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俺が支えるから



におぶん 




※新テニ8〜9巻内容/ネタバレ注意※






保健室。


ベッドを借りるほどの傷を負った選手が居るというのにそこに保健医の姿はなかった。


「随分と薄情な保健医じゃの」


返答を求めていなかった呟きに


「一人で快適だろい?」


保健室に入ってきた人物がそう答えながら
俺を見て笑いかけてくる。


「ボロボロだな」
「転んだだけぜよ」

「どんな転び方したらそうなんだよ」


苦笑しながらその人物―ブン太が
ベッド脇の丸椅子に腰を下ろす。


「…大丈夫なのか、腕」


心配してくれるのは嬉しいが
目を見て言いんしゃい


「…どうじゃろうな。未だに感覚は戻らん」
「っ…」


唇を噛み締めるブン太。その表情に胸が痛んだ。
なんて顔しとるんじゃ


「けど結果的に勝てたんじゃ。後悔はしとらん」


少し間が空いてポツリとブン太が呟いた。


「俺は後悔してるよ」


耳を疑った。
後悔しとる、じゃと…?


「なんで」と質問を投げ掛ける前に
お前さんは答えた。


「仁王のテニスしてる姿、大好きだった」


もう一度耳を疑った。
この緊迫した場面でそれを言うか

そう思ったら


「…ぷ」
「なっ、何がおかしいんだよ!」


笑いをこらえることができんかった


「何か遠回しに告られた気がしての」
「こっ、告ってねーよ!勘違いすんな!」


未だに笑い終えない俺を見て
ご立腹のブンちゃん。

その姿に再び込み上げてくる笑いを堪え
少しだけ潤んだ大きな瞳を覗き込む。


「俺が二度とテニスが出来んと。お前さんはそう思うとるんか?」

「…そうじゃねーけど」


ぶつかった視線から逃れるように
ブン太はふいっと目をそらした。



「心配はいらんぜよ」



ピクッと肩が震えた。
が、依然として俺の方を見ようとはしない。


頑固者じゃのう


「この程度の怪我、真田の鉄拳に比べれば可愛いモンじゃ。それに怪我のひとつやふたつで逃げ出すほど俺の覚悟は甘くないナリ」


なにより


俺のテニスしとる姿が好きじゃと
お前さんは言ってくれた


「意地でも立ってやるぜよ、もう一度コートに」



俺はそれに応えたい




「…うっし!」



……は?


何を思ったのかいきなり
気合いを入れ始めるブン太。

当然のことながら
頭上に?マークが浮かぶ。

さっきまで頑なに俺と視線を合わすことを
拒んでいたのに

どういう心境の変化か今はしっかりと
俺の瞳を捕らえて離さない。


「んじゃ!今日から俺がお前を支えてやるよ!」
「は?」


終いには子供みたいに目を輝かせて
訳のわからんことを言い出すし。


「だから、左手使えねーと不便だろい?そこを俺がカバーするって言ってんの!」

「俺のために…か?」

「ああ!自分で言うのもなんだけど俺 面倒見いいから。放っとけねーんだよ」


本当に何を考えとるんじゃ
この甘党は


「それに、好きなやつが苦しんでるときは力になってやりてーモンだろい?」


恥ずかしい台詞をよくもまあスラスラと
聞いとるこっちが照れるぜよ


「余計なお世話じゃと言いたいところじゃが。…ここは素直に甘えとくかの」


けどま、そんなお前さんが


「ありがとうな、ブン太」
「おう!」



俺はたまらなく好きなんじゃな



とんだペテン師ぜよ


「あ、そうじゃ。さっきはああ言ったけど」
「ん?」


ひとつだけ


「後悔しとることがある」


この言葉を聞いたあと、ブン太が
どんな顔をするか想像すると胸が弾む。


「両腕でブンちゃんを抱き締められんことが唯一 残念ナリ」

「…っ」


思った通り顔が真っ赤じゃ
予想通りの反応に優越感に浸っていると


「ならさ」
「!?」


突然訪れた想定外の出来事に目を見開く。


「俺がこうして抱き締めてやるよい」


鼻孔をくすぐる甘いお菓子の匂いに
首に回された腕にブン太の温もりを感じた。

視線をあわせると

いつものお返しだと舌を覗かせて
少しだけ頬を赤く染めて笑うから


「…っ」


反則じゃろ


いきなり抱き付いてくるなんて想定外すぎじゃ
ましてやそんな顔で俺に笑いかけるなんて


可愛すぎるじゃろう


…くそっ


「仁王?」


今顔をあげたら一生ネタにされていじられる
それだけはごめんぜよ


ブン太の問いに顔をあげることなく
俯いたまま呟く。


「腕が完治したら覚えときんしゃい」
「へ?何が?菓子くれんの?」

「うっさい」
「何怒ってんだよ、わかんねー奴だな!」




腕が治ったらもうやめてくださいと
懇願するくらい抱き締めちゃるから
覚悟しときんしゃいよ




俺が支えるから




「そう言えば。疑問に思っとったんじゃが、何で目逸らし続けたんじゃ?」

「あり?バレてた?」

「バレバレじゃよ。隠すんならもうちと巧くしんしゃい」

「いやさ、苦しんでる仁王の為に俺がしてやれることって何だろうって考えてたら何か目ぇ見れなくなってな」

「じゃから俺を支えると言ったときはバッチリ視線を合わせてきたんじゃな」

「おう!」
「…」

「そういうことは他のやつの前でしたらいかんぜよ」

「え?何で?」

「…プピーナ」

「ちょ!返答に困ったら意味わかんねー単語使うのやめろよい!」

「…プリッ」




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目をそらし続けられて若干ショック受けてた仁王くん。
理由がわかってホッとした途端に独占欲が出てきちゃったり…してたら美味しい(^q^)


仁王くんがリハビリ施設へ旅立つ少し前のお話し。





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