優しいキミは残酷だ
1
「お前なんて本当は最初から引き取りたくなかったんだ」
朝目が覚めて幹(ミキ)さんがいるリビングに向かった。幹さんに呼ばれて行けば突然言われた言葉に思わず情け無い声が出る。
「え?」
「今度から俺の娘がここで一緒に暮らす事になっていたんだ。だが他人がいる家には暮らしたくないって言われてね、だから出て行ってくれ。」
「…………」
突然の衝撃の言葉に思考がとまり言葉が出なかった。
「お前もバイトしてたろ?バイトで稼いだお金で生きていけるだろ?」
「…でもっ、
学校はどうすんの!?」
「やめれば良い話しだろ。先生には話しとくから心配するな。分かったら荷物をまとめて出ていけ。」
「………分かった。
今までありがとう。」
それだけ言って
自分の部屋に戻った。
ーーーーー
幹さんは俺が8歳の時に引き取ってくれた。
両親は2人とも死んだ。俺を誰が引き取るか大人達が揉めていたのは今でも鮮明に覚えている。
大人達はみんな、
「他人を育てるなんて嫌。」って口を揃えて言う。
そして話しが終わったのか1人の男性が俺の前に来た。それが幹さんだ。幹さんは俺の前に来て「今日からお前は俺の家で暮らす事に決まった。」そう言った。
その日から幹さんの家で一緒に暮らす事になった。暮らして何日かたち「用事がなければ話しかけるな。」幹さんにそう言われた。まだ8歳の俺にでも意味が分かった。だから幹さんの言う通り用事がある時だけに話しかけていた。
また後から知った事で幹さんは父の知り合いで会社で仲の良かった同僚だそうだ。どうして幹さんが引き取る事になったのか分からない。今まで聞かなかったし疑問にも思わなかったからだ。
幹さんは最低限俺に何もしてくれなかった。そして俺が泣くと「泣くな五月蝿いから。もし泣くなら出ていく覚悟で泣け。」って言った。だから俺は捨てられたくなくって泣かなくなった。泣くときは必ず外で泣くようにしてた。
学校には行かせてくれた。だけど授業参観などや親が必要な行事には1回も来た事がない。また修学旅行や遠足はお金がかかると言って行った事がない。
9年間ずっと一緒にいたけどきちんと話した事もなければ一緒に出掛ける事だって数えるくらいだ。
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