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ACT1
僕は、恵まれている人間だった。

そして、特別な人間なんだと思っていた。


産まれた瞬間から、人間にはどんな努力を持ってしても変えられない、家庭環境というものがある。

そして、その家庭環境に見合う教育がある。

どんな頭の良い人間でも、ハイソサエティな家庭に産まれなければ、充分な教育、そしてそれを発揮する場は与えられない。与えられる数々の高等な選択肢自体がそもそも存在し得ないのだから。


父は成金。貧乏な家庭から成り上がり、一代で今の地位を築いた。
その父の努力や頭脳のお陰で今の僕はいる、と分かってはいるが。そして感謝もしているが。


僕は、既に幼少の頃に陰で成金と呼ばれる父に気付き、馬鹿にしていた。

僕はその成金の息子だという事実を分かりつつも。

成金としか言われない、父の産まれの家を馬鹿にしていた。


僕は違う。

その、成金という家がスタートライン。それをステップにし、この横谷家を確固たる家柄にしてやると思っていた。


僕なら出来る。





―――――それが、まさか、そういう全部の考えが崩されるようになるなんて、思ってもみなかった。
自分でそうするのならまだしも、他人によってそうされるなんて。

まさか、他人が僕の人生に対してそこまで存在感を現してくるなんて。



今まで、親すら、人生においての駒でしかないと思っていたのに。



人生というものは凄く不思議だ。あるちょっとしたきっかけで、今までゴミのように思っていたものがダイアモンドのような輝きを放ってくる。

今の僕は、今まで低俗でくだらなすぎて耳が腐ると思っていた愛を歌うポップスにさえ、少しの共感を覚える。




そう、

あろうことか、



僕は恋に落ちてしまったのだ。





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