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ーーこれはしのちゃんが面白がってつけただけで…!




思わぬハプニングで気づいた俺の、太陽への気持ち。

「さっく先パーイ!」

以前のように4時間目終了のチャイムが鳴って数分でここ、2年の教室に来たのは太陽だ。

ニコニコ笑う太陽に返事などせず俺は立ち上がって教室を出た。

この前までは俺の後ろを追いかけるように歩いていた太陽は隣にいる。

太陽に合わせ、少しゆっくり歩いていつもの教室に入った。

「お昼ご飯ですね。」

俺の正面に座った太陽はこれまた嬉しそうにご飯を食べ出した。

そして俺はそんな太陽をぼんやりと観察した。

一口一口美味しそうにほうばる太陽に思わず笑みがこぼれそうになる。

「朔先輩?食べたいんですか?」

俺の視線に気づいた太陽は食べるのをやめて。

「はい、アーン…」

極自然に玉子焼きを差し出してきた。

「ん、」

自然過ぎて思わず口を開いてしまった。口の中に広がるほんのり甘い玉子焼き。久々に食べたそれは美味しかった。

ふと太陽を見ると嬉しそうに笑っていてなんだかこっちが恥ずかしくなった。

少し気まずい、でもイヤな空気じゃない。くすぐったい、2人だけの空間をぶち破ったのは第三者だった。

「陽ちゃーん!あ、やっぱここにいた!顧問が呼んでたよ。」

「流…」

「篠原先輩!!」

太陽は流の言葉に慌ててご飯をかき込んで立ち上がると、俺と流に挨拶をして出ていった。

流が来なきゃもっとゆっくり出来たのによ…。

少し腹が立って流を睨んだ。

「なんだよ、怖い顔して。」

「うっせ…」

「なに、陽ちゃんいなくなって不機嫌?」

流はニヤニヤと楽しげに俺をからかう。どうせ太陽から聞いたんだろ。

癪に障るのでそうだよ、と答えてやった。

「えっ!?マジで!朔が素直になるとは…」

「うるせぇよ。」

「ま、おめでとさん!!」

流はバカみたいに両手を叩いて、太陽が座っていた場所に座った。

「まぁ、あんな可愛い子に迫られたらなぁ。朔?」

「あーはいはい。そうですね…。てか、お前あいつに変なことすんなよ。」

「変なこと?押してダメなら引いてみろ作戦!!成功だったな。」

「それもだけど。あっちだよ。」

「あっち?」

確かに流の作戦(実に不服だが)のおかげで付き合うことになったが。

「キスマークだよ。」

これはさすがにやりすぎだろ。

「は?キスマーク?」

「は?」

「なにそれ?」

「……お前じゃねぇの?あいつに付けたの。」

「知らねぇよ。」

互いに沈黙。流がこんな事で嘘をつくはずもねぇし。

「あいつが『しのちゃんが』つって。」

「しのちゃん?陽ちゃんは俺のこと『篠原先輩』だぜ。」

…つーことは。流じゃない?っんだよ!誰なんだ。

流だとばかり思っていた俺は、あの時特に問いただすこともなく上から消すように吸いついて、全部俺の印に変えた。

部活があるっつう太陽を解放したんだ。

湧き上がる不快感。

「おい、朔。何か知らんが陽ちゃんに聞けよ。隠し事なんてするわけないし。」

「あ、あぁ。そうだな。」

顔に出てたのか流は軽くそう言った。こういう時幼なじみなのは有り難い。

「今日の部活ミーティングだけだから一緒に帰りなよ。」

「あぁ、そーする。」

どうせ太陽の方から一緒に帰りたいって言ってくるだろうし。

予鈴がなって流は教室に。俺はその場に残った。

あの体に触った奴が知らない奴だと分かっただけで俺はまたフツフツ怒りが湧き出てきて。

「くそっ…めんどくせー…」

俺は逃げるように夢の世界に向かった。


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