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D.C.half
三月二日(火曜日)
三月二日(火)

「ふぅ・・・。っと、こんなもんだな。」
早起きして作った朝食は、目玉焼き、味噌汁などここ最近ファーストフードで昼食を片付けていた秀越たちにとってありがたいものだった。
「よし、玲夢を起こしますか!」
エプロンを取りながら、二階へと上がる。
「おーい、玲夢。起きてるかー。」
いつものようにノックしてから部屋に入る。
「えっ!?」
「・・・へ?」
いつものように玲夢の寝息で迎えられると思っていると、目に飛び込んできたのは白い肌だった。
「おはよう、兄さん。」
「・・・おはよう。玲夢、今日は早いんだな。」
まさに慣れ。典型的な反応でないあたりが家族(血繋がってないけど)らしい。
「うん、たまには早起きしてみたくて頑張ったんだ。」
「そうか、いつもそうだと助かるんだがな。」
「ねぇ、兄さん。どうして壁ばっかり見てるの?」
訂正。家族らしい会話が成り立ってるのは俺が壁を見ているからだ。
「直視してほしいのか?」
「うん。話をするときはちゃんと相手の顔を見ないと。」
にこやかな声で素晴らしい提案をしてくる。
「・・・そういわれて、直視して、帰ってこなかった戦士たちが何人も居るんだ。」
「いや、本当に見ても良いから。ね?ほら、女の子の着替えなんてめったに見れないよー?」
そんな明るい声で言うことかっ!うう、すっごい振り向きたい・・・。
「そうか、じゃあさっさと着替えて朝食食え。せっかくあったかいの作ったのに冷えちまう。」
「はぁーい。」
それだけ言って全力で部屋から脱出し、風呂場へ向かう。
真っ赤になっているであろう顔を洗面所でジャブジャブと洗った。
「はぁ・・・。危ねぇ〜、理性があと少しで飛んじまうところだった・・・。」
本当の妹なら、感情にリミッターもかけられるだろうが、玲夢は血の繋がりがない。そのことを少しでも気にしてしまうと即刻アウトだ。
「そういう変な考えしてると、今日のテスト結果悪そうだなぁ・・・。」
なんだか、とても疲れてため息をついた。

「おーす、桜木。」
教室に着くと親友の工藤が話しかけてきた。
「よぉ、工藤。今日の国語はいけそうか?」
「まぁ、ね。あ、おはよう玲夢さ・・・」
俺に続けて入ってきた玲夢に挨拶しようとして、工藤が硬直する。
「・・・おはようございます・・・。」
そりゃそうだろう、目はうつろ、ぐったりとした表情。「今まさに死にそうです」って顔してるんだからなぁ。
玲夢はあの後寝てしまったらしく、俺との遭遇は覚えていないらしい。
それはそれでよかったけどさ。
「な、なんかいろんな意味ですごいな。」
「あんまし、触れてやるなよ?」
ふらふらとした足取りで自分の席へ向かう玲夢を見送りながら、工藤と苦笑する。
「わかってるって。あ、そうだ。桜木はテストの勉強しないのか?」
「今から詰め込んでもなぁ・・・。」
「まぁ、自らの限界を知っている分、桜木は無駄なあがきをせんからな。」
「・・・余計なお世話だ。」
いつの間にか隣に立っていた杉並に拳を叩き込みながらつぶやく。
「ぐっ・・・。き、貴様は親しき仲にも礼儀ありという言葉を知らんのか?」
「お前が言うな、お前が。」
「はぁ・・・」
工藤が、つきあってらんないという顔でため息を吐いた。
「はい、席につけー!ホームルームはじめるぞー。」
水越先生が教室に入ってきて、全員が席に着く。
「今日も欠席なし・・・と。ってみんなぐったりしてるねー。まぁ、あたしもそうだったけどさ。」
水越先生が苦笑しながらクラスを見回す。
「ま、今日で最後だからきっちりやってきな。週番、号令!」
「起立、礼。」
工藤の号令でホームルームが終了する。
とたんに教室にざわめきが戻る。
友人にテスト勉強を聞いたり、お互いに問題を出し合ったりしているやつらも居る。
「工藤。テスト始まったら起こしてくれ。」
そう言って、机に伏せる。
「・・・マイペースなやつ。」
工藤の声を聞きながら、俺は眠りに落ちていった・・・。

「・・・ん?」
昼食を取りながらなんとなく後ろを向くと利奈が立っていた。
どうやら、どこに座るか迷っているらしい。
「利奈先輩、ここどうぞ。」
「あ、秀君。ありがとう。座るとこなくて困ってたんだぁ。」
そう言って俺の隣の席に座ってくると、自分の昼食を食べ始める。
「カツ丼とコーヒーですか。」
利奈が食べているのは、かなりボリュームのあるカツ丼で男子でも野球部くらいしか食べない代物だ。
なんとなく、「学園のアイドル」である利奈には似合わない気がした。
「一度食べてみたかったんだ〜。衣がさくさくしてておいしいの。食べる?」
「や、さすがにそれは・・・。」
他人の食べ物をもらうのはさすがに気が引ける。ましてや間接キスだし。
(んなことしたら、確実に明日の朝日は浴びれないな。)
FC連中から八つ裂きにされた挙句、『自主規制』となるのは目に見えている。
「そっか。今度頼んでみると良いよ。」
「まぁ、金に余裕のあるときで。」
そういいながら、自分の焼きそばをたいらげる。学食の焼きそばは給食の焼きそばに近くて好きなんだよなぁ。
「焼きそばに・・・抹茶ラテ?」
利奈が俺の昼食を覗き込みながら聞いてくる。
「?なんか、変ですか?」
「いや、抹茶ラテって・・・合うの?」
「合いませんよ。食べ終えてから飲みます。」
以前、玲夢からも同じ質問をされたが同時進行で飲む代物ではない。
むしろ、デザート的な代物・・・。
「デザート?もっと固形のものがいいんじゃないの?抹茶大福とか。」
・・・こんどから、抹茶大福だそう・・・。
「まぁ、今日はこれで。」
そういって俺は、抹茶ラテをすすった。

「じゃあ、始めて。」
本日のラスト、現代文のテストの開始が伝えられる。
えーっと、最初の問題は・・・
漢字の読みを答えなさい。
1.水夏
2.境内
3.爆撃
4.楔
5.蒲公英
6.五月蝿い
7.散香
etc・・・

・・・。
なんだこれ。
途中にめちゃくちゃ難しいの無かったか?
(いまどき、蒲公英なんて漢字で書かないだろう・・・)
さすが、水越先生。生徒の苦手なところを選んで出してきてくださる。
・・・でも、水夏ってなんだろう・・・。


「ふぅ・・・。やっと終わったか・・・。」
グデーっと机に抱きつく。テストはいくら自信あるといえど疲れるし、緊張する。
「あ、兄さん。帰りにどこかで遊んでいかない?」
俺の机のそばに来た玲夢がにこやかに告げる。そのそばには杉並、工藤も居る。
「ふむ、4人で?」
「ううん、真弓も来るよ。」
ってことは5人か・・・。
「多すぎないか?カラオケだとそんな歌えないし、ゲーセンに行くにも人数微妙だろ?」
「確かにな。せめて後三人ほど居ればよいのだが・・・。」
杉並が軽くあたりを見回しながらつぶやく。それを見て工藤が苦笑する。
「お前と一緒にどこかへ行こうとするのは俺らくらいだよ。」
「同感だ。俺らだってすすんでお前は誘わないぞ、杉並。」
「なにぃ!!貴様ら、友人を何だと思っている!」
杉並の反論に俺たちは軽く考えてからそれぞれ応えた。
「諸悪の根源。」
と、玲夢。
「はた迷惑なトラブルメイカー。」
と、工藤。
「超弩級の犯罪者。」
は俺が応えた。
「・・・ぐっ・・・当たってるだけに言い返せん。」
当たってるのかよ・・・。
「って、真弓は?遅くないか?」
「そうだね。ここにくるように言ったんだけど・・・」
玲夢が不思議そうに出入り口を見やる。と、そこへ来たのは真弓と金髪頭のちびだった。
「はぁ、はぁ、遅くなりましたー!」
「やっほ〜。みんなで集まって悪巧み?ボクも混ぜてー!」
「そこは先生なんだから止めてくださいよ・・・」
工藤のつっこみも無視してるし。先生が生徒と遊んで良いのか?
「ってことは6人か。なんか、金かかるなぁ・・・」
カラオケに行くにせよ、どっかに食いに行くにせよ、この大所帯では金額がすごいことになりそうだ。
「じゃあ、僕んちに来る?お茶とお菓子には困らないよ?」
・・・と、まぁこんな具合で現在に至るわけだが・・・
「秀君、和菓子ちょーだい。」
「・・・はい。」
そういってまた手からきんつばを出す。これでおそらく一食分のカロリーは出し尽くしたはずだ。
芳乃邸に来た俺たちはさくらさんの昔話を聞きながら和菓子(俺が出した)を食べていた。
「でね?音夢ちゃんったら、怒ってお兄ちゃんに辞書投げつけたんだよー?」
「うわ・・・。お母さん、変わらないんですねー。」
「お母さんが言ってた音夢さんのイメージとかけ離れてるんですけど・・・。」
真弓と玲夢は昔話に夢中だし、杉並と工藤は将棋を指してる。
「ふふふ・・・。工藤よ、本当にそこでいいのか?」
「ぐ、ぐぐぐ・・・・」
しかも、工藤負けそうだし。
「・・・あれ?何しに来たんだっけ。」
カロリー補給のために羊羹を食べながら不意に考える。
なんか、テストの打ち上げをしに来たような・・・。
「ま、いっか。」
そういって俺は畳の上に寝転ぶ。
なんだかんだ言って今の落ち着いている現状を壊す気はない。
なんとなく、本当になんとなくだけど。
明日からの生活が、今までとは違う気がした。



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