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「え…?しのちゃん、ですか?」
太陽の口から村松の名前が出てくるだけでこんなに腹が立つ。
「頼むから。もういいだろう?」
拘束していた太陽の手を開放してベッドから降りようとすれば、制服を握り締められる。
「待って、朔先輩!オレ、朔先輩だけですっ!」
ぎゅっとこぶしを握る太陽の手にそっと手を重ねて、制服から離そうとするけど固く握ったままで離してくれない。
「太陽、離せ。」
「嫌です!朔先輩、帰っちゃうから、イヤで、す…!」
節が白くなるほど強く握り締めてくる太陽に分かった、いるから、と言うと太陽は恐る恐る手を離して、俺の手に指を絡めてきた。
泣いたせいなのか、太陽の指先が妙に熱い。
「昨日は、しのちゃんと会ったけど、それだけです。朔先輩のこと相談に乗ってもらっただけで、何もなかったです!」
少しだけ泣いちゃったけど…、と付け足した太陽に少しじゃねぇだろと思ったけど。
真っ赤に腫れた目元に疑いは未だに晴れていないけど、太陽が嘘をつくなんて考えられなくて、一気に気持ちが浮上した。
「今日は何で休んだ?」
低い声で唸るように聞くと太陽は気まずそうに答えた。
「目が、腫れてるから…。あと、しのちゃんが休めって。家にいたらいいことがあるからって言って…。」
………………
………………
………………
………………
………………
………………
………………
………………!
「朔先輩?」
やられたっ!
あいつ!くそっ!
騙された!
太陽の言葉に全ての合点がいった。
「あー…、うん。分かった。悪ぃ、俺の勘違いだった。」
そもそものきっかけは俺が三辻をそのままにしていたことだったり、携帯を没収された俺の間抜けさだったり、そのことを太陽に伝えなかった軽率な行動だっだり。
太陽を泣かせて、村松の言葉を信じた俺は結局また太陽を泣かせた。
村松の言葉が嘘だったことに嬉しさはあるけど、太陽にしたことにとんでもなく罪悪感が募る。
「ごめん、太陽。村松がお前と寝たって言われて信じた。お前がそんなことするわけねぇのにな…」
「オレは朔先輩だけだもん。」
「うん、俺もお前だけだから。」
太陽の目尻にたまった涙を舐め取って、デコをあわせる。
「ごめんな。泣かせてばっかだな…」
「オレ、朔先輩なら泣かされても大丈夫ですよ。」
すん、と鼻を啜りながら太陽は俺の首に手を回してきた。
「バカ、煽んな。」
細い腰を抱き寄せて、どちらからともなく唇を寄せ合う。
触れ合うだけのキスから、奪い合うような激しいキス。
何度も角度を変えて、舌を絡ませあう。
ぬるりとした熱く小さな舌が俺の口の中へ侵入してきて、ぎこちなく、でも必死に愛撫を繰り返す。
ぞくりと背中を走る甘い痺れに、押さえ込んでいたはずの獣が這い出してきた。
太陽らしい黄色のチェックのパジャマの裾から手を差し入れて、ほてった皮膚に手を這わす。
「あ…、ん、先パ、イ…!」
「ん?」
太陽が口を離して、はぅ…と吐息をつくと、天真爛漫な太陽がガラリとその雰囲気を変える。
頬をピンク色に染めて、そぅと仰ぎ見られて、思わず喉が鳴った。
「朔先輩、オレとしてくれるんですか…?」
この濃厚な空気の中、的外れな発言をする太陽は、らしいと言ったららしい。
「ん?嫌か?」
「嫌じゃないです!でも、その…」
言いよどむ太陽に、何だ、言ってみろ、と言うと太陽は目線をさ迷わせた。
「朔先輩は嫌じゃないですか…?」
「…はぁ?」
このタイミングでなんでそんなことを言うのか分からなくて、思わずデカい声が出た。
「だって!初めてシてから1回もしないから…。嫌なのかなって…。それに、朔先輩、初めてはめんどくさいって…。だから…」
さっき言っていたのはこれだったのかと納得して、俺は頭をガシガシ掻いた。
「あー、あのな。初めてした次の日、お前動けなかっただろ?」
「ぅ、え、はい…」
そのときのことを思い出したのか太陽はキョドキョドと目をさ迷わせた。
「夏休みにデカい大会に出るんだろ?だから練習の邪魔はしたくなかったんだよ。」
耳を食みながらそう言うと太陽はくすぐったいのか体を震わせた。
「オレが初めてで、下手だから嫌なのかと思ってました…」
「バーカ。んなわけねぇだろ。」
初めての奴に何回もした俺がお前とするのが嫌だなんて、そんなわけねぇだろ。これでも我慢してんだよ。
「したくてたまんねぇよ…」
「オレも、朔先輩としたいです…。」
オレの耳を食みながら囁く太陽の細腰を強く抱きしめて、首筋に噛み付いた。
「ん…っ!朔先パ…?」
「お前、少し黙ってろ。」
ベッドに押し倒して、唇を重ねる。これ以上、太陽に喋られるとむちゃくちゃにしてしまいそうだ。
ストレートすぎる誘い文句は、簡単に俺に火をつける。ただでさえ我慢していたのに、反動で太陽の体を食らいつくしてしまいそうだ。
ギシっとなるベットに、太陽らしい黄色のパジャマに、とろりと目を潤ませた太陽。全部が俺を煽り立てる。
いつもよりずっと長くて激しいキスに、くたりとなった太陽に喉を鳴らしながら、体の隅から隅まで味わうために、パジャマのボタンに手をかけた。
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