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白昼夢

メ→獅 



好きだった

それは今でも変わらないこと

だけど

その想いを伝える前に

貴方は遠くへ行ってしまった

どれだけ手を伸ばしても届かない

あの真っ青な空に



消えてしまった





メフィスト!

声がして振り返れば
何時も貴方が居た。

私はそんな彼の存在を
半ば鬱陶しく思っていた。


何ですか


と問えば、用はない。
ただ、逢いたかった
とその口は言う。


物好きですね


興味なく答えた私に
彼は無邪気な笑顔を浮かべた。


素っ気ない素振りは照れ隠し。
素直になれなくて
強がっていただけ。


本当は凄く嬉しかった。


在り来たりな毎日も
他愛ない幸せも
これから先もずっと、
続くと思っていた。


なのに


毎日のように私の傍に居た
存在はもう、ない。


嬉しかったその言葉も
もう、聞けない。


私に向けられたあの笑顔も
今はもう、ない。


当たり前だと思っていたことが
当たり前ではなくなった。


手を伸ばす先に
貴方は居なくて。


名前を呼んでも
返ってくる声はなくて。


貴方が身に付けていたものに
温もりや匂いはなくて。


藤本獅郎という
存在そのものが
消えてしまった


その事実だけが
私の心に酷く響く。



逢いたい



紡いだ言葉を噛み締めた。


どれだけ願っても逢えない
現実の痛みを知っているから。


頬を伝う滴が乾いた地面を濡らす。


悪魔が人間を想って
涙を流すなんて滑稽ですね


本当、馬鹿みたいな話ですよ




私がこんなになってしまったのも
全部あの神父の所為



どうやって責任をとってもらいましょうか、全く



酷く綺麗な笑みを浮かべて、




願うのなら

叶うのなら


もう一度、



貴方の声を聞きたい―



そう、強く想った

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あきゅろす。
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