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後期の始まりはなかなか賑やかなものだった。
地元に帰ってきた友達と約2ヶ月ぶりの再会に後期授業の履修、新しい教科書の購入などに五月は慌ただしく過ごした。
昨日の浩介の言葉に五月は気分が重かったけれど、浩介はたまに子供のように癇癪を起こすことがあったので五月は昨日もそれだろうと無理やり納得していた。
そうでもしなくては、気が滅入る一方で気づけば深い溜め息をついて何もせずに時間ばかりが過ぎてしまうのだ。
暫く2人きりで会うことはないかもしれないが講義が始まれば学校で毎日浩介を見ることができる。
単純だけど五月はそれが嬉しくて、五月は顔が緩むのを止めれなかった。
「さっちゃーん!何笑ってんの?」
「いっ!進!!もう、やめてよっ!」
五月の髪をくしゃくしゃと乱暴にかき混ぜながら隣に座ったのは奥田進。高校からの友達だ。
髪を落ち着いた茶色に染め耳にはピアスがいくつか開いており、今時の大学生という風貌だ。
けれど人と話すときはしっかり目を見て話し、相談すれば親身になって聞いてくれる。そんな彼のことを五月は信頼していた。
だから五月は浩介と付き合いだしたとき一番に進ひ報告したのだった。
「さっちゃんは三村とラブラブ?」
「な、何言ってんだよ!!」
周りに人が居るカフェテリアで質問され、五月は顔を慌てた。
「夏休みはどうしてたの?」
「え、えーっと。バイト…。」
「ふーん。バイト以外はいちゃいちゃしてたわけだ。」
「ちがっ!」
「違うの?」
間髪入れずに聞いてくる進に観念して答えた。
「ち、違わない……」
「ほー!!お熱いねー!!」
「もうっ!進うるさいよ!!」
五月がそっぽを向くと進はごめん、ごめん、と謝り旅行のお土産と言ってお菓子をくれた。
「やった!ありがとう!!どこ行ったの?」
「今年はドイツ。やっぱ車が凄い!全部外車だった!!」
「何それ!当たり前じゃない!」
進の言葉に五月がつっこみ2人はクスクス笑った。
それから進の土産話で盛り上がり、五月はバイトの時間になったので進と別れた。
バイトに向かいながら五月は学校で浩介を見なかったことに気づいた。
本格的に講義が始まるのは1週間後からで、それまでに履修登録をすませればいいのだから今日は来ていなかったのだろう。
一目でも浩介を見たかったなと五月は思った。
五月のバイト先は昼はカフェで夜になるとバーになる。
男子は大抵キッチンなのだが、何故か五月は店長からホールをしろと言われていた。
確かに酔っ払いが多くなるとホールに女の子だけは危険かもしれないがこの店に来る人は皆マナーの良い人ばかりなのに、と五月は少し疑問だった。
人と接するのが得意ではない五月はキッチンを希望していたのだがこの機会に慣れようと思っていた。
「おはようございます。」
「おはよう!」
白のシャツに足首まである黒のエプロンをつけて店に出ると既に今日のシフトのメンバーが準備をしていた。
「羽山、来て早々だけど買い出し行ってきてくれるか?」
キッチンから顔を出したのは吉田昇司だ。
五月と同じ大学の3回生で、バイトに入った頃から何かと世話をしてくれた人だ。
バイトの仕事に始まり、学部も同じと言うことで授業の事を色々教えてくれた人で、五月にしては珍しく昇司に懐いていた。
はい、と返事をして五月は買い出しに向かった。
店に帰ってきた頃にはちらほらお客さんが入り、ラストまで五月は慌ただしく働いた。
やっと後片付けが終わり、家に着いたのは1時前になっていた。
携帯を開くと新着メールが3通。2通は進からでもう1通はダイレクトメールだった。
浩介からメールがないことを少し寂しく感じて、自分から送ろうかと思ったが何を書けばいいのか分からないのと、こんな夜中に送るのは申し訳ないのとで、五月は携帯をたたんだ。
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