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戦線☆Brother
高橋亜仁の場合A

家に帰るとすでにドアの鍵が空いていて、おとうとが先に帰ってきていたことがすぐわかった。

おれはさっさと自分の部屋に行こうとしたが、ふとキミの言ってた事を思い出した。


『せめて挨拶とかお礼とかはちゃんと言ってあげなよ?』


一瞬めんどうだと思ったけど、仕方なく『ただいま』だけ言いに行こうとおとうとの部屋の扉を開けた。
けどそこにはおとうとはいなくて、もしかしてリビングかとも思ったけど、そこにもいない。
ふと台所から光がもれているのを見て、そっちに向かって歩き、台所の扉を開けた。


「おとうと?・・・」

「ダメー!!」


開いた瞬間押し返されて、勢いよく扉が閉まる。
いきなりすぎて何が起こったのか分からない。


「ちょっ・・・なんなんだよ!?」

「アニィは入っちゃダメなのー!!」


正気に戻って怒鳴りつければ、珍しくおとうとも怒鳴り返してきた。
おれはそれがあまりにも意外過ぎて驚き、言葉が出なくなった。


「絶対入っちゃダメ!!あっち行って!!」


更におとうとに怒鳴られればそこにいることはできなくなり、ふらふらと自分の部屋に戻っていった。


なんていうか、ショックだ・・・


あいつは絶対におれに逆らわない、おれが怒ればすぐ謝る。そう思ってたのに・・・

今日のおとうとはいつもと全然違くって、もしかしたら、手遅れだったのかもしれないと思った。
そしたら、急激に不安と悲しみが込み上げてきた。
どうしてだろう?
今までは平気だったのに・・・
人は失って初めてその大切さに気付く、って、なんかのドラマで言ってたっけ・・・?

まったくもってその通り。
今頃おとうとの大切さに気付いた・・・


「ごめん・・・おとうと・・・」


小さく呟くけど、もうどうしようもない。
思わず涙まで出てきそうになったその時・・・


ガチャ・・・


「アニィ?」


部屋の扉の隙間からおとうとがひょっこり首を出し、おれを見つけるとゆっくりと近付いてきた。


「な、何?」


おれはいきなりおとうとが来た事に驚きながらも嬉しく思った。もっとも、それに負けないくらい不安も一杯だったけど・・・


「あのね、さっきは怒鳴ってごめんなさい。ぼく、アニィと仲直りしたかったの。だからね・・・」


言葉をいったん区切ると、後ろに隠していたものをズイッと前に出し、にっこりと笑った。
そこにあったのは、形はいびつだけど、すごくいい匂いのクッキーだった。


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あきゅろす。
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