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D.C.half
工藤ルート 1
「ふぁあ・・・・」

俺は、あくびをしながら頭をかく。

「あ〜。テストが終わると睡魔がいきなり強くなるんだよな・・・。こう、レベルが5から70くらいに。」

「あがりすぎだろ?というか、お前も眠くなるんだな。」

そばを歩いていた工藤が意外そうに俺の顔を見る。

「失敬な。俺だって眠くなるときはあるよ。」

俺はそういって顔をしかめる。

俺たちは公園で買い食いでもしようと思い、ぶらぶらと歩いていた。

本来なら杉並も一緒なのだが、「今日は風が悪い」などとほざいてさっさと帰った。

それで、俺と工藤だけという珍しい状態だった。

「それにしても・・・お約束のように桜木には負けたな。」

「勝つのはいいんだが・・・なんでいつも一点差かな?」

それだけ言って俺は苦笑する。

話は、数時間前に戻る。


「じゃあ、テスト結果と順位教えるわよー。」

水越先生が手に持った書類を配りだす。

「はい、玲夢。アンタはもっと勉強しなさい。」

「うぅ・・はい。」

教卓のまん前にいる玲夢に渡しながら苦笑しているところを見ると、また悪かったらしい。

「桜木、はい。いつもどおりね。」

俺には随分あっさりと渡すところをみると、悪くはなかったらしい。

「どれどれ・・・」

俺はもらった用紙に目を落とす。


現代国語87

古典84

数学98

英語87

歴史86

科学86

合計528

校内順位  30位


「まぁ、こんなもんか。」

そのまま歩いて席に向かう。

「どうだ?桜木。」

前の席の工藤が成績表を手ににやりと笑う。

「今度こそは俺が勝つからな。」

「どうかな?俺だって負けねーぞ?」

そういって、お互いの用紙を交換する。

「どれどれ・・・」


現代国語85

古典86

数学94

英語90

歴史85

科学85

合計527

校内順位  31位



「くそっ!まけたっ!」

「ま、いつもどおりだな。」

俺はそういって工藤に用紙を返す。

「みてろよ・・・いつか絶対超えるからな!」

工藤がくやしそうに俺に用紙を返してくる。

俺は、それを受け取りながら杉並の点数を覗く。

「げ、案の定オール100点かよ。」

「フッ・・・いつもどおりだな。」

杉並が不敵に笑いながら用紙を折りたたむ。

「むしろ、こんなテストで100点をとれないお前たちのほうが分からん。」

この後、杉並に拳を入れたのは言うまでもない。


「まぁ、それが当たり前になってるからな。」

工藤は笑いながら歩を少し早める。

「おじさん、チョコバナナを二つ。トッピングは一個がチョコで、もう一個はグミ。」

「はいよ。」

工藤がなれたように注文するとすぐに出てくる。

「あれ?工藤ってここ結構来るのか?」

「ああ。水越さんに誘われたり、自分で買いに来たりな。」

受け取ったチョコバナナを俺に差し出しながら工藤が応える。

「お、サンキュ。」

受け取った俺は早速頬張る。

チョコの甘さと一緒にバナナの味が口の中いっぱいに広がる。

「ん〜。やっぱり、うまいなぁ・・・」

「全くだよな。まぁ、毎日はきついけどさ。」

工藤が笑いながらベンチに腰を下ろして頬張る。

その短い動作も、緩慢な中にきらきらとした何かが放出される。

「・・・GN粒子?」

「・・・?なんのことだ?」

「いやいや、なんでもない。」

俺は工藤の隣に腰を下ろすとバナナを加えたまま工藤を見る。

さっきは冗談だったが、工藤は下級生にかなり人気がある。

実際、工藤の顔立ちのよさは同じ男としてうらやましいものがある。

さらに、工藤はどこか雅な感じがある動作をしたりするというのもポイントが高いのだろう。

無論、女子の。

「・・・桜木。見つめられると食いにくいんだが。」

「あ、わりぃ。」

工藤からジト目でにらまれ、目をそらす。

目をそらした先に、女子生徒の姿が見える。

「なぁ、工藤。うちの制服ってけっこうかわいいデザインだな。」

「ん?ああ。全くだな。どっかの有名デザイナーがデザインしたらしいぜ?」

といっても30年も前だけどな、と工藤が付け足す。

「いや、神だね。あの、折らずとも短いスカートとかセンス良すぎだろ。」

そういっている途中で強風が吹き、目線の先にいる女子のスカートがひらり、と踊る。

「おっ!ほら、工藤も――――ひっ!?」

俺は同意を求めようと工藤を見て、固まる。

工藤は笑顔のまま、食べ終わったチョコバナナのクシを片手で折って、鋭いほうを俺に向けていた。

「わるい。最近ぼーっとしててさぁ、ぜんぜん聞いてなかったよ。で、なに?」

工藤の目が笑ってない。これはマジでやばい。

「い、いえ。なんでもありません。」

「よろしい。って、桜木!手、手!」

はっとしたように工藤が俺の手を見る。

「うわぁ!」

その目線を追った俺も驚く。

チョコバナナのチョコが溶けかかり、もっていた手に滴っているのだ。

「ああ、もう!馬鹿な話してるから!」

あわてて食べる俺を横目に、工藤がため息をはいた。


「へっくしゅん!」

思いっきりくしゃみをした玲夢を見ながら、体温計を見る。

「37度8分。完全に風邪だな。」

「うう〜テスト終わったら遊べると思ってたのに〜。せっかくの授業少ない日が〜。」

「自業自得だ。早春にソファで寝るお前が悪い。」

呻く玲夢の頭にひえぺタを張りながら言う。

前日の夜、玲夢は夜遅くまで深夜放送を見ていたらしく、そのままソファで眠っていた。

ご丁寧にリモコンは離さずに。

「だって〜へくしゅっ!」

「だってもなにもない。ま、俺も学校休んで看病してやるから我慢しろ。」

そういって、電話の受話器を取って電話をかける。

プルルルル・・・・

ワンコールで出た。

「あ、もしもし。3組の桜木です。水越先生をお願いします。」

『うにゃ?秀君?ちょっと待ってね〜』

電話を保留にせずに呼んだらしい。受話器から『まこち〜ん!桜木君から電話だよー』というさくらさんの声が聞こえてきた。

『もしもし、桜木?あんた、どうしたの?』

数秒をいて水越先生が出る。

「玲夢が風邪引いたみたいで、今日学校休みます。看病するんで、ついでに俺も。」

『朝倉が?あの子、馬鹿なのによく風邪引けたね。』

「全くですよね。それじゃあ、そういうことで。」

『気をつけなよ。じゃあ、お大事に。』

そのまま電話を切って、ふぅ、とため息をつく。

「わがまま姫につき合わされる俺の身になってくれ。」


「・・・海老グラタン食いたいとは・・・随分な患者だな、おい。」

呻きながら昼間の商店街を歩く。

「そもそも、真昼間っからグラタンを食いたがる根性が分からん・・・。ん?」

ぶつぶつつぶやきながら歩いていると、前方に見慣れた学生服を見つける。

「あれ・・・工藤か?」

工藤とおぼしき生徒は、重そうにギターケースを肩に背負って辺りを見回していた。

どうやら、何かを探しているらしい。

学校にも行けず、暇だった俺は声をかけてみた。

「おーい、工藤〜。」

「ん・・・?ああ、桜木。玲夢さん、もういいのか?」

やはり工藤で、地図のようなものを持っていた。

「昼食に海老グラタン要求して来るんだから平気だろ。で、何してんだ?」

「ベースの弦を張り替えなくちゃいけないんだが、今まで頼んでた店が無くなっちゃって。ほかに楽器屋ってあったか?」

困ったように地図を持っていたのはそのためか。

「ん・・・。俺が知ってるのは白河音楽店くらいかな。」

「白河?んー、まぁいいや。案内してくれないか?」

工藤が手を合わせて懇願してくる。

(さて、どうしようか・・・。家で玲夢も待ってるだろうし・・・)

俺は手を組んで考え込んでしまう。

一応、玲夢にお粥は渡してあるため、昼食は心配ない。

「帰りに、なんか奢ってやるからさ。」

工藤がにっこり笑いながらそうつぶやく。

その瞬間、俺の心は決まった。


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あきゅろす。
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