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D.C.half
三月一日(月)
三月一日(月)

「ふぁ・・・。」
「ったく、夜遅くまで起きてるからだろ?」
苦笑しながら玲夢を叱る。
玲夢は昨日の夜、「どうしても深夜番組が見たい!」といいはり、夜遅くまで起きていたのだ。
その付けが回ってきた結果、眠り足りなさそうに目をトロンとさせている。
「だって・・・見たかったんだもん。ドッキリカメラ。」
「録画しろよ、そんなもん。テスト中に寝ても知らんぞ?」
「書くとこ書いてから寝る・・・。」
眠そうに目をこすりながら、玲夢が応える。
「おはようございます、先輩。」
「よぉ、真弓。テスト、大丈夫そうか?」
「赤点はしのぎます。・・・たぶん。」
自信がない、と視線が訴えていた。
まったく、こいつらは・・・
「よぉ、桜木。」
「おっす、工藤。って、お前も眠そうだなぁ。」
工藤の目の下には隈が出来ている。昨日は寝てないらしい。
「数学の公式だけでも暗記したくてな。徹夜したんだ。」
「やめとけって。一夜漬けは覚えないし、体によくないぞ?」
「そうなんだけどさ。ま、気休めだな。」
工藤は頭をかきながら苦笑する。
「まぁ、玲夢よりはましだよな。」
「どういう意味ですか?兄さん?」
「・・・真弓。水越先生はどんなテスト作りそうだ?」
にらみつけてくる玲夢の視線を感じ、会話を180度回転させる。
「お母さんですか?・・・漢字をいっぱい出すみたいでしたよ?」
「ちょっと、兄さん。話をそらさないで下さい!」
「うるせっ!俺は今から英単語を暗記するっ!」
テスト前にもかかわらず元気すぎる俺たちに工藤が苦笑しながら付いてくる。
やれやれ・・・今日も、いい一日になりそうだな。

「それじゃあ、はじめて。」
テスト用紙をめくる音とシャーペンを握る音が耳を打つ。
(さてと・・・)
初めのテストは数学だ。数学は公式さえ覚えれば後はあてはめるだけ。
面倒な文章題は出来るだけ飛ばして、計算だけのものを先にやっていく。
計算がおわったら、文章題へ移る。このとき、単位や訊き方を注意して見ることが重要だ。
正解していても、答え方が違って不正解・・・なんてのはごめんだ。
(・・・そういや、玲夢はどうしてるかな?)
不意に思ってちらり、と玲夢のほうに目をやる。
玲夢はすでにあきらめた様子で机に突っ伏していた。
(おいおい・・・)

「ふぅ、ようやく昼休みか・・・」
なんとなく、玲夢のほうに目をやるとぐったりとしている。
「おいおい、大丈夫か?玲夢」
俺の声に反応して玲夢が潤んだ瞳をこちらに向けてくる。
「に、兄さん・・・。お腹すいた・・・。財布、忘れた・・・。」
「・・・奢れと?」
「ああ、ひどい。こんなにかわいい妹を見捨てるのですね・・・。」
玲夢がよよよ、と泣き崩れる。
・・・ああ、周囲の目が痛い。
普段からクラスでは猫を被っている玲夢だ。こういう時は助けないとクラスメイトからにらまれる。
「・・・自分でかわいいとか言うな。ほれ、行くぞ。」
「わーい、ありがと!兄さん♪」
泣き崩れていた姿が一転、笑顔になる。相変わらず現金なやつだ。

「それはそうと、テストはどうだった?俺が教えた甲斐はあったのか?」
食堂に向かいながら、なんとなく玲夢に聞く。
「あ、アハハハ・・・。」
「素直でよろしい。」
出来なかったんだな。とりあえず赤点を取ってなきゃいいが。
「おーい、桜木!朝倉さん!」
「おう、工藤。テストどうだった?」
後ろから満面の笑みで走ってきた工藤に聞いてみる。聞くまでもなさそうだが。
「もー、完璧!今回は桜木にも負けないよ!」
「ほぉ・・・上等だ。今回は俺も完璧なんだ。相手してやるぜ。」
「・・・世の中って不公平・・・。」
ふざけあう工藤と俺を尻目に、玲夢がボソッとつぶやいた。

「ふぅ・・・前半戦終了っと。」
テストが終わった放課後、俺はなんとなく神社に向かっていた。
「神頼み・・・って柄じゃないか。」
『出来損ない』とはいえど、魔法使いが神に祈ってもなぁ。
いつ来ても多い石段を登りながらそんなことを考えていると、見知った顔が降りてきた。
「やっほ、秀君。」
「あ、利奈か。どうしたの?」
てへへ、と頭をかきながら、利奈が笑う。
「困ったときの神頼みです。秀君は?」
「困ってないけど神頼みだ。」
実際、神様がいるなら玲夢の成績を助けてほしいもんだ。
「?なんだか、よくわからないけど拝みに来たの?」
「や、実際暇つぶし。」
利奈がぱぁっと顔を明るくして俺に笑いかける。
「じゃあさ、一緒にクレープ食べに行こ?無料券があるんだ♪」
「え、マジで?いいの?」
「もちろん!秀君になら使っても惜しくはないよ♪」
「やった!サンキュー利奈!」
俺が例を言うと利奈は恥ずかしそうに笑っていた。

「はぁ・・・うまかったぁ。」
「うん!おいしかったねぇ。」
桜公園のベンチに座って、利奈と俺はくつろいでいた。
「そういや、利奈はテストどうだった?」
「んー、よくもなく、わるくもなくかな。秀君は?」
「いいほうだと思うよ。とくに今回は公式をしっかり覚えてたし。」
「ふ〜ん。」
頬についていたクリームを指で取りながら利奈が相づちを打つ。
しばらく、静かな時間が流れていた。
(・・・。)
なんとなく、利奈を意識してしまう。
利奈と始めてあったころはまだまだガキで、仲がよかったこともあり異性としては見なかった。
しかし、今の利奈は立派な女性だ。スタイルもよく、学園のアイドルとされているのにもうなずける。
そんなことを考えていると、利奈が顔を覗き込んできた。
「?どうかした?秀君。」
「へ?あ、いや、べつに?」
至近距離で顔を見つめられて驚いてしまう。
「?変な秀君。」
利奈が怪訝そうな顔で首をかしげる。
「あ、わるい。もう戻らなきゃ。」
「そっか、残念だなぁ。それじゃあまた明日、学校でね。」
「おう。」
そういって利奈と別れる。
「・・・ふぅ・・・。」
柄にもなく緊張してしまった。
(利奈のやつ、いつの間にあんなに女の子らしくなったんだ?)
気が付くと、なんだか顔がにやけていた。

「うにゃ!これで・・・?」
パチッ
「・・・。」
パチッ
「うにゅ・・・」
パチッ
「・・・王手。」
「うにゃ!」
パチッ
「うにゅぅぅぅ・・・・。負けた・・・。」
帰宅後、なぜか家に来ていたさくら(先生)と将棋を打つ。
玲夢の勉強を見に来たはずだが、今はこっちのほうに真剣だ。
「ボク、こういうゲームは得意なんだけど、秀君が強すぎるんだよー。」
「将棋なら、杉並にも負けませんからね。」
杉並は「企みと策略の差だろう。」とか言ってたけど。
「兄さん。勉強は?」
「明日の教科は国語だぞ?勉強しなくても取れる。」
「余裕だね・・・秀君。」
「玲夢よりは余裕ですから。」
そういいながらささっと将棋盤を片付ける。
「じゃあ、夕飯作るな。なにがいい?」
「・・・お茶漬け。」
「夜中に腹減るから却下。」
「うにゃ、じゃあチャーハンは?」
「ん、それなら。」
フライパンに油を落として温める。
「って、いつの間にか料理が好きになってるなぁ。」
玲夢のやつ、俺が居なくなっても生きてけるのか?
純粋に心配になってしまった。


「はぁ・・・。」
風呂から上がり、ベットに倒れこむ。
「ああ、めちゃくちゃ眠い・・・。」
目覚ましをいつもの時間にかけて、睡魔に身をゆだねる。
ひさびさに、ぐっすり眠れそうな気がした。


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