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案の定、太陽から一緒に帰りたいとメールが来た。オレはいつもの教室にいるとだけ返信した。
6時間目が終わって30分程で太陽は来た。
「朔先輩!お待たせしました!!」
走ってきたのか少し息を切らして、背中には大きなテニスバッグを背負っている。大きすぎて太陽が背負われているように見えておかしかった。
「朔先輩?帰らないんですか?」
「ん、あぁ。帰るか。お前どっか行きたいとこあるか?」
「オレは朔先輩と一緒にいれるだけで十分です!!」
満面の笑顔で言いやがって…。
「じゃあ、俺んち来るか?」
「良いんですかっ!!わぁーい!やったぁー!!」
飛び跳ねんばかりに喜ぶ太陽。何がそんなに嬉しいんだか…。
しばらく歩いてついたマンションの6階。今日は家族皆帰ってくる予定はない。
俺の部屋に案内すると太陽は目をキラキラさせて辺りを見回した。
「適当に座っとけ。なんか持ってくるから。」
「あ、ありがとうございます!!」
ちょうどあったオレンジジュースを持って部屋に戻ると太陽は無意識なのかわざとなのか。こいつのことだからきっと前者だろうけど。
ベッドに腰掛けていた。俺は少し離れた勉強机の椅子に座った。
「朔先輩の部屋おしゃれですね!朔先輩って感じです!!」
「そうか?普通だろ。」
無駄なモノは殆どないシンプルなだけの部屋だ。
「朔先輩の匂いがしてドキドキします!」
「あーそう…。」
こいつ。誘ってんのか?いやいや、んなアホな。
んなことよりキスマークのことだ。
「なぁ、太陽。お前あの時の…」
〜♪〜♪
「あっ!ごめんなさい!!オレのだ!!」
デカいテニスバッグから聞こえだした軽快なリズム。太陽はどこに携帯があるのか分からないらしく次々と中身を放り出した。
「あった!ちょっとごめんなさい!!もしもし?……」
太陽は慌てて部屋を出て話し出した。
なんつーか。間が悪ぃの。
ふと目にしたテニスバッグ。
「ん…?」
ぱっかり開いたそこから見えたモノを手に取った。
「んだよ、これ…」
「すみません!朔先パ、イ…」
「これ、何?」
俺が持っているモノを見て太陽はあからさまに動揺した。
「あの、それは……」
「なぁ、これ何?」
手の中には男同士が裸で抱き合ってる雑誌。
これはまぁ、許そう。なんとか許せる。太陽だって男だ。
許せないのはこっち。
性器を模した所謂バイブと卵形の小さなピンクローター。
太陽がこんなもん持ってるだなんて予想外だ。こんな純粋そうなのに。
「なぁ、これ何だよ?」
少し低い声で言うと太陽は怯えた顔でこっちを見てきた。
「何これって聞いてるんだけど?」
「そ、それは……」
「これ使ってんの?1人でするときとか?あ、もしかして他の男から貰ったとか?」
「違う!違います!!それ、それはしのちゃんが…」
「なに?ソイツと使ってんの?」
正直ショックだ。またしのちゃん。声はさらに低くなって、怒りがふつふつ沸き上がる。
「違います!!先輩聞いて下さい…!」
俺を見上げる太陽が少し涙目になっている。
「なんだよ、言ってみろよ。」
俺はこいつの涙に弱いみたいだ。息を吐いて自分を落ち着かせる。
「しのちゃんに、朔先輩と付き合うって言ったら…。これ読んで勉強しろって…。今日渡されて…。」
細い項が見える。あの時みたいだ。
「だから!本当に俺は朔先輩一筋なんです!!」
まっすぐ俺を見つめて言う太陽に嘘などなさそうだ。けど。
「……しのちゃんって、誰だよ?」
けど、肝心のソイツが誰だか分からなくてイライラする。
「しのちゃんは俺の幼なじみです。村松東雲(むらまつしののめ)って知りませんか?」
「……はぁぁ!?あの村松東雲!?」
思わずでかい声がでた。だってよ村松と言えば同じ学校の3年で抱いた男女は数知れず。
校内の男子、近隣の男女学生、教師に果ては人妻まで幅広く手を出す博愛主義者で一種の伝説の人間だ。
その村松が太陽の幼なじみ…?
「ちょっとまて。先週のキスマークも村松か?」
今日1番聞きたかったことに太陽はコクリと頷いた。
「何かおまじないだって言われて…。」
これは。絶対ハメめられた。いや、でも村松のお陰で太陽と付き合えたわけで…。
でもやっぱり太陽に触ったのは許しがたい。
「朔先輩?怒ってます?」
こてん、と首を傾げて俺を見上げてくる太陽。不安げで、耳と尻尾が垂れているのが見える。
「いや、怒ってない。けど、こんなもん受け取んな。俺が全部教えてやるから。」
雑誌と卑猥な玩具は床に投げ捨て、太陽の腰を引きベッドに座る。
太陽は俺の膝の上に向かい合って座らせた。
分かったか、と聞くと太陽はこくんと頷いた。良い子だ、と頭を撫でてやる。
「太陽…」
「朔先輩…」
互いに顔を近づけて唇を合わせた。子供同士がするような軽いやつを何度も繰り返す。
「せ、先輩。恥ずかしい…」
赤らめた顔を両手で隠す仕草がたまらなく可愛い。
小さな太陽の頭を手で固定し、顔を隠す両手をやんわり外した。
そしてまた唇を合わせた。喰らいつくような深いキス。舌先で唇をこじ開けて中に侵入する。
「んっ…!?」
後ろに逃げようとするが、それを許さず腰を抱きしめた。逃げ惑う太陽の舌を捕まえて舌同士を絡める。
うっすら目を開いて太陽を見ると堅く目を瞑って顔を真っ赤にしていた。
一旦唇を解放し、口の端から溢れている唾液を舐めとった。
「はぁ…ん…」
「かわい……」
初めてのディープキスなのだろう、太陽の目は潤み息は荒い。可愛さの中に色気が交じっていて俺は思わず唾を飲み込んだ。
目の前にこんな美味しそうなモノがあるのに手を出さないほど俺は紳士じゃない。
そっとベッドに押し倒して首筋に舌を這わせた。
「ひゃっ…!朔先輩!?」
「太陽が欲しい。」
「え、あの……」
「好きだ。俺に全部ちょうだい?」
真っ直ぐ目を見て言った。こんなに欲しいと思うのはお前だけなんだ。
太陽は恥じらいながらも頷いてくれた。
「オレも朔先輩が好きです……」
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