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一喜一憂
2
「みうらぁー、いるー?」


廊下から久米さんが俺を呼ぶ声が聞こえる。同じ生徒会書記の、あまり仕事をしない顔メンバー。
金髪でピアスを開けていて不良っぽく見えるけど、もともとの顔は整っている。触りたい。


「おーいみうらーあ。 みーうーらぁー」


足音が近づいてくる。そして俺のいる教室の扉が大きな音を立てて開けられた。
不意な衝撃に驚いてしまった。


「なんだよ、いるんじゃん。みうら」

「…っなんですか、久米さん」

「あ、今おどろいたべ。みうら」

「、みうらみうらうるさいんですけど」

「いいじゃん、みうら。みうらまさき。まさこ。みーちゃん。…みーちゃん!」

「…何の用なんですか」

「あー別に?用なんかねぇよみーちゃん」

「じゃあ仕事してください」


やだよ、と言って久米さんはいすにすわってゲームをはじめてしまう。
働けくそ、ムカつく。3年だからっていい気になるなバカ。
といっても、まったくこない会長サマとかその辺の類よりは、全然マシ。


俺がイライラするのは、新入生の名簿とか普通先生方が作るはずのものも俺が作ってるせい。

なぜか、それは職員室に伺ったときに俺が恋している校長先生に冗談で「やってくれないかなぁ〜」といわれたからだ。
教頭先生は「校長先生なにいってるんですか」と冷たい視線をむけていたけれど、校長先生に話しかけられてうれしかった俺は「やらせていただきます」と答えていた。


校長先生のためと思えばつらくない。


そう思って早め(3時)に起きて現在7時。テストで上位に入っていれば授業免除の特典もあるのだけれど、俺は先生方を見るためにいつも授業に出てる。


「みーちゃん、何時からやってんのそれ」

「3時半くらい、」

「うっわお前いつ寝てん?ばかじゃね、休めよ!」

「…いやいいです。今朝中に終わらせれば提出できるんで」


実際はもうヘトヘトで眠りたかった。昨日も夜遅くまで仕事をしていたから体力がギリギリだ。
授業はたぶん出られると思うけど、今日はもう限界な気もする。


…やば、頭痛い。でもあと少しだ、それだけやって少し休もう。


「みーちゃん珈琲と紅茶とココアどれがいい?ココア?おっけーココア」


ココアをいれてもらえるらしい。


「ありがとうございます」


カタカタ、とキーボードをたたく音が響く。
入力が終わり、書類の制作がすべて終わった。


「終わったー……あーー」


メガネをうえにあげ、目を揉む。

つかれた。

メガネをおろして何度か瞬きをすると、まつげがメガネにあたったので位置をずらす。


「おっつかれ〜」

「あ、ありがとうございます、」


俺のイニシャルのはいったマグカップを久米さんにてわたされ、いれてもらったココアを一口飲むと、どろどろの激甘でびっくりした。


「久米さん、これ、なんですか」

「えー?何って、ココーア」

「…いや、なんかこれどろどろしてるんですけど」

「だから?普通においしくない?それ」


頭おかしいこのひと。粉をお湯で溶かすタイプのはずなのにチョコソースみたいになってるぜ。

くちのまわりについたココア(仮)をなめてると、久米さんから爆弾発言が飛んできた。


「ねぇ、ちゅーしてもいい?」


「は」

「だめー?」


久米さんがあまりにも軽々しくいうものだから、冗談だと思った。


「いいですよ」


冗談交じりに言った。
久米さんが何を思ってるのかわからなかったし。




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