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SS
ACT9


「そうかもな。高くても大して美味くないやつあるのと一緒だな。安くて美味いもんは結構ある。

…………それより、俺はお前の口が小さいのを発見したことがなんか嬉しい。」

ヨコヤは口を拭きながらチキンを食べながら首をかしげこちらを見る。


「秋山さんは着眼点がいつも不思議ですよね。
だからライアーゲームでもあんな奇策を思い付くんでしょうね。」

またチキンへ。

俺はチキンを食べているヨコヤの口をじっと見つめる。
ヨコヤの好きなところは沢山あるが、口は今まで特に気にしていなかった。

だからじっと見つめてしまう。

口が小さいので、かぶりついても沢山入らないようだ。かじっているみたいだ。
その少しを咀嚼して、また食べる。小動物みたいだ。
そして口を拭く。

チキンを見つめる伏せた目がまた良い。

切れ長の目に長い睫毛、これとその小さい口。

絶妙なバランスだ。

自然と口元が緩んでしまう。

「………あの、秋山さん。そうやって見つめられていると凄く食べにくいのですが………。しかも何でそんなニヤニヤしてるんですか?」

「ああ、悪い。
なんか、俺はお前の食べている姿が凄く好きかもしれない。」


「普通に食べてるだけですよ?


………でもまあ、僕も貴方のそういう不思議なところ嫌いじゃないですけどね。」


ニコリと笑う。
薄い、だが血色の良い唇がチキンの油でつやつやしている。
チキンの油という色気皆無のものだが、凄く艶めかしく、愛らしい。

凄くキスしたい衝動に駆られるが、そこはぐっと我慢する。

ヨコヤの無邪気さは俺が何よりも一番好きなところだから。


初めて食べるジャンクフードに子供みたいに喜んで夢中になっているヨコヤを妨害することなんて出来ない。




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