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all at once【浦原と一護】
※月華続編
「浦原さん。」
【all at once】=突然
突然呼ばれた自分の名。
振り向けばそこには愛しい橙色が。
眉間に寄せたシワも、ふてぶてしい態度も。
何も変わらず立っていた。
違うのは気配を全く感じさせないところ。
実際、声を掛けて貰わなければ気付かなかった。
「お久し振りです。」
律義に軽く頭を下げる黒崎サン。
「ぁ…そうっスね。」
出た声はどこか掠れていて、思ったよりも自分は彼の出現に動揺しているらしい。
彼はアタシの目の前で藍染と消えた。
アタシの手を取らず…。
そう思うと酷い焦燥感に駆られる。
「騙したんスか…?」
無意識に出た言葉。
まだ何処かでアレは嘘だと期待して。
目の前にいる橙色を見つめた。
「騙した?ははははっ!!…何言ってるんだ?」
とても楽しげに笑って、言葉の中には侮蔑の色が混じっている。
「俺は初めからお前ら死神の仲間なんかになった気はないぜ?それにさぁ…」
騙される方が悪いんだろ?
そう耳に入った瞬間。
一気に間合いを詰められ斬月を喉元に突き付けられた。
全く。
反応が出来なかった。
初めて恐怖を抱いた。
心のどこかでまだ浅ましくも期待していた。
この子はアタシ達の味方だと。
この瞬間まで。
刀を突き付けられるまでは。
このまま黒崎サンが刀を引けば、アタシは呆気なく死ぬ。
確実に。
逃げることなんて不可能。
力が違いすぎる。
恐怖と絶望。
そして高揚感。
愛しいこの子になら殺されてもいい。
心の底からそう思う。
黒崎サンの手にかけて貰えるなら。
これ以上の幸福な死はない。
穏やかに微笑んだ。
+++END+++++++++++++
2006/2/17
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