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優しい君は残酷だ



「あ、いえ
大丈夫です。こちらこそ
助けて頂きありがとう
ございました。」




「いいえ。」




「あの、俺の
荷物とかは…」




助けてもらったのに
荷物は?とか聞くのって
失礼かな…。




「それなら別の部屋に
置いてあるよ、ちょっと
待ってて取りに行ってくる。」





「あ、すみません」





軽く一礼すれば
お兄さんは笑ってくれた。
そして、そのまま部屋を
出た。




ここは何処だろう。
ベッドからおりて窓に近づき
カーテンを開ける。




そこには見える範囲の
建物が小さく見えるくらい
今いる所が高い事を実感する。




思わず小さい声で
「すごい…」と言うほどに。





あの人は、“お偉いさん”とか?
どこかの坊っちゃんとか?
でも、あり得そう。




纏(まと)ってる雰囲気が
普通の人と違う。
一つ一つの仕草が綺麗で
目を奪われるからだ。






ガチャ




「起きて大丈夫?
公園にあったのは
これしかなかったけど
君のであってるかな?」





「はい、もう大丈夫です。
ありがとうございます!
はい、それで間違いないです」




お兄さんから荷物を受け取る。
そこで、自分が幹さんに
捨てられたという現実に
引き戻されてしまった。





「大丈夫?」




そう言うと俺の
頭をなで始めた。
その手は優しくて
安心する。




「…はい。」




「そう?
なら良かった。

家に送るよ。」




「あ…大丈夫です。
1人で帰れます。」




離れた手が少しだけ
恋しいと思ったのは
気付かぬふりをする。



帰れると言っても
帰れる家なんてどこにもない。




「そうか。
無理しないでね?」





「はい。色々
ありがとうございました。」



  

これで別れると思うと
少しだけ寂しいと感じる。





「本当に
ここまでで良いの?」





玄関につけば
お兄さんは心配するように
そう言う。




心配性だなこの人。でも
誰かに心配されるのって
嬉しいものなんだ……。




「大丈夫です!
本当にありがとうございました。」




深々とお辞儀をした。
助けてもらったお礼と
見ず知らずの俺に優しくして
くれたお礼も含めて。















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あきゅろす。
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