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海上での告白【ほのぼの/甘夢】




俺は医者だ
何故医者になったかと言うのは自分にかかった病の治療法を見つける為だ
だから海軍に入った
才能と頭脳を気に入られ
好きに研究が出来る役職と地位を与えてもらった

別に患者を助けたいとか
人助けがしたいとか
名誉が欲しいとか
金儲けをしたいとか
そんな事は別に…ない
うん
必然的にそうはなったけれど。


「症状は大分良くなってますよ、後は引き続き軟膏と処方箋での治療を続けましょう」
「ありがとうございます、先生。いつもいつもタダで診て貰って」

鞄をカチリと閉め
外していた青いネクタイをまた結び直した。
ベッドの中にいる患者である老婆に微かな笑みを浮かべて、顔の前で手を振った

「いえいえ、私の研究費は民衆の税から来ているのですから…これくらいは」

莫大な研究費を考えると診察位しないと…心が痛む。

『まあ普通はしないな…こんななんの利益もないこと』

ネクタイをネクタイピンで留め、眼鏡を掛け直して椅子から降りた

「では二週間後また来ます。何かあれば私の電伝虫にご連絡して下さい。まぁ…何時でも」

では失礼しますと頭を軽く下げてから患者の家を後にした。
「…で、何であんたが此処にいんですか」
「あらららー。上司の優しい気遣いってのが分かってないねぇ、グレン君」

海岸に停泊していた筈の海軍の船が無くなり、替わりにいたのは自転車に跨がった大将、青雉の姿だった
グレンはそれにヒクリと口端を震わせる

「……クザン大将…俺が乗ってきた海軍の船が無いんですが。」
「あぁー、船ね。船なら……俺が帰らせた」

はぁっ!?
グレンは口には出さないものの
ポーカーフェイスの裏側で絶叫していた

『何がしたいんだよ!?この人!暇人か!?サボりか!?』

波間が揺れる音を聞きながらグレンは溜め息を吐いた

「……大将自ら足を運んで頂く事、私のような一介の研究者には畏れ多いかと」
「まあお堅い事言いなさんな。」

「いえ、大将の執務に差し支えが生じてしまいますから。私は『船』で本部へ帰りますので、クザン大将もお帰り下さい」
「執務っつうほどのもんもしてねぇけどな。まあ後ろ乗りなさいよ」

「…私、海王類に遭遇した場合対処出来ません」
「俺がいるからいいんじゃない?」
「私は貴方直属の部下というわけでもありませんし、そこまでご迷惑おかけできません」
「グレン君、その他人行儀な喋り方やめない?」

話が噛み合っているようで噛み合っていない会話を何回か繰り返し
グレンは頭を強く掻いた

「グレン君カルシウム不足じゃない?」
「はは、そうですねー」

「働き過ぎなんじゃね?」
「貴方はだらけ過ぎです」

疲れた
グレンは地面にしゃがんで視線を地面に下ろした

その時自分の身体に浮遊感を感じたのだ

「え…あっ…ちょ、何を」
「まぁ黙ってなさいよ」

いつの間にかクザンに軽々と担がれ、自転車(青チャリ)の後ろに跨がせられた。

グレンは抵抗する事も忘れて後ろに座った時に我に帰った。

「あの…ちょっと大将!」
「しっかり掴まっときなさいって」

クザンは前の席に座り、鞄を持ったグレンの両手を自分の腰に回させて
海面を凍らせ道を作っていく。
パキパキと音を発てて自転車が通れる程度の幅の氷の道が出来た
自転車はゆるゆるとその上を走っていく


何でこうなった?
青雉
クザン大将は前から変な人だとは思っていたが本当によく分からない。

つる中将直属の部下である自分、況してや海兵ではなく軍に属する医者、研究者の俺の所にふらりとやって来ては
隣で寝たり
セクハラして来たりする位で
別に関わりがあるというわけではないのだ

『何でわざわざ迎えに?』

疑問がふつふつと湧いてくる


穏やかな波音を聞きながら
クザン大将の腰に回した両手に力をいれた。

「…クザン大将」
「ん〜?」

「何故貴方はあそこにいたので?」
「なんでって…グレン君を迎えに来ただけ」

「だから何故俺を迎えに?」
「暇だったから」

……やっぱりサボり目的かよ

グレンははぁっと溜め息をクザンの広い背中に吐き出して、走っていく自転車からの景色を眺めた。

「…なぁ、グレン君」
「………何ですか。」

暫しの沈黙
穏やかな海の景色
ふとクザンが口を開いた。

「その…なんつーか……」
「…言うならはっきりしたらどうです?」

「じゃあはっきりするか。……グレン…なんつーか好きだ」


………………はい?

此処からでは見えないがクザンの顔に赤みがさしたように見えた
イマイチ理解できない
好き?
誰が?
クザン大将が?
俺を?
……好き?

「…それはどのような意味で?」
「そのまんま…の意味だ。」

「で、私はどうすれば?」
「あんた…見掛けによらず鈍感すぎるんじゃあないの?」

「好きだと言われたのは初めてなので対処に困っているだけです。」

そう内心焦っている
男に告白されたのは初めてだ

女と恋愛をすることもなく研究と患者の治療しかしてこなかった26歳の男が初めて告白されたのだ

焦らない筈はない
自分はゲイだったのか
確かに女に興味が湧いた事はない。
自分の育った境遇のせいかもしれないが、女に好意を抱くということが無かった

というより他人に興味が湧かなかった
湧いたのは医療研究だけで、患者にも興味は無かったし……

何よりこんな感情は初めてで戸惑って仕方ない

「……いつからですか」
「何が?」

「…その…俺を好きになったのは」
「さぁ…いつからかね。いつの間にか」


『目が追ってた。』

今度は自分の顔に熱が集まってくるのが分かった
…熱い
身体の中が満たされていく
何か目には見えないものに

これは…一体何だと

「……あの…グレン君?」
「…………。」

「おーい」
「……ちょっとは黙ったらどうです」

返事代わりにクザンの背中に頬を擦り付けた
腰に回した手の力を強く巻き付けた。

ギュッ
服越しに伝わる低温の硬い感触。
筋肉の硬さ
背が高いだけではなかったようだ

「……馬鹿」
「そりゃあ君に比べたら馬鹿ですよ」

「…でもこの感情が何なのかが理解できない俺も馬鹿だ」

クザンは暫く何も言わずに黙って自転車を走らせていた。

「俺のどこが良いんだか…髪なんか真っ白だし、目真っ赤だし。思いやり無いし、研究成果が全てだし…素直でもないし、プライド高いし。」

グレンは眼鏡を静かに外して白衣の胸ポケットにしまった。

目が悪くて良かった
この時は幼い頃からの乱視に感謝だ
見たくないものを見なくてすむ。

「グレン君自分悪く言い過ぎじゃない?」
「俺は本当の事しか言いません」

「俺は好きだけどねぇー…雪みたいに白い髪も肌も赤い目も兎みたいで」
「……兎は余計です」
「それに思いやりの無い研究だけの人間は無料で往診なんかいかないでしょうが、わざわざ休憩時間使ってさ」
「……。」

「誰よりも仕事頑張っちゃって家に2日に一回帰る位の多忙さ…俺には真似出来ないわー」

キコキコ

車輪が回る
ゆっくり走っていく
この場所に今は二人しかいない。
他は誰もいない
そして今なんか…壮絶にむず痒い。

「大将…」
「ん〜?」

「貴方、結構俺の事見てたんですね」
「まぁ…好きな奴はいつだって見てたいでしょ」

「そんなもんですか。」
「そんなもんでしょ。」


「……大将」
「…何?」

「…付き合ってみましょうか」

恋愛って何なのか
好きって言う事は
人を愛するって事は何なのか。
「今は貴方が好きなのかよく分からないんで」

(それは初めての告白)
.

『まじで!?』
『嫌なら良いですけど?』
『誰も嫌なんて言ってないでしょうが!もうっ!…可愛いなーオイ。ツンデレとかさぁ』
『ツンデレ…てシンデレラの親戚かなんかですか?』


*アトガキ*
クザン主は変な所で鈍かったりするのが可愛さのミソです(´`*)でそんな所に青雉さんが萌えてたりしてたりするのが良いです

設定的には26歳
13歳の時にその類い稀な頭脳を買われ、海軍本部に入隊。
それより前に最年少で医者免許取得。
入隊三年後16歳で海軍本部で新しく創設された『特別医療研究班』の室長になります。
海軍へは海兵としてでなく、医療研究者として軍医も掛け持ちする事が条件だったので多忙な生活を送っています。

つる中将の部下という事になっています
が、自分の部下にしようとクザンは引き抜く為おつるさんに説得をする日々です。

階級としては海軍本部中佐に値します。
あくまでも軍医なので相当官という感じです

先天性白皮症
アルビノと言われる病気にかかっています。
治療法は見つかっていない病なので、その治療法を探すべく医者になったというわけです
詳しく知りたい方はwikiで調べてみてください!

先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患の為、
髪は真っ白
肌は乳白色
目は赤となっています
兎に角白いです
目だけが赤いので白兎みたいな感じです
実際は真っ赤と言うのは珍しいみたいですが、二次元なのでご理解下さい
ものっそい幻想的な美形です
後、凄い乱視の為常に眼鏡です
イメージ的にはこんな感じ


色付きはこんなんで


普段は前髪ピンで上げてます
絵上手い方描いてやって下さい(´ω`;)

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