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オニゴッコ*前
先輩×後輩

遊び人の先輩、朔夜に振り向いてもらうため太陽は今日も頑張ります。









「さっくセンパーイ!!」

4時間目終了のチャイムが鳴って数分でここ、2年の教室に来たのは1年の藤原太陽だ。

入学してすぐに俺に一目惚れした、と毎日のように告白してくるちみっこいやつだ。

「一緒にご飯食べましょう!!」

「嫌だ。」

「えー!!それが嫌だ!!俺先輩とご飯食べたい!」

「俺は嫌っつってんだろ!!」

「じゃぁ俺と付き合ってください!!」

「無理。」

「もう!!先輩我が儘なんだから!!」

それはお前だろ!とは言わないで俺は無言で教室をでた。

「あっ!先輩待ってください!!」

ズカズカ進む俺を追って太陽が付いてくる。

背後から聞こえた「陽ちゃん頑張れー!!喰われんなよ!」と言うクラスメートの声に頭が痛くなる。

誰がこんなちみっこいやつに手を出すか!!

俺は相手に困ったことなんざねぇんだよ!!



今は使われていない教室に入って窓際の席に座る。

そして太陽が当たり前のように俺の前に座った。

「お昼ご飯ですねー!!」

何が嬉しいのかにこにこ笑いながら弁当箱を机において昼飯を食う太陽をぼんやりと観察した。

男にしては細い体に、運動部らしくほんのり焼けた肌。

顔は綺麗よりも可愛らしい、愛くるしいって感じだな。

柴犬の子犬をなんとなく思い出した。

「先輩?どうかしましたか?」

「別に。」

素っ気なく返しても太陽は気にした風でもない。

「ね、先輩。俺と付き合ってくれませんか?」

箸を置いて俺をまっすぐ見つめながら、でもどこか照れたように告白されるのは何回目になるのか。

「嫌だね。オレは後腐れのない関係が好きなんでね。」

そして俺がこの言葉を言うのは何回目か。

この後はお決まりのパターンが待っている。

「いいじゃん!誰か一人に絞るのも!!」

「嫌。んなめんどくせーことできるかよ。」

「先輩の我が儘!!」

「お前が我が儘なんだろ。」

「俺は良いの!!」

どこのガキの理屈だよ…。

付き合って、嫌だの押し問答を延々続けて気づけば予鈴の鳴る時間で。

「おい、予鈴鳴るぞ。」

「あぁー!!ご飯!」

慌てご飯を口に詰め込んでくからほっぺがハムスターみてぇに膨らんでる。

1年の教室は一つ上の階にある上に確か次は移動教室だったはず。

「くく…!早くしねぇと遅刻だぜ?」

「ん、ぐ!先輩もじゃないですか!?」

「俺は良いんだよ。それに、」

「朔夜?」

がらりと教室の扉が開いて、一つ上の先輩が顔を出した。

「俺は今からお楽しみなんだよ。お子様は帰りな。」

シッシッと手で追い払うと、一瞬傷ついたような表情をして、俺を睨むと太陽は走って出ていった。

あんな顔されても怖くねぇっつーの。

子犬が威嚇してくる姿を想い描いて思わず笑いがこぼれた。

「今の陽ちゃんじゃない。よかったの?」

俺と太陽のことは全校生徒が知っているというのはあながち嘘じゃないのか、と俺は溜息をついた。

「別に関係ねぇよ。それよりこいよ。」

一瞬見せた太陽らしくない顔を無理やり頭から追い出して俺は制服のボタンに手を伸ばした。



■■■



「さーく先輩!!」

今日も太陽は教室まで押し掛けてきた。

「陽ちゃん頑張るねー!」

「当たり前です!!」

「応援してるよ!」

「ありがとうございます!!」

「朔夜に飽きたら俺にしなー!!」

「俺は朔先輩一筋です!!」

クラスメートにいじられながらも律儀に答える太陽を目の端に入れながら俺は昨日と同じように無言で教室をでた。

後ろを確認しなくても太陽は俺を追いかけてくる。

昨日と同じ教室に入って座れば太陽も座ってご飯を食べだした。

そこでふと気づく。

まだ太陽と目が合ってない、会話をしていない、告白されてない。

そして太陽の弾けるような笑顔を見ていない。

…って、俺は何を気にしてんだか。

めんどくさくなくて良いじゃないか。

珍しく一言もしゃべらずに太陽は弁当を食い終わった。

無言で弁当箱を片すと、一息ついて太陽はこっちを向いた。

「あの、先輩…昨日の人と付き合ってるんですか?」

何を言い出すかと思えばそんな事かよ。

こいつは俺のことを聞いていないのか。

後腐れがなければ誰でも抱く、っていうほぼ真実に近い噂を。

「ちげーよ。友達。セックスフレンド。」

「セッ!?」

「お前だって知ってるんだろ?俺に友達がいっぱいいるの。」

俺の言葉に顔を赤くした太陽は一瞬目をさまよわせた後まっすぐ俺を見てきた。

「じゃあ、俺もセッ、セックスフレンドにしてくださいっ!!」

「嫌。」

何を言い出すかと思えば……。

誰だよ、いらないことを入れ知恵したのは……!!

「どうしてですか!?」

「だってお前ヤったことないだろ?んなのめんどくせーよ。」

「先輩になら初めて捧げます!」

「いらねーから。初めてとかめんどくせーし。」

「先輩のけちんぼ!!」

「はいはい…」

また不毛な言い合いが始まってしまった。

なんだかんだでいつもと同じだ。

きゃんきゃん吠える太陽を適当にあしらっていたら扉が開いた。

「さく?」

「流(ながれ)かよ。」

「篠原先輩!!」

「あ!陽ちゃん!!今日もアタック中?」

はい!だなんて元気に答える太陽の頭をぺしっと叩いた。

「さく!俺の可愛い後輩いじめるのはやめろよ!!」

そういや流と太陽は同じ部活だったな。

「そーだ!そして俺と付き合えー!!」

何が、そして、だ。

「うっせ、黙れ。それよりお前次体育だろ。早く行けよ。」

「はっ!!そうだった!篠原先輩失礼します!!朔先輩また会いに来ますね!!」

叫びながら太陽は走って出ていった。

「元気だねー。」

「うるせーだけだろ。で、何の用だ?」

「あ、担任がレポート提出しろって。」

そういや今日遅刻したから朝提出してなかったか。

「あー…めんどくせー。」

「で?」

太陽が座っていた場所に流が座りニヤニヤ笑いながら俺を見る。

「なにがだよ?」

「陽ちゃんだよ。満更でもないんだろ?」

「バーカ。だれがあんなちみっこいの。」

「嘘つくなよ。めんどくさがりやのお前が毎日一緒に昼飯食って。」

「それはあいつがしつこいからだろ。鬱陶しいっつーの。」

「鬱陶しかったら殴ってでも止めさせるだろうが。朔はよ。しかも次の授業まで把握してるくせに。」

「……たまたまだよ。」

「ふーん。たまたま、ね。」

否定しても意味深にニヤニヤ笑う流に舌打ちをする。

これ以上言っても無駄だ。

「あ、そういや。お前だろ。あいつに入れ知恵したの。」

「可愛い後輩の相談に乗ってあげただけですよ?」

「てめーなっ!!」

「どうせ陽ちゃんのこと気に入ってるんだろ?別にいいじゃん。」

「だからっ!!違うっつってんだろ!!」

睨みながら否定しても相変わらず流はニヤニヤ笑って。

これだからコイツと幼なじみは嫌なんだ。

胸くそ悪い!!

って時にまた扉が開いた。

「篠ちゃん先輩!顧問が呼んでましたよ!!」

「あ、さとちゃん!!ありがとう!今から行くわ!」

「ぷっ、篠ちゃんだってよ。」

「ウルサいなー。ま、そんな訳だから俺行くわ。あんま陽ちゃんいじめんなよ!」

――じゃないと俺が貰っちゃうよ?

人の悪い笑みを浮かべて流は教室を出ていった。

なんだって言うんだ。

きっとまた明日も太陽に追いかけられるんだろうなと思いながら、レポートを提出するため立ち上がった。

「めんどくせーの。」



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あきゅろす。
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