3(完)
「渚。顔上げて?」
頭を振って拒否をする。
貴仁さんの顔を見たら縋っちゃう…。
捨てないでって…。
「じゃぁ、そのままで良いから聞いて」
「最近一緒に帰れなかったのはバイトしてたから」
バイト…?
「あの人は俺の親戚で、バイト先のオーナー。分かった?」
それって?
「だから、あの人とは何にもないし、俺の恋人は渚だけだから」
それとも、貴仁さんは優しいからはっきり言えないのかな?
「信じれない?」
「だって・・・」
「それともなぎは俺と別れたい?」
「そんなことないっ!!…けど」
「けど?」
「電話は…?」
恐る恐る聞いてみると貴仁さんはちょっと困ったような顔をして。
「…一哉と一緒に帰ってるの聞いて悔しくなった。ごめん。嫉妬した。」
本当に申し訳なさそうな顔で謝られて安心する。
嫌われてた訳じゃなかったんだ…。
でも、なんでバイト?
目で訴えると。
「はい」
??
掌に乗るほどの小さな箱を差し出された。
「開けてみて?」
受けとり、言われるままに開けてみるとシルバーの指輪が。
指輪と貴仁さんを交互に見る。
貴仁さんはすごく優しく笑って。
「お誕生日おめでとう」
「え…?」
「渚、今日誕生日でしょ?」
「あ…」
すっかり忘れてた…。
最近は貴仁さんに捨てられる事ばかり頭にあったから…。
「貴仁さん、コレの為にバイトを…?」
貴仁さんはニッコリ笑うだけ。
「オーナーに渚のこと話したら、どうしても渚の為にケーキを作るって聞かなくてさ…。」
だから、家に居たんだ。と、教えられて驚く。
「僕まだ貴仁さんの恋人でいいの…?」
「これからもずっと俺の恋人だよ」
「本当に?」
「本当に。なぎと別れるなんて考えられないし、考えたこともない。だから、なぎ。俺を信じて?」
僕の目をまっすぐ見つめてくる貴仁さんの目に嘘なんかなくて。
やっと、全てが僕の思い違いだと分かった。
「貴仁さんごめんなさい!」
嬉しさのあまり抱きつくと、しっかりとした力で抱き返された。
「僕、貴仁さんに嫌われたのかと思って…。」
「不安にさせてごめん。泣かせてごめんな?」
頭を振って、更にぎゅぅぅと抱き付く。
「貴仁さん本当にありがとう。貴仁さん大好き。」
「俺も渚が大好きだよ。だから、別れるなんて言わないで」
久しぶりのキスをして、オーナーさんが作ったケーキを食べて…。
甘い時間を過ごす。
お互いの薬指に光る指輪にまた涙が溢れそうになった。
END
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