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クリスマスローズ




あれから数週間が経った。



廊下ですれ違う度に。部活をしている時に。
貴方の姿を目で追ってしまう。


あの出来事は、悪い夢だったんじゃないかって

いつものように名前を呼んで
優しく頭を撫でてくれるんじゃないかって



まだ現実を受け入れられずにいる。



だけど。


「ねぇ、あれって仁王くんだよね?」


その現実はあまりに残酷で。


「ホントだ!隣にいる子 彼女かな?」
「お似合いだね〜」


「…」


私のささやかな希望さえも
簡単に打ち砕いてしまう。



「名前ちゃん」


突然視界が真っ暗になって。
私の名前を呼ぶ声がする。


「幸村先輩…?」
「飲み物買いたいんだけど、一緒に来てくれないかな?」


私の両目を覆う先輩の手をそっと解き
偽りの笑顔を向ける。




雅治の隣。

数週間前までは私の居場所だったそこには
今は違う子がいる。

凄く可愛くて笑顔が似合う女の子。
私なんかよりずっとお似合いに見えた。



「さっきの事、気にしてる?」


自動販売機から取り出したお茶を私に差し出しながら、先輩が問ってくる。



「…はい」


お礼を言ってお茶を受けとると
幸村先輩は悲しい顔をしながら
私の頭を優しく撫でてくれる。



「辛かったね」


彼と別れて以来
ずっと私を気遣ってくれる幸村先輩。



さっきだって

仲良く話す姿を見せないように
目をふさいでくれて。

その場所から私を遠ざけてくれた。


「先輩が助けてくれたから、もう大丈夫です」
「助けただなんて大袈裟だよ」


そう呟くとニコッと私に笑いかけた。


その優しさに応えたくて微笑み返すけれど。



心から笑えない、



「苦しくなったら、いつでも俺を頼ってね?」




どうして優しくしてくれるの?



聞きたい言葉が声に出せない



「ありがとうございます」



けれど




今はただ、


傷ついた心に癒しが欲しくて




彼の優しさを受け入れた。






それが彼を傷つけるとも知らずに−







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