SS
ACT8
仕方がないので、僕は男がベッドを作るのに使っていない椅子に腰掛ける。
此処が、父の裏稼業の場所か。
――そして、秋山の職場。――
やることも特に無いので店内を見回し観察する。
掃除は行き届いているようだが、重そうな木のテーブルには傷が所々あり、木の繊維がめくれて奥の白地が見えている。
壁にかかっているジャズシンガーかなんかだろう黒人の写真も、白い部分が若干茶化ている。
カウンター内の棚には、所狭しとぎっしり並べられたウィスキーと思しき酒の瓶。こちらも、埃等はついていないのだが、何だか古めかしく見える。
映画等で出てくるような典型的な、若干錆びれてはいるが年季が入って味のあるバーという感じ。
…………本当にこんなところで裏カジノなんてやっているのか?
雰囲気もそうだが、面積が余りにも狭すぎるし。
でも、調べでは此処に間違いはない。
ビザールなんてバーは此処しかなかったし。
ポケットの中でアドルフ達(飼っているジャンガリアン、携帯している三匹の名前)がチューチュー言っている。
僕は鞄からヒマワリの種を出し、ポケットに入れる。
ポケットの中でカリカリ音がしている。
カリカリカリカリ、カリカリカリカリ、
なんだか僕は段々眠くなってきた。
慢性的な不眠症なので、よくわからないところで眠くなる。
やることも無いし。
アドルフ達の規則的なカリカリも手伝い。
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