Other あったかい始まり[卒業生] 「佐条、佐条!あーん!」 「あ……?」 ぱくん。反射的に開いた口に、焼きたての卵焼きを入れる。 「あつ……卵焼き?」 「おう!どうよ?パサパサしてないだろ?」 「…ほんとだ」 むぐむぐ。確かに水気があって、噛みしめると出汁がでてくる。 「うまい?」 「うん…うまいよ」 「よしゃ!シコーサクゴした甲斐はあった!」 もぐもぐ。ごくん。 喜ぶ草壁を横に、しばらく考え込んだ佐条が口を開いた。 「………やだ」 「へ?」 佐条の突然の否定の台詞に、草壁ぽかんとした表情になる。 「パサパサじゃない卵焼きは草壁の卵焼きじゃない」 「えぇ〜!?…俺頑張ったのに……」 パサパサのが良いと言い張る佐条に、草壁はがっくりと肩を落とした。 その翌日。 「あ、卵焼きパサパサだ」 「こっちのが良いんだろ」 幼児の様な、どこか拗ねた顔。 「うん。草壁のならなんでも食べるけどね」 少し笑いながら、やっぱりこっちの方がいいと続ける。 ふいと顔を上げると、 「ちょ…っなんで赤くなるんだよ」 「なんか今すごいこくはくされた気がする!!うわーなんか恥ずかしい!!!うわーうわーうわー!」 どたばたと足踏みする草壁を見ていると、なんだか自分が変な事を言ったように思えてきて。 「……ってなんで俺まで赤くなってくるんだよ!!」 二人して騒ぎ疲れて、畳にくったりと伸びた。 お仕舞い! |