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おひる日和
誰もいない廊下を立芳の歩幅に合わせてゆっくり歩く竜司は、頭一つ分下にある立芳の頭をそぅっと撫でた。

「ハル、痛いか?」

特に目立った傷は出来ていないけれど、それでも可愛い恋人が心配でたまらない竜司はその声に心配を混ぜて問いかけた。

立芳はパチクリ目を瞬いてから首を横に小さく振って、痛くはないけれど竜司の大きな手で撫でて貰えるのが嬉しくて、へんにょり笑って竜司に寄り添った。

恋人の甘えたな仕草に竜司は腰を屈めて、撫でていた手で立芳の頭を固定すると小さな唇を自分のそれで覆った。

ひくりと震えた体はそれでも嫌がることはなく、竜司の舌を口腔に招き入れた。

「んっ…」

小さな舌がぎこちなくも竜司に応えようと必死に蠢き、それと同時に立芳の両腕が縋るように首に回されると竜司はより一層深い口付けを立芳に仕掛けた。

うっすら目を開けて立芳を見れば、きゅぅと瞑った目尻に涙の雫が溜まっていて、頬はうっすらピンク色に染まっていた。

竜司はこれ以上続けると止まらなくなる自分を自覚して、立芳の唇を舐めてから目尻の雫をも舐めると体を離した。

「ふ、ぁ……」

「ハル、そんな可愛いことすんな。先に立芳を喰べたくなるだろ?」

前髪をさらりと横に流しながら竜司がそう言えば立芳はやっぱり一瞬きょとんとしてから一気に顔を真っ赤に染め上げた。

「はは、嘘だよ。飯食いに行くぞ」

相変わらず初々しい立芳の反応に竜司は笑って、立芳の手を取り指を絡めると食堂に向かうため足を進めた。

今日は何を食べようか、なんてゆったりと話していたら慌てた足音が響き、次いで黒色の髪の毛に眼鏡をかけた男子学生が2人の前に飛び出してきた。

「竜司さ、ん!あ、立芳くん見付かって良かったです」

彼の名は猪俣陣。左腕に風紀と書かれた腕章をつけ、スッと背筋を伸ばした姿は正に優等生といった雰囲気だ。

「陣、遅かったな。颯斗が今オモチャで遊んでるぞ」

「本当ですか?だったら俺も行ってきます。お2人はこれから昼食ですか?ゆっくり召し上がって来て下さい」

「あぁ。ハル、行くぞ」

歩き始めた2人にぺこと頭を下げた猪俣は、迷うことなく2人が出てきた教室に向かった。

暫くして背後からギャァァと言う叫び声が聞こえた気がして立芳は足を止めて後ろを振り向いた。

「ハル、どうした?」

竜司も立芳に合わせて歩みを止めて立芳を覗き込んだ。

「…叫び声、聞こえた」

「あぁ、どっかで誰かが遊んでんだろ。それより早く行かないとご飯食う時間がなくなるぞ」

こてりと不思議そうに首を傾げる立芳を見て、あぁやっぱり可愛い、どこかに連れ込んでさっきの続きをしてしまいと思ったがお腹が空いたという恋人に無体なことなど出来なくて、竜司は食堂へ行くように促すだけだった。



立芳や竜司が通う私立篠宮学院は、幼等部から大学部まで一貫してある総合学校で良家の息子息女が多くいることから金持ち学校として有名だ。

他にも芸能活動をしている者、スポーツや勉学の特待生として学院に通う者もおり、その名は全国に轟いている。

高等部は小高い丘の上に建築され、四方をぐるりと城壁のような壁が囲い外部からの浸入を拒んでいる。

中には学舎として東棟、西棟、中央棟と、そして遠方から来た学生のために寮棟が建っている。

その他に体育館や大ホール、小ホール、弓道場からサッカー場など様々な施設が建築されているのだ。

学院には3つの食堂があり、うち2つはどこの学校にもあるような学食でセルフサービス制なのだが、残る1つの学食は完全個室でウェイターが給仕をしてくれるのだ。

竜司が主にここを使うのは可愛い恋人を誰にも見せたくないという独占欲だったりするのだが、立芳には人目が煩わしいからだと説明しているのだった。

立芳と自分の料理を注文してウェイターがいなくなり2人だけになると竜司は立芳を抱き寄せた。

すっぽり両腕に収まる立芳の頭に頬ずりをすると立芳が胸にすり寄ってくるのが分かった。

ふんわり薫ってくるのは竜司と同じシャンプーの香り。

つい先日じっくり立芳を愛したはずなのにまだまだ足りなくて。

いつだって立芳の愛らしさに竜司は煽られるのだ。

「ハル、午後の授業サボれよ」

唇を立芳の耳に当てたまま囁いて、そのままカプリと噛めば、腕の中の身体がひくんと跳ねた。

なぁ、立芳…、と甘えた声で強請る竜司は、彼を知る人が見れば驚愕するに違いない程に普段とはかけ離れた姿だ。

そんな竜司に頬をピンク色に染めた立芳はそれでも首を横に振って小さくダメ、と囁いた。

「5限は数学だからダメ」

真面目な恋人はほんの少しだけ数学が苦手で、苦手な教科を自ら進んでサボることなどしないのだ。

立芳の時間割を思い出した竜司は舌打ちをしたくなった。

無理やり立芳の身体を開くのは簡単だけれど、竜司が望んでいるのは欲望を吐き出すためだけの行為ではなく互いに求め愛し合うソレだから、渋々諦めることにして。

変わりとばかりに立芳の首筋に唇を走らせて、カッターシャツのボタンを外すと鎖骨の上に赤い花を咲かせた。

「ん…っ!」

ビクッと震えた立芳を名残惜しいながら開放して、自分で乱した立芳の制服を綺麗に整えたのとほぼ同時に料理が運び込まれた。

食欲をそそる匂いに立芳はホンニャリへんにゃり、こっちまで幸せになるぐらい嬉しそうに笑って両手を合わせてから食べ始めた。

「ハル、ケーキ食うだろ?ケーキセットをミルクティーで」

退室しようとするウェイターに追加の注文をする竜司に、立芳はその内容にパァァと表情を明るくしたが一拍おいて、頬を赤らめた。

甘い物が好きな立芳に竜司が自ら進んでケーキやらをあげるのは、事を致したあとが多くて。

負担がかかる立芳に対して甘いものをプレゼントするのは竜司なりの気遣いなのだが、いつの間にか2人の間では甘いものイコール、エッチのお誘いという図式が出来上がっているのだ。

「ハル、いらないのか?」

今日の夜にどうだ、と誘う竜司の意図に気付いた立芳は耳まで真っ赤にして小さく、いる、と答えた。

立芳の返答に笑みを深くした竜司は立芳のためにケーキセットを、自分のためにコーヒーを頼んだ。

ふと視線を立芳に向けると頬を染めた立芳と目があい、竜司は誘われるように顔を近づけると立芳がそっと瞼を閉じるのが見えた。

けれど竜司は唇を通り過ぎ、立芳の小さく形の良い耳に口付けて。

それと一緒に耳に吹き込まれた低音に立芳は更に顔を真っ赤にして、体を小さくした。

そんな立芳の反応に竜二は愛おしげに微笑んで、次こそは立芳の唇を奪った。



(立芳の、エッチ)


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もっとこう、ほんにゃりへんにゃり甘ぁぁくしたかったのだけれど撃沈…orz
取りあえずこれをニャンニャン記念日小説にしておくぜ!

平成22年2月22日


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あきゅろす。
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