手は『寵姫』だぞ?」
「ついでに言うと怪我の治療は分かるが徹夜で看病するか!?今まで初めての事だっての!」

不思議すぎる
ただの気まぐれか?
あの船長が!?
女なんて抱いて、飽きたらぽいっ!…だったじゃないか!
泣いてすがる女を『失せろ』と一言で切り捨てたあの人が?
徹夜で看病!?

二人が顔を見合わせ悩みに唸っていると部屋の中から聞こえる叫び声と何かが割れる音に行きなりの事すぎて驚きに跳び跳ねた

「船長!?」
「一体何があったんです!?」

勢い良く扉を開けると
そこにはずっと眠っていた、彼ら曰く『お姫様』が怯えた顔で部屋の隅で座っていた
至極怯えているのが遠目から分かるくらい震えている、薄紫色の目は恐怖に染まっていた

腕からは血が滲んでいる
点滴が刺さっているに関わらず無理矢理逃げたからだろう。
赤い染みが白の襦袢に小さく広がる

「船長何したんですか!!」
「……何もしてない。」

「めちゃくちゃ怖がってますよっ!」
「…………はぁ」


ローはため息を着くと
ガタガタと震えるフジに近付いた。

「ぁ…貴方…は」
「落ち着け、俺は何もしない。こいつらもお前に危害は加えない」

ローがフジに触れようとしゃがみ、フジに手を伸ばした…がそれは触れる前に叩かれた。

「いやっ…!」

パチンと軽い音と小さな痛み
叩かれた手を撫でながらローは眼前で怯えるフジを真っ直ぐと見据えた

「お前何に怯えてる」
「…僕だけが耐えていれば…良かったのに」

長い髪を振り乱し、フジは床に視線を落とした
そして小さなか細い声でそう呟いたのだ。

自分だけが耐えれば?
ローは疑問覚え、思わず聞いてしまった。

「…どういう意味だ」
「言葉の通り…です。私がいなくなった事で天竜人の歯止めが無くなり、今海軍本部が動いている筈です。」

フジの怯えていた目は色を変え、やけに冷めた色に変わっていた。
この変貌ぶりはなんだと言うのだ
部屋の隅で震えていた白い襦袢姿のフジは今は冷静に、正座をしてこちらを見ている

やはり、只の美しいだけの男ではない

「何故あいつらはそこまでお前に執着する」
「…それはこちらが聞きたいものです。」

伏せ目がちに床の木目に視線を落としているフジにしゃがんだ体勢でローはじっと姿を見つめている。

「助けて頂いた事はお礼を言います。手当てして頂きありがとうございました。」

深々と三つ指をついて頭を下げるフジにポカーンと二人のやり取りを見ていたシャチとペンギンの二人がフジの近くまで来てあたふたとしていた。

ゆるりとした仕種で頭(こうべ)を垂れるフジにはただそれだけの動作だが優雅で品がある

「お…お姉さん、頭上げてくれ!俺達が悪い事してるみたいだ。」
「いや悪い事しただろ、俺達『誘拐犯』だぜ!?取りあえず頭上げてくれ」

「それでも私は命を救って頂きました。捨てようとしていた命ですが…」

“感謝致します。”

顔を上げた凛としたフジの笑みにシャチやペンギンは思わず顔を赤くした。
だがすぐに、顔の赤みは引いた

その笑顔があまりにも綺麗で
優しくて
儚げで
とても、とても悲しかったからだ













「フジはまだ見つからないのかぇっ!!」
「海軍は何をしてるアマス!?」
「わちし早くフジに会いたいえ」

「はっ、も…申し訳ありません」

マリージョアにて海軍は世界貴族『天竜人』の対応に追われていた。
毎日のように本部に『フジはまだか!』の一点張りの電伝虫の罵声が飛んでくる
海兵達の顔には疲労の色が日に日に濃く刻まれていた
部下からの報告に流石のセンゴクもため息を着くしかなかった。

「全く…厄介な事をしてくれた。トラファルガー・ロー…ヒューマンショップの一件と言い、一体何を考えてるつもりだ!」

何の情報も入ってこない
既に事件から3日経つと言うのに何故だ?
生存すら掴めないとは海軍の名折れである

「『寵姫』の居所は掴めたか」
「それが発信源は…その電波状態が悪いのか、距離が遠すぎるせいか未だ分かりません!」

寵姫がつけている首輪
バカ高い値段のアメジストが嵌め込まれただけの首輪ではない
電流によるショックを肉体に与えることも出来る
自爆機能も搭載されている
そして発信器が付いている

レーダーで居所はすぐに見つかる筈だった。
が運も悪く発信器は沈黙したままである。
何らかの衝撃で故障してしまったのかもしれない
不運としか言えない

「全く…っ次から次へと問題が出てくる。」
「センゴク元帥、五老星から回線が繋がっています。」

「…繋げろ。」

おまけに世界政府最高峰五老星からも催促が来る有り様に胃の痛みが増す気がした。

『寵姫の居所は分かったか?』
「…申し訳有りません。未だ行方は掴めていません。」

厳格な五老星の言葉に見えていないと分かっているが頭を下げてしまう

『寵姫は天竜人の『楔』、あれがいなくなると何かと厄介だ。』

『例え『女』で無くとも天竜人達の寵愛を受けた者の定めだ。何としてでも捜しださねばならん。』

『多くの犠牲が出る前に見つけろ。たった一人の『男』が世界の命運を握っているやもしれぬのだ。』

世界から見れば小さな存在
だが確実にその存在に守られているのだ

誰かが言った
寵姫とはこの世界の『贄』だと。
でも何故そんな価値があるのかは知らない
本人すらも知らない













「なぁ、あのお姫さん起きたんだろ?」
「みたいだな…ただ船長が見せてくれないんだよなー」
「隠されると見たくなるのが人間の性ってもんだよな」
「聞くところ、あの『海賊女帝』に並ぶ絶世の美女だとか」
「まじかよ…やべっ!!女がこの船に乗るなんて初めてだなおい」
「あぁ…確かにいい匂いが」
医務室の前にはお揃いの白いツナギを着た姿のクルー達が溢れていた。
皆、扉に聞き耳をたてて、中にいる絶世の美女こと、フジを一目見ようとしている

女気の一つもないハートの海賊団の船に女が乗るなんて考えられない!とばかり歓喜に浸る船員達に海賊の威厳たるものは存在しない。

バァンッ!!

「へぶっ」
「ぐへ」

そして扉に挟まり、奇声にも似た悲鳴上げる海賊こそ『カッコ悪い』の言葉が似合う存在はいないだろう

部屋の中から勢いよく出てきたのは彼らが待ちに待っていた『絶世の美女』ではないか。
長い黒髪を揺らしながら白い襦袢姿で縺れる足を必死に動かせ、壁伝いに走る姿は痛々しい。

裸足の足がツルリとした床で滑り、身体は床に崩れ落ちる


「姫さん!!」
「大丈夫か!?」

駆け寄ってきたクルー達の手をフジは冷たく払った。

「触ら…ないでっ!!…触らないで!」

フジは泣いていた
端麗な顔立ちは伝い落ちる涙でぐちゃぐちゃで目の下は赤く腫れている

「もう…私に構わないで」

伝い落ちる涙を手の甲で乱雑に拭うと、立ち上がり
廊下を走っていってしまった。
不謹慎にも

「美女って…」
「泣いても美人って本当なんだなぁ〜」
「て!!関心してる場合か!」
「やっぱり拐ったのは不味かったか船長」

「お前ら…何してる。」
「キャ…キャプテン!」
「良いんですか!姫さん泣いてましたよ」

ローはフジが去っていた廊下を扉に凭れながら見つめている。

暫し沈黙を続けた後
ローは刀を手に歩き出した。

『僕は…もう生きたくないんですよ!!放っておいて下さい。』

「…ガキが偉そうに」

生きたくないだと?
…ふざけるなよ
助けた俺に…
医者の俺に言うか?
というか、指図するな
その足取りは少し怒りを含んだものだった。


-----------------

此処は一体何処なんだろう
耳に聞こえるこの音は何?

冷たい壁越しに伝わる不思議な音に混じり機械音がする
湿度も高いこの空間はまるで梅雨時期の故郷を彷彿とさせた

あの人は海賊だ
なら此処は海賊船?
この異音は海中を進む音なのか
異国の文化とはいつ見ても驚きが溢れてる
そうこうしている内に辿り着いたの船首部だった。

「お前、起きたのか」
「……ぁ。」

そこにいたのはオレンジ色のツナギを纏った、自分の身丈よりも大きな白熊がいた。

あの時会場でも思っていた
自分の故郷にはこんな生き物はいなかったし、まず衣服を纏い、二足歩行をし
言葉を話す動物が存在したというところで自分の知識の範疇を越えている。

生き物は種類によって指の数や作りが違うが…この白熊は人間のように五本指で、触り心地のよさそうな白い毛皮に覆われた手で私の頭を撫でた

そんな不思議な生き物が自分を見下ろし、首を傾げている。
こちらが首を傾げたい

「どした?なんかついてる?」
「…いえ、何もありません」

ふわふわとした『天然』の毛皮を生やした愛らしい生き物は見た目とは違い、案外声は低かった。

フジが目を丸くしていると、喋る白熊ことベポは口を開いた。

「お前あんまり歩いたらキャプテンに怒られるよ!」
「…別に構いません。」

「…あ、そういやお前名前は?俺はベポ」
「私は…「フジ様!フジ様でありませんか!!」

その時、ベポの後ろから出てきたのはベポよりも大きな大男だった

「ジャン…バール様。何故貴殿が此処に」
「あのトラファルガー・ローに助けられました。…ご無事でなによりです」

ジャンバールはそう言うとベポをはね除け、フジの小さな手を両手でがしりと握った。

「無事で良かった!…本当に」
「………僕は」

再び会ったジャンバールに首輪の姿は無かった。
彼は自由を手に入れたのだ。
誰かの意思で爆死する事は無くなったのだ
以前はロズワード聖の船長コレクションの一つだったが、今は奴隷の烙印だけが残った海賊に戻っていた

ふと羨ましいと思った。
この重い、所有物だという証がないと事が
縛り付けられるもののない生活が
自分の意思が素直に口に出来るという事が。
羨ましかった

「…貴殿だけでも自由になれて良かったです。」
「フジ様…」

自分は穢い
平然と嘘をつくことができる。
穢い体で男をたらしこむ事もできる
自由になれたところで自分には…あの籠が待っているだけだろう


「……私を早く何処か陸地に下ろすべきです。海軍本部が大将を率いて私を捕まえに来ますから」
「えっ、海軍来るの!?しかも大将!?」

「恐らくは。この首輪には発信器が付いていますから…この船が海上に浮上した際、信号がマリージョアに送信される筈です。」

多分来る
大将…あの嫌な男が海兵を率いてやってくるだろう。
自分や天竜人に関わる事件はあの男がいつもいるのだから
飄々とした笑みを的ってシビアな事を平気で言うあの男が…


そう考えると事態は宜しいものではない。
海中で信号が送られるのかは謎だ
距離的に信号が届いているのかは分からない
だが普通の船よりは幸運なのかもしれない。

潜水艦はどれぐらいの頻度で浮上するのか?
浮上した時は信号は送信されるだろう
受信されるかは分からないが確実に送信はされるのだ。

居場所が分かれば、すぐに追っ手がかかる。
そうなれば…

「僕がいることで皆さんに迷惑がかかります。ジャンバール様はせっかくの自由を手に入れたのですから掴みとらねば」

自分が犠牲になれば良いのだ
どうせ、自分にはあそこしかない

フジはそう小さく呟くと目を閉じた。

帰りたくない
あんな地獄にでも自分のせいで誰かが傷付くのは見たくないのに

まだどこかで思っているのだ。
生きたいと
鎖も首輪もない世界で
でも帰らなければならない


「ガキが偉そうな口叩いてんじゃねぇ」

「あ、キャプテン」

若い男の声の後にベポの呟きが背後から聞こえた。

低い、静かな怒りを含んだ声が聞こえた。

「貴殿には関係ありません」
「この船の船長は俺でお前を手当てしたのも俺だ。関係ある」

「……」
「お前、なんで女の格好なんかしてる。」

「…『命令』だからです。」
「身体のアレは誰にやられた。」

「……これを付けた人達」

フジはじゃらりとアメジストの嵌まる重い首輪を指で持ち上げた

「表向きは天竜人チャルロス聖正室となってはいますが、実際の所は天竜人の『愛玩人形』のようなものです。」

欲望の捌け口
娼婦や男娼にも劣る
穢い人間
奴隷の最上級とも言えるのではないかとさえ思える

「従順で可愛くご機嫌とりに腰が振れるなら性別など関係ないのですよ。あの人達にとっては…」

フジは襦袢の裾を強く握った。
身の毛がよだつようなおぞましい行為が毎日繰り返されていたと思い出せば寒気がした。
いくら手を伸ばそうと
いくら叫ぼうとも
救いの手はなく
他者の嘆きに その苦痛に
眠れぬ夜を越し
逃げる事も出来ず
ただ目を瞑っていた。
一人窓の外の景色を眺めていた

「…もう目を開けなきゃいけないんですね。」

辛い事から目を背ける
それは自分の唯一の逃げ道だと思っていた

でもそれは間違いで立ち竦んだまま
動こうとしなかっただけだった。


フジがそう呟くと
いきなりローがフジの無理矢理肩を掴み、自分の方へ向き合わせた。

向き合う二人は必然的に身長差から見上げ、見下ろす形になる

すると、ローは口を開いた。

「お前…自分が世界を守ってるとでも思ってんのか。」

その顔は怒りの色を含んだものだった
声にもその表れが出ている。

「他人の不幸を自分の身一つで守りきれるとでも思ってるつもりか」
「…えぇ」

「…傲るのも大概にしろ。自分の身一つ守れねぇガキが偉そうに。」


フジは目を思わず大きくした。

こんな事を自分に言った人間はいただろうか
否、そんな存在いなかった。

周りの人間は皆、己の死を恐れ
嘘を纏った媚びを売り
信頼出来る人に出会えたと思えば殺され
海軍や世界政府の人間達は天竜人に媚びへつらえとばかり言ってきた

これ以上問題を増やすなと
伸ばした手すら叩き落とされた

「…僕に生きる価値はあるのでしょうか。」


多くの人が犠牲になった。
ただ喋っただけ
ただ触れただけ
ただの一笑みが 多くの命を奪った。
自分の行動が、言動が
人を殺した

フジの声は震えていた
心なしか身体も震えている
頼っていいのか?この自分が
巻き込んでいいのかと心の中で叫んでいた

「…自分の価値は自分で決めろ。他人にどうこう言われようが関係ねぇ」

言葉が心に刺さった
『自分の価値』

「生きたいなら生きれば良い。死にたいならさっさと死ねばいい…決めるのはお前だ」

黒い目がしっかりと訴えかけてきた。
黒い隈が出来たその目は奥底で輝いている
その時初めて自分は解答から必然的に逃げようとしているのが分かった。

生きる事が辛いんじゃない
考える事が怖かったんだ。

自分のせいで誰かが傷付く事
他人からの罵りで自分が傷付く事が何よりも怖かった

フジは唇を噛み締めた

「僕はちっぽけな人間です。他人に敬われたりするような存在じゃない…死んでもすぐに忘れられてしまうような人間です」

自分の価値なんて分からなかった
生きる意味が分からなかった。

「誰だってそうだ…だから何かを残そうと生きてる」

でも心のどこかでは真実を知っていて
いつの間にか自分は目を閉じてしまっていたのだ

「僕…私は芸人です。芸に命をかけて生きる事こそが私の人生です。」

そうだ
自分は鳥籠の中で囀ずり
愛でられるだけの鳥ではない。
ただ死を待つだけの人生など
無に等しいのだ。

「…力を貸していただけますか」
「自分の足で歩くならな」

「歩いてみせます。」
「…なら働け。この船に暫くは置いてやる」

ローはにやりと笑った。
フジも笑った。
どうやら互いに何か共感するものがあったようだ

ぎこちない笑顔だった
だが、それは今まで見た誰よりも綺麗だとローは思った

(ただ自由に生きたいだけ)
.

『何お前仲間になるの?なら俺の下な!』
『『お前が言うなっ!!』』

『…ごめんなさい。』






*アトガキ*
なんかぐたぐたと長いだけで微妙なとこで今回も終わってしまいました。
まっことに申し訳ありません(-_-;)

制作時間が長くなったり同じ言葉が何回か出てくるのはスルーして下さい。
大事なので何回も言ってるだけです(笑)
因みにまだ続きます
次は甘い感じになっていく予定です

いやはや、ワンピース新刊にて初めてハートの海賊団のあの二人の名前がありましたね
ペンギン帽の彼とキャスケット帽の彼です(笑)
尾田先生に聞いて下さった方感謝です!
ペンギンはペンギンなんですね!
相方はキャスケットではなくシャチ…名前が発表される前に書いた小説を訂正しようか迷います。
今回、次回以降は全てシャチで行きますので皆様許してください

なかなか上手くまとまりませんでしたが
今回はこの辺りで失礼します

椿


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あきゅろす。
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