shrimp:海老
出会った次の日に言われた。
「お前、俺のもんになれよ」
誰がお前なんかと!って思ってたのに。
それから約半年後オレは至貴と付き合うことになった。
付き合って3ヶ月。
まだ3ヶ月。
もう3ヶ月。
どっちが正しいかなんて分からないけどオレにとっては【まだ】で、あいつにとっては【もう】なのかもしれない。
バイト帰りにばったり出会った、多分オレの恋人であろう至貴の隣には綺麗な女の人。
露出の高い服を着て、わざとらしく至貴の腕に大きな胸を押し当てている。
「柚季…」
明らかに一般人のオレと、明らかに一般人じゃない至貴。
「至貴さまー?こちらどちらさまー?」
甘えた声で至貴に聞く女の人の気持ちは分からなくもない。
けど。
ここは怒るべきなのか。
男同士でも一応付き合っているのだから。
怒るべきなのか?
どうなんだ?
「きゃっ!!至貴さま!?」
オレがぼんやり考え事をしていたら聞こえた悲鳴。
女の人が倒れ込んでいた。
「ゆず、ご飯はくったか?」
至貴が振り払ったみたいだ。
「まだ、だけど。ちょっ!!」
「なら、食いに行くぞ」
オレの腰に手を回して、スタスタ歩く至貴。
女の人はいいのかよ?
「至貴さまっ!!なんでそんなやつとっ!?」
「あぁっ!?うるせぇなっ!!おい、美山!車はどこだ」
「なっ!!至貴さまっ!!」
「すぐ参ります」
女の人は一瞥しただけで後は無視。
いつのまにか美山さんがいて、滑り込んできた黒塗りベンツのドアを開けてくれる。
「ほら、ゆず行くぞ」
「え、あ!ありがとうございます!!あと、お願いします」
美山さんにお礼を言って、運転手さんに挨拶をする。
人としての常識だな!
バタンと美山さんが閉めてくれたのと同時に車は発進。
凄いなー…
じゃなくてっ!!
「至貴っ!あの女の人!!」
「ん?あんなの遊びだぜ?本命はお前だけ…」
後頭部を固定されて近づいてくる至貴の顔をべちりと叩いた。
「女の人に乱暴なことすんなよっ!」
オレが怒鳴ったら運転手さんはクスクス笑って、至貴はがっくり肩を落とした。
ん?なんだよ?
「お前なぁ……まぁ、良いけどよ」
「良くないっ!!ちゃんと後で謝っとけよな!!」
女子供に手を挙げる奴は嫌いだ!
「分かった、分かった」
「絶対だかんなっ!!」
「分かってる。後で謝っとくさ。で、今日は天ぷら屋で良いか?」
「えっ!!うんっ!オレ大好きっ!!」
って!!違うっ!!
あの女の人の事聞かなきゃ!!
「至貴っ!!で、あの女の人はなんだよっ!?」
「最初にそれを聞いてくれよ…。」
「で、誰なんだよ?」
「だから遊び相手だって言ってるだろ?」
「お前なっ!!」
しれっと言う至貴にカチーンとくる。
どう見たって浮気だろ!!
「えび」
「え?」
「えびが美味いんだってよ。そこの天ぷら屋」
「まじでっ!?」
「あとデザートも絶品らしいぞ」
「食べていいの?」
「当たり前だろ」
わぁぁいっ!!
たっのしみだな!
えーびっ!えーびっ!!
「くくっ!本当にゆずは可愛いな」
ちゅって頭にキスをされた。
「だってえびー!!」
にっこり笑って言ったら頭を撫でられる。
子供扱いすんなよ!!
「あぁ、腹一杯食えよ」
「うんっ!!」
ん?何か忘れてる?
「デザートもいっぱい食えよ」
「うんっ!!もう、至貴大好きっ!」
まぁ、いっか。
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END
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