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WJ
ナル受けパロディ1
‐光の御子降り立ちし地悉く栄る‐

遥か太古より伝えられている光の御子とは、この世のものとは思えないほど鮮やかな金の髪を持ち、それはまるでこの世の光を全て詰め込んだかのように神々しく、それ故暗闇の中光が輝くように光の御子も降り立った地を照らし、豊かにするのだと言われていた。




歴代の優れた王に引けを取らぬ程の名君だと言われるのが第17代目の国王、畑カカシだ。僅か18歳で即位し、先代の悪政による国の混乱を僅か1年で一掃。更に2年かけ大陸一の豊な国へと発展させた。

見目麗しい国王は確かな判断力に、指導力。臣下に引けを取らぬほどの剣術に体術の持ち主であり、戦においては自らも先陣を切り自国のために戦っていた。

上に立つ者として類い希なるカリスマ性と見惚れる程の容姿を持つカカシは勿論民に慕われ敬われていたが、ここまで国が豊になったのは国王の力だけでなく光の御子がこの地に降りたったからだと市民の間ではまことしやかな噂が流れていた。





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白を基調にした城内は随分と太い柱に繊細な彫刻を誂え厳かな雰囲気を漂わせていた。

城の西側にある塔にはカカシの側室が多数おり、その側室の中で最もカカシから寵愛を受けていると自他共に認めるユーリエは金に近い髪にたおやかな身体、誰もが見惚れるような美貌を持っていた。

そんな容姿の側室はたくさん居たがユーリエが特別なのはそのお腹に国王の御子がいるからだ。未だに正妃を娶らぬカカシに、ユーリエが正妃になるのも時間の問題だと周りは噂し本人も勿論そうだと確信していた。

ユーリエの父は隣国の宰相で、叔父はこの国の官職に就き活躍しており後ろ盾も十分にある。

それなのにカカシは一向にそんな話をしないどころか、ユーリエが懐妊したと分かった途端部屋に来る回数は減り、今となっては遠くから姿を見ることしかない。

それはまるで子供ができたら用はないと云わんばかりだった。



「カカシ様は一体どういうおつもりですの!」

ユーリエに与えられた部屋はユーリエによって見るも無惨に荒れ果てていた。水差しや盛り合わされた果物、手に持てる全てのものは床に叩きつけられその中心に立ち子供のように癇癪を起こす主人を女官や侍女たちはそれでも微笑まし気に見ていた。

「ユーリエ様どうぞ心お安らかに。国王陛下様も直ぐにお見えになられます。」

「そうでございますわ!ユーリエ様は国王陛下様の御寵姫様ですもの。ささ、国王陛下様がお越しになる前に湯汲みでも如何で御座いましょう?」

「以前ユーリエ様が仰っていた香油がお届きなりましたのでそれをお使い致しましょう。」

女官や侍女たちの宥める言葉か、散々物に当たり散らしたためか、怒りが収まったユーリエはそれもそうね、とあっさり言ってまだあまり膨らみが目立たない腹部を愛おしそうになぜた。

「きっとカカシ様は婚儀の準備でお忙しいのですわ。」

ふふふ、と自分の言葉に納得したのかユーリエは満足そうに笑みを浮かべると荒れ果てた部屋に見向きもせず湯汲みに向かった。



湯汲みの間には他の側室がすでにいたがユーリエ付きの侍女が当たり前のように退室させた。
カカシに次いで従うべきはカカシの正妃であり、それはつまりユーリエであるのだと側室の中では暗黙の了解がなされており、逆らう者など皆無だった。

ユーリエはそれに十分満足し、カカシから結婚の話が持ち出されるのを今か今かと心待ちにしていた。




!!!




突き抜けるような青空はどこまでも続き、柔らかな風が静かに吹き抜ける。
ユーリエは幾分か大きくなった腹をそっと撫でた。未だにカカシから婚姻の話はないがそれでも2週間に1度は必ずユーリエの元へやってくる。他の側室の部屋にはユーリエの懐妊が発覚してから1度も行ってない事実はユーリエを優越感に浸らせ、正妃の地位を確信させるのに十分だった。



侍女に日除けの傘を持たせ、色とりどりに咲き誇る花々の間をゆったりと歩き、時折大輪の花に顔を寄せては甘い香りを吸い込む。
傍らにいる女官も侍女もそんな主の姿を微笑ましく眺めた。

「あら。ユーリエ様、あちらは国王陛下様では御座いませんか?」

女官の視線の先を追うと数人の側近をつけ、漆黒の長衣を翻しながら颯爽と歩くカカシがいた。後ろ姿でもそうだと分かる、この国唯一の銀色の髪がキラキラと
光輝いている。

「カカシ様だわ!」

「あちらは東の宮がある方向ですわ…」

1人の女官の呟きに他の女官や侍女達は、はっとなった。

「まぁ…!きっとユーリエ様の為に何かなされているんですわ!!」

「きっとそうですわ!」

東の宮と言えば側室の塔とは正反対に位置し、国王の部屋と共に今は空室の正妃の部屋が存在した。

日中はどんなに時間があったとしてもカカシが政務室から出ることはなく、例えそこから出るとしてもそれは政務と同等の重要さを持つ場合のみだと、城内ではもっぱらの噂だった。

そのカカシが日中に、しかも政務とは縁がない東の宮に向かっているのだ。ともなれば東の宮で何かしら重要なことをしているということで、それはつまり正妃を迎える為の準備なのだろうという結論に至った。

「カカシ様…っ!どうしましょう。私早くお会いしたいわ!」

女官達の言葉を鵜呑みにしたユーリエは歓喜のあまり両手で口を押さえ、頬を紅葉させた。
これでユーリエの地位は確定したも当然だ。数多くの側室の1人から正妃へとなり、カカシに愛され、この国全ての民から跪かれ羨望の眼差しを受けるのだ。

「あぁ、どんな部屋になっているのかしら…」

うっとりと呟いたユーリエに女官たちは口々に言葉を発した。

「きっとこの国で1番素晴らしい宮ですわ!」

「えぇ、きっとユーリエ様がお好きな物をたくさんお取り寄せになってるに違いありませんわ。」

「私、東の宮に行くわ!」

「ユ、ユーリエ様!ですが…」

主のまさかの言葉に侍女達がざわめくもユーリエは気にした風もなく東の宮の方向へ進んだ。

「何をしているの?私はカカシ様の寵姫なのよ。大丈夫に決まってるわ。」

早くなさい、とせき立てられ女官や侍女達は慌ててユーリエの後を追った。




!!!





東の宮はユーリエの想像よりも各段に広く、そこだけで1つの城のようになっていた。城壁が延々と続き、再端を視認することが出来ぬほどだった。反対側に位置する側室の為の塔も十分に大きかったが東の宮は規模が違いすぎる。

「なんて立派な…」

感嘆の声を皆が漏らしながら、開けっ放しの門から中へ入ったユーリエはここが自分の物になるのだと当然に信じて疑わなかった。

庭には様々な木々に花々、小さな池に川までもが存在していた。

庭に面した扉は大きくあけ放たれ、天井からゆったりと絹が床に着くまで幾重にも吊されており、はっきりと内部を確認することはできなかった。

「カカシ様はどこにいらっしゃるのかしら…?」

ユーリエが呟いたその時、軽やかな鈴の音と共に布が大きく揺らめいた。

「あ、れ?誰だってば?」

りん…と鈴を鳴らしながら現れたのは年端もいかぬ少年だった。けれどユーリエ達は目を見開いた。

輝かしいまでの金色の髪に極上の空を詰め込んだような瞳は、まさに伝説に聞く光の御子と同じだったからだ。

「どうかしたってば?」

少年がことりと首を傾ければまたりん…と鈴が鳴る。

「ナルトー?…見ぃつけた!」

「カカシ様…!」

「あっ!しまったってば!」

ついで布の向こう側から現れたのはこの国の王だった。カカシはユーリエを確認するとあからさまに顔をしかめたが次の瞬間には視線を逸らし少年へと微笑んだ。

「ナルト、中に戻りなさい。サクラが何か用意してくれるから。」

「カカシ先生は?」

「あとで行くよ。」

ほら、と笑顔のカカシに促されナルトと呼ばれた少年はまたりん…と鈴の音を鳴らして室内へと入っていった。

「…なんでいるわけ?」

くるり、とこちらを向いた国王ははっきりと不機嫌と分かるほどに顔をしかめ、先程少年に向けた愛おしげな空気は全く消え去っていた。

「あの、私…その…。カカシ様をお見かけして、思わず追いかけてきてしまいましたの…!」

ユーリエはあまりにも不穏なカカシの空気に萎縮しながらも、それでもきっと許して貰えると確信して媚びを売るように下から見つめた。

頬を紅色に染め、瞳がうっすらと濡れたユーリエは美しかったがカカシはぴくりとも表情を崩さなかった。

「出ていけ。この宮に立ち入ることは誰にも許可していない。」

「なっ…!カカシ様っ!」

「何?早くしてくれない?ナルトが待ってるんだから。」

カカシの言葉にユーリエは唖然とした。これではまるで。まるで自分の存在など必要としていないかのようではないか。

正妃となるはずのユーリエを追い出し、先程の少年を気にする国王。信じられない気持ちでユーリエはカカシを見上げた。

東の宮は正妃が使う宮としてこれまで大切に保管され、いくら王族といえども正妃でない者が宮に入ることはできなかった。国王とその正妃、そして選び抜かれた女官に侍女達しか住むことは出来ない。
それなのに。それなのに先程の少年はまるで当然のようにこの宮にいた。何故、と思う。けれど出てくる答えなど1つだ。

目を見開いたまま動こうとしないユーリエにじれたのか、カカシが手のひらを叩くと、す…と音もなく数人の側近が現れた。

「これ、外に出してくれる?」

さしたる興味もないのかユーリエ達をこれ扱いしたカカシに側近達は深く頭を下げ、ユーリエ達を連れだそうとした。

「カカシ様っ!!これは、これはどういうことですのっ!私、納得が出来ませんわ!!」

遠ざかるカカシに、ユーリエは顔だけを向けそう叫んだ。

「あ、ナルトとお菓子食べるからあと半刻後に来てね。」

まるでユーリエの声など聞こえていないのかカカシは側近達に声をかけると、幾重にも吊された布の中へと姿を消した。

「カカシ様っ!」

絶望にも似たユーリエの声は小さく霧散するだけだった。





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