1
告白したのは僕からだった。
OKを貰えたときは時は本当に嬉しくて、まるで夢のようだった。
【疑惑】
付き合いだして5ヶ月。
最近貴仁さんは冷たい。
付き合いだした頃は一緒に帰ってくれてたのに…。
校門の方に目を向けると走って帰る貴仁さんの背中が見えた。
貴仁さんはなんで僕なんかと付き合ってるんだろ?
僕と付き合う前は女の人としか付き合ってなかったのは知ってる。
それも長続きなんてしたことないのだって知ってる。
僕と付き合ってるのは僕が母に似て女顔だから…?
それとも、妊娠する心配がないから?
体のいい性欲捌け口?
何の為にそんなに急いで帰るの?
誰かに会いに行く為?
そろそろ僕に飽きた?
嫌になった?
もうすぐお別れ?
あぁ…ダメだ。
頭のマイナスのことしか思いつかなくて。
グルグルと嫌な考えが廻って気分悪くなって来た。
「渚!!」
名前を呼ばれ、考えるのを無理に止めた。
正直…助かった。
「今日も貴仁さんと一緒に帰らないのか?」
振替えると、一哉が立っていた。
一哉は同じクラスで、よく一緒に行動するやつだ。
貴仁さんのことを色々教えてもらった。
一哉と貴仁さんは同じ中学出身だから。
僕と貴仁さんが付き合ってるのも知ってる。
「うん…。貴仁さん忙しいみたい。」
声が沈むのが自分でも分かる。
「そっか…。じゃ、俺と帰るか?」
慰めるように僕の頭を軽く叩いて、ドアの方に向かっていった。
一哉は優しい。
触れて欲しくないことには触れてこない。
一哉と授業の話やTVの話、当り障りのない話をしながら並んで歩く。
町中なだけあって人が多い。
え……?
一瞬。視界の中に入った光景にドクリ、と心臓が音を立てた。
道路の向こう側に貴仁さん。
横には綺麗な女の人。
その人が甘えるように貴仁さんの腕に手を回して、貴仁さんは嫌がる素振りもなく受け入れた。
嫌なのに。
見たくもないのに。
二人はすごくお似合い…。
僕なんか比べ物にならない。
その綺麗な女の人に会う為にあんなに早く帰ってた?
やっぱりもうお別れ?
僕は…いらない?
声も出せず、ただ貴仁さんたちを見つめる。
貴仁さんは僕に気付く事なく、人込みの中に消えて行った。
「…さ?」
足下がフラフラする。
口の中がカラカラに乾いて咽が張り付く…。
「なぎさ!」
「あ…?一哉…」
「どうした?帰るぞ?」
「あ…、うん。」
再び歩き始める。
けど、さっきの光景が目の奥に焼きついて消えない。
一哉と別れるまで、どんな話をしてたか記憶にない。
ただ、あの場面がグルグル頭の中を回ってる。
その日の夜。
貴仁さんから電話がかかって来た。
『最近一緒に帰れなくてごめんな?』
貴仁さんは優しいね。
でもその優しさは時には残酷なんです。
「いえ、貴仁さん忙しいみたいだし…。それに、一哉が一緒に帰ってくれるから大丈夫です。」
本当はあの女の人は誰って聞きたいのに…。
答えを聞くのが怖い…。
『そ……。明日も一緒に帰れないから。じゃぁね。』
プツ…。
「あ…」
一方的に電話を切られた。
僕とは話なんかもしたくない?
携帯を閉じて、ベッドに沈む。
鼻の奥がつんとして、涙がハラハラと落ちてくる。
それからも貴仁さんとは一緒に帰れなかった。
そしてたまに貴仁さんとあの女の人が一緒に歩いてるのを見た…。
僕から電話を掛けたかったけど、怖くて出来なかった。
いつ別れを言われるのか…。
怯えながら過ごす毎日。
→
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!