WJ
chase〜追跡〜
【chase】
〜追跡〜
取りあえず10万ほどをチップに換え、ギムレットをボーイに頼む。
それを受け取り、今夜のカモをゆっくりと探す。
ギムレットを口に含みながら色んなテーブルを見ていら急に辺りが騒然となった。
何かと思い入口に目を向けてみれば…。
藍染惣右介。
こっちの世界じゃ知らない奴はいない程の有名人。
若くしての四神会・朱雀の頭の座につく程の実力の持ち主。
端正な顔に常に笑みを湛え一見穏やかに見えるが、冷酷非道・情け容赦無し、血も涙も無いような人間だ。
なんでそんな奴がここに…?
しかも今日は奴の右腕と言われている市丸ギンがいない。
単に遊びに来たのか?
それにしては黒服がやたら頭を下げてるな…。
いや、そんなことよりも奴の側にいるのは…?
派手な橙色の髪をし、ラフな格好をした少年…明らかに未成年だ。
藍染のお稚児さんか?
遠目からでも分かるほど綺麗な面をしてやがる。
他の奴等も橙色に見惚れてやがる。
面白い…。
あの藍染が自慢するかのように誰かを引き連れるなんてよ。
人だかりに紛れて奴等が座ったテーブルに近付けば、橙色が藍染に何か話しかけている。
「藍染さん、オレこんな服で良かったのか?皆スーツ来てるけど…。」
ダメに決まってるだろ!!
ここじゃ正装が必須なんだよ!
「一護君が気にする事じゃないよ。」
あの藍染が君付け!?
しかも橙色タメ口じゃねぇか。
大丈夫なのか…?
酒の席で粗相をした奴の腕を藍染が切り落としたって噂があるんだぜ?
…それ程までに橙色を気に入ってるってことか。
「そうか。なぁ、オレ回って来て良い?」
「あぁ構わないよ。僕も行こうか?」
「いや、いいよ。藍染さん遊びに来たんだろ?1人で大丈夫だよ。」
…藍染さんよ、お前は何時からそんなに過保護になったんだ?
まぁ、いい。
藍染の情報は何時でも入って来る…はず。
なら俺の興味は橙色の、いちごって奴にしかない。
ボーイにグラスを渡し、新しいグラスを受け取ると橙色の後をつけた。
目に写るモノすべてが珍しいのかキョロキョロしちゃって…。
田舎もん丸出しだな。
特に何をするわけではなく、他の奴等がゲームをするのを見るだけ。
意外だ。
藍染から金貰ってそうなのにな。
ぼんやり考えながら人の流れに任せて歩いていたら、いつの間にか橙色が目の前に。
やべぇ!近付き過ぎたっ!
距離を取ろうとする前に橙色が振り向いた。
「うわっ!」
「え?」
瞬間、持っていたグラスが傾き。
「悪いっ!!」
赤い液体が零れ、橙色の肩から胸にかけて服を汚してしまった。
ぴったりと布が張り付き、体のラインが浮き上がった姿はすごく卑猥だ……。
「お客様!どうぞこちらへ。」
ボーっと見とれていたら黒服がやって来て、控え室の様な所に連れて行かれた。
「本当に悪い!!」
「気にしないで下さい。急に振り向いたオレが悪いんだし。」
笑って言う橙色は本当にあの藍染のお稚児さんか疑うほど素直だ。
もっと高飛車なのかと思ってたのによ。
それにしても綺麗な奴だ。
目は舐めたら甘いんじゃないかって思うほど、綺麗な蜂蜜色。
肌はきめ細かく、ホッソリとした首が何とも色っぽい。
……ヤバい。
黒服はタオルや着替えを取りに行き、この部屋には2人きり……。
待て、俺!!
相手は四神会・藍染惣右介のお稚児さん!
手を出したら殺される!!
いや、でも…。
悶々と考えていたら急に橙色が服を脱ぎ出した。
「なっ!何してんだ!?」
「?ベタベタして気持ち悪いから…。」
……誘われてんのか、俺?
据膳食わぬは男の恥!
抱き寄せようと手を伸ばした時、バンッとドアが開く音がしたかと思うと。
「一護君!」
「藍染さん!」
ヤバい…。
俺殺される…。
「あ、藍染さん!オレが悪いんだ!俺がぶつかっちゃって!!」
奴は上着を脱ぐと橙色に、優しく着せる。
そのまま橙色を左手で抱き上げたかと思うと。
銃口がこっちに向いてます…。
「一護君の肌を見ただけでも万死に値するんだよ。」
ニコニコ笑いながら言う藍染の目は、笑ってない。
こっちが凍付く様な冷たい目で俺を見下ろしている。
「藍染さん!!いいから銃を下ろせ!」
上手く、息が出来ねぇ…。
「惣右介!!」
ガゥンッ―――!!
…っ!
銃弾は顔の直ぐそばを過ぎ、壁にめり込んだ。
し、死ぬかと思った!
「惣右介、銃を下ろせ。」
「…申し訳ありません。」
と、とにかく命はあるみてぇだ。
呆然としている間に、奴等は消えていた。
++++++++++end+++++
2006/2/18
←→
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!