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帰ってこないメールと繋がらない電話はバイトのせいだと思っていた。
けれど翌日になっても返信も電話もなく、律儀な五月にしては珍しい事態に体調でも崩したのか不安になり、五月のマンションに向かった。
寒さで白くなる息に、血が通わず悴むような指先。インターフォンを何度ならしても応答はない。仕方がなく以前もらったスペアキーで部屋をあけた。
中に入ると元から綺麗だった部屋は何故か生活感が感じられないほどに整えられ、五月の気配が消えていた。不思議に思いながらも浩介はどうしても五月に会いたくて、この部屋の主が帰ってくるのを待つことにした。
けれど帰ってくる気配は一行になく、連絡もないまま一夜が過ぎ去っていた。もしかしたら五月の身に何かあったのかもしれない、と不安が浩介の頭をよぎった。思わず携帯を握り締めたがどこに連絡すればいいのか分からず、五月の実家の番号も知らず結局浩介はその場にうなだれただけだった。
軽く仮眠を取ると浩介は授業が始まるよりかなり早く学校に向かった。朝の冷たい空気が肌を刺し、体温を奪っていく。
寒さにその大きな体を小さくしながら、登校してくる人々に目を光らせた。もしかしたら五月がいるかもしれない、そんな期待を持ちながら。
20分程そうしていると五月ではないが、目当ての人物を見つけ流れに逆らってその人の前へ立った。
浩介が前に立ちはだかったことで行く手を遮られたその人は顔を上げ浩介の顔を見ると、途端に不機嫌を露わにし小さく舌打ちをしたかと思うと再び歩き出した。
「おい!待てよ!お前に聞きたいことがあるんだ!」
肩を掴み引き留めると無理やり自分の方へ振り向かせた。その人物は、進はやはり不機嫌な顔をし、低い声で
「なんだよ」
と言った。あまりの態度に腹が立ったが、それを押し止めると浩介は五月のことを聞いた。
「この前の土曜から連絡がないんだ。何か知ってることあるなら教えてくれないか?」
「さっちゃんのこと…?オレが知っているとしてもお前に話すと思うのか?」
侮蔑を含んだ声で進は言うと方の手を乱暴に振り払った。
「どういう事だよ…」
「さあな?兎に角。お前に話す事なんて何一つない。」
進はキツく浩介を睨み付けると再び歩き出した。朝特有の騒々しさの中、浩介は呆然と進の後ろ姿を見送った。
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