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ナル受けパロディ2
「カカシせんせ!お客さんよかったの?」
宮の中に入ると愛し子がカカシを見上げてこてりと首を傾げた。りん…と軽やかな鈴の音が鳴るのは少年の首に小さな鈴がついているからだ。
金色の髪に対してその鈴はカカシの髪の色と同じく銀色をしている。指折りの職人を国中から集め、色に形、音色、全てにカカシが納得するまで何千と造らせた。
そもそも金色が身につけている全ての物が最上級品で、カカシが反物から選び王家専属の職人に造らせたのだ。
宮の一室には数え切れぬほどの着物が納められており、全てがカカシから金色への贈り物だった。
目の前の少年がそのうちの1つを身につけているのを見ただけでトゲトゲした気持ちが嘘のように凪いでいくのが分かった。
「うん、もう大丈夫だよ。大した用じゃなかったし。」
「そうなんだってば。じゃあ早く行こう!サクラちゃんが焼き菓子を作ってくれるんだってばよ!」
腕をぐいぐい引っ張る金色をカカシは浚うように抱きかかえ、更に奥へと走りだした。
「わわっ!カカシ先生!怖いってばよ!」
言いながら首に強くしがみついてくる愛し子に口元が自然と緩む。小さな体からは先日カカシが贈った香がふわりと鼻腔を擽った。
!!!
金色の少年、ナルトとはカカシが即位する数年前、赴いた地で偶然に出会った。
かつて隣接していた北側の国、霞の国は連なる山脈からなりたっていた。寒冷の地だがしかし金が産出される貴重な土地で、手中にしようと様々な国が戦をしかけた。だが複雑な地形と厳しい気候と、同盟国からの援護等により国が滅ぶことはなかった。
かくいう木の葉の国も同盟国の1つで、かつては金と引き換えに援助を行ってきた。だがあの日、カカシとナルトが出会ったときにそれはもろく崩れさった。
直ぐに同盟を破棄するのではなく他の同盟国を手駒にし、同時に霞の国の内部にも息のかかった者を入れジワジワと浸食していった。
霞の国を手に入れる為、否、ナルトを手にするためカカシは国王に即位したのだ。今正にそのナルトが腕の中にいることはカカシを大いに満足させた。
「カカシ先生、何してるんですか?」
角を曲がった少し先に桜色の少女が両手に皿を持ち、カカシを見ていた。
「サクラちゃん!それが今日のお菓子だってば?うまそー!」
「サクラ。見てわかるでしょ。ナルトを運んであげたの。」
無邪気に微笑むナルトを抱えたカカシは当然のようにそう言った。
桜色の少女、サクラは今更カカシに何を言っても無駄だったとため息をつき、ナルトにそうよと肯定の返事をして微笑んだ。
「今日はカカシ先生が持ってきてくれた葡萄でお菓子を作ったのよ。」
「サクラちゃんすごいってば!カカシ先生、サクラちゃんありがとう!」
空色の瞳をキラキラと輝かせるナルトを愛おしげに見つめながら、カカシは用意されたカウチに腰を下ろした。
「ほんと、すごいね。ほら、あーんして。」
皿から1つつまみ取ると膝の上にいるナルトに差し出した。まだほんのり温かいそれをナルトがぱくりとくわえ、咀嚼し終えるとナルトは美味しいと微笑んだ。
「はい、カカシ先生も。あーんだってばよ」
「ん、あーん」
食べさせあう2人にサクラは小さくため息をついた後、深々と一礼し静かに退室した。
!!!!
サクラが使った料理器具を片していると、後ろから名を呼ばれた。確認などしなくともこの宮に入ることができる人間は限られている。濡れた手を素早く拭くと、すっと頭を下げた。
「顔を上げて、サクラ。」
「はい、カカシ様。」
目の前のカカシは先ほど見た態度とは一転して、ビリビリと肌を刺すような威圧感を放っていた。さすがは一国の主だ、とサクラは思う。
「ナルトのこと頼んだよ。」
「はい、お任せ下さい。」
「何かあったらすぐに言いなさい。あと、しばらく護衛を増やすから。」
カカシの言葉にサクラは何故、と首を傾げた。この宮はカカシの許可がなければ入ることができないのだからそんなもの必要ないはずだ。
「ゴミが入ってきて、ナルトを見られた。あの女…」
サクラの疑問を感じ取ったのかカカシは忌々しげに言った。
あの女、と言うのが誰なのか一瞬考えた後ある人物にいきついた。カカシの御子を孕んだユーリエという女だ。
カカシの抱える側室の中で一番位が高く、そして一番の我が儘姫であること。何よりもやっかいなのがそのプライドの高さだ。自分がカカシに相応しく、正妃になるべきなのだと当然のように信じて疑っていない。
そんな女にナルトを見られたのだとすれば少々ややこしいことになるのは目に見えている。
そもそもこの宮は正妃の為のものであり、国王の許可なくして足を踏み入れることは禁止されている。それにも関わらずあの女がやってきたとすればおそらくは
大いなる勘違いのせいだろう。
側室の中で気に入らぬ者がいれば権力を振りかざし、後宮から追い出すような女だ。ナルトがカカシの庇護下にあるといっても油断はできない。
「ナルトのことはお任せください。」
サクラはどこか幼い主のことを思いながら、ぐっと強く手を握った。
どんな人間であろうと手出しはさせない。
!!!!!
「ユーリエ様っ!ユーリエ様!お身体に触ります!どうぞ鎮まりくださいませ!
」
「お黙りっ!黙りなさいっ!!何なの!許さないわっ!私をなんだと思っているの!!」
カカシの側近にまるで罪人のように東の宮から連れ出されたユーリエは自室で気が狂ったように暴れていた。手当たり次第に物を投げつけ、しまいには止めに入ろうとする侍女にまで手を挙げる始末だ。
国王のユーリエに対する態度はユーリエのプライドを粉々に砕いた。正妃で有るはずの己が、何故あの様に下等な扱いを受けなければならないのか。
今までずっとユーリエは側室の中で特別の扱いを受けていたし、カカシも当然のように特別に扱っていた。それもこれもユーリエが正妃となるに相応しく、国王陛下に認められたからに違いないのだ。
それなのに、何故。
何故なのか、と考え行き着いたのは金色の少年だ。伝説の光の御子を体現したかのような輝かしい髪を持った幼い子。当然のように、我が物顔で東の宮に居座っていた。
カカシがユーリエを追い払ったのも、あの金色がいたせいに違いない。
そうだ、陛下は彼奴に騙されているのだ、とユーリエは砕け散った陶器を見詰めながら思った。
「赦さない、赦さないわ!」
ユーリエは大きく振りかぶり、右手に持った花瓶を床に叩きつけた。
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