日向の花唄
久しぶり。
『神木君やっときたわね!』
「あ、みっけ」
『神木、後ろの女の、こっ』
神木の後ろにいた小さい女の子が牧にだきついた。
「ちーくん!久しぶり!」
しかも、満面の笑顔で…
その背中に手をまわす牧に皆が羨ましがった。
『『『(か、可愛い!!!)』』』
『遊!?どうしてこんな危ないとこに一人できたんだよ!』
「私何も悪いことしてないよ?
ちーくんにおばさんに頼まれたものを
届けにきたんだよ」
ちーくん、大きくなったなあ。
『届けもの?でも、ここは男子校だから
女の子一人できたら危ないだろ?て言うかよく食堂ってわかったな』
「うーん、とねえ、すごく大きな男の人が教えてくれて、食堂の入り口でこの方とぶつかって、そのままつれてきてもらった」
『牧、お前、彼女と会えて嬉しいのはわかるが、ここ食堂だから、さ』
あ、そういえば…
「ごめんなさい」
恥ずかしすぎて牧の背中に隠れる姿は
なんとも愛らしい。
『あ、遊、俺の従妹ね』
『『従妹!??』』
「初めてまして、花札遊です。
鳳凰高校でちーく、チカと同じ年です。」
『ははっ、従妹だったのか!俺は神木累』
「あ、っと神木くん、さっきは本当にありがとうございました」
丁寧にペコリと頭を下げた。
『(ずいぶん礼儀正しいコだなあ)』
『あら、鳳凰高校ってM女、栖鳳を上回る進学校じゃないの!?』
鳳凰高校は有名進学女子高校。女なら誰でも憧れるところだ。
「女…のこ?」
『あたしは花井衛、一応男よ』
「花ちゃん、よろしくね」
にひっと笑って手を差し出した。
『はあ、遊、母さんからの預かりものは?』
忘れてた…
「食堂の入り口近くに置いてきちゃったから食堂出るときに持ってくね」
『遊は何食べる?』
「みんなのおすすめは?」
『………』
忘れてはいけない。ここのご飯は美味しいとはいえない。
たまーにくる他校の女はプリンをあたえても不味いといって残すのだ。
ここの男はそういう栖鳳をバカにする態度の女を嫌う。
『俺は日替わり定食がおすすめだな』
「じゃあ、それにします!」
神木の正面に遊を座らせサイドに牧と花井。
牧が考えた最善の選択だった。
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