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天の邪鬼


雪を踏む音が聞こえる。
快いこの音を奏でるのは一人しかいない。


「そんなカッコーで突っ立ってたら凍死するぞ」


ふわっと彼の匂いが僕を包んだ。そして体中に染み込んでくる、グリーンの温もり。


「自分の防寒着渡すなんて馬鹿?」

「お前が凍え死ぬよりマシ」


すぐそういうこと言う
ほんとお人好しなんだから


「で。何しに来たの」
「お前が心配だから来たの」


ニッとどこか幼げな笑みを浮かべる彼を可愛いと思った。


「頼んでないよ」
「頼まれた覚えもない」


会う度、切り返しが巧くなっている気がする。

僕の考えが読まれてるみたいで
ちょっと不愉快

不貞腐れ気味な僕を余所に、あっけらかんとしていたグリーンだったけど。


「厚着してても流石にさみーな。入れてくれ」


寒さに我慢できなくなったみたいで。
僕に被せたコートの中に入ってくる。


「入ってくるくらいなら自分の渡さなきゃいいじゃん」

「一人より二人のが温かいだろ」


そう言いながら、ぎゅっと僕を抱き締めた。


「…ま、いいけど」


グリーンに抱き締められるのは嫌じゃない
寧ろ温かくて、好き

…なんて
恥ずかしいから口が裂けてもいえないけど

きっと言わなくても伝わってるんだろうな

悔しいけど
僕のことよく理解してくれてるから


だからかな、


「グリーン」

「ん?」

「もう来ないでね」


こんなにも求めちゃうのは


少し間が空いて。グリーンの優しい笑いが耳朶をくすぐった。


「あぁ、一生来てやらね」

「約束だよ」

「約束」


そっと差し出した小指に絡めてくる彼の指は冷たくて。だけど凄く温かかった。



シロガネヤマにもやっと春が訪れそう。





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