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ACT7
何でそんな場所で……………
よりにもよって、何でそんな場所で…………
僕と関わりのあるそんな場所で…………
だが、この関東地域だと、裏稼業を仕切っているのはほとんど僕の父親の傘下だ。裏で働くとなれば、十中八九そうなるだろう。少し考えれば仕方のないことだ。
……………それにしても、あんなに、お人よし神崎に肩入れしていた秋山が、犯罪歴があるにしろ今そんな裏稼業に手を染めているなんて。
何故なんだろう。
神崎の主張にひたすら苛つきを覚えて否定し続けていた僕なのに、そんな風に思ってしまう。
秋山は、どうしてしまったのだろうか?
秋山に只会いたいと無心に思い昨日の今日此処に来たが反面、そんな疑問が突如湧いて来てしまった。
それにしても僕は、実は初めて、父親の傘下の裏稼業の場所に来た。今まで知っていたのにも関わらず、そんな場所に来たことは無かった。
中華街の華やかな喧騒からは少し離れている。住所的には中華街で間違いはないのだが。妙にその場所だけ落ち着いたような灰色の建物ばかりある。
僕は、栗藤から聞いた秋山の働いている場所、裏と言えば関東でも確実に僕の父親の傘下であるこの中華街で、最近新人の入った店を調べた、即刻で確定出来た。
その店、BAR Bizarreという場所だった。
重そうな木の扉を、ノックする。
今現在昼間なので、バーである此処には誰もいないかもしれない。
するとしかし…
「……………何ですか………………」
しょぼくれた表情の男が出てきた。茶髪でホスト崩れな風貌。黒いスウェットに身を包んでいる。日本人だろう。
眠そうに目を擦っている。
「あ、もしかして、面接の子?」
「ち、違いますよ!!僕は此処のオーナーの更に、資金提供者の横谷金融の社長の息子のヨコヤノリヒコです!
あの、此処で秋山深一さんて人働いていますよね?会いたいんですが…」
………しかし、男は扉に手をかけて開けたまま寝ていた。
「………ちょっとあなた……!!」
揺さぶると男は、
「……ん、ああ、ごめん、昨日飲み会で寝てなくてさ、取り敢えず店長来るまで待ってて、…俺寝てるけど気にしないでね。君、中国人?可愛いね。
まあそんな感じでよろしく………」
間接照明だけがついたそのバー、椅子は十席しかない小さなバーなようだ。その椅子をいくつか並べて簡易ベッドを作っていたらしい男はそこに横たわって、宣言通り寝に入ってしまった。僕の話は全く聞こえていなかったようだ。
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