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優しい君は残酷だ




「え?
なんで…」




目の前には
さっきまで考えてた
お兄さんがいて、これは
幻覚なのじゃないかと疑う。




「うーん
何となく…じゃダメかな?」




それを俺に聞かれても…。
でも、また会えると思って
いなかったから、正直に嬉しい。




「あ、いえ」




「……」




どうすれば良いんだろう
沈黙がいたい。




「ねぇ」




先に沈黙をこわしたのは
お兄さんの方だった。



「はい…。」




「こう言うのも失礼なんだけど
もし、行くところないのなら
俺の家に来ない?」





「えっ…?」




お兄さんの思いがけない言葉に
とっさに声が出る。
多分この人は俺が
行くところがないって
分かってそう言ったんだと思う。




「あの部屋広いから
もう1人増えても大丈夫だし」




「あ、いえ、そうじゃなくて
そのお兄さんの言う通り行くところが
ないですけど、俺はなにも持ってませんし
他人の俺がいては迷惑かけちゃうだけです…」




“他人”というのは楽で難しい。
矛盾してるのは分かってる。
だけど、引き取ってもあとから簡単に
捨てられる。いくら好きになって
もらえるように頑張っても…
受け入れてもらえないなら
最初から…っ。





「じゃ…
俺のお手伝いをやってもらえないかな?
まぁ、家事全般をしてくれれば
いいんだけどそれなら大丈夫かな?」




これは、お兄さんの優しさだ。
俺が何か“理由”がなければ
首を縦にふることができないことを
知ってるんだ…。





「……はい。
頑張ります」





「うん、
これからよろしくね」





「よろしくお願いします」





お兄さんの優しい笑顔に
泣きそうになる自分がいた。
拳を強く握りしめて
精一杯の笑顔をつくる。






こうして、
俺とお兄さんとの
暮らしが始まるー。








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