WJ
ナル・ルフィ受け短文
クリスマス小説。
「サスケ君!24日一緒に過ごさない?」
後ろで手を組みながらもじもじと話す桜色の少女を一別して、黒色の少年は冷たく言い放った。
「悪いが修行だ。」
「24日ぐらいいいじゃないか、サスケ。」
銀色の青年がそう言えばサスケははぁ、とため息をついて。
「俺はそんな子供じゃねぇんだよ。」
小馬鹿にしたように言った。
「なぁに言ってるの!クリスマスぐらい子供らしく過ごしなさい。」
「そうよ、サスケ君!ナルトなんてどうせ今時サンタの存在信じてそうだし!」
必死にサクラが言い募り、金色の少年にねぇ、そうでしょ、と振り返った。
「え?何がだってばよ?」
きょとり、とした顔でナルトが首を傾げた。
「だーかーらっ!サンタよ!アンタのことだからどうせまだ信じてるんでしょー?」
これだから、なんて言うサクラを見てナルトはさらに首を傾げた。
「さんた?何だってばそれ?」
「ナ、ルト?」
「せんせ、さんたって?」
「お、い…、ドベ?まさか本気で…?」
ひた、と空気が止まった。
「ちょ、ちょっとナルト?25日に何があるのかは知ってるわよね?」
「25日?何かあるんだってば?あ!もしかして誰かの誕生日とか?」
当たった?と聞いてくるナルトにサクラはひくりとなる。当たっているが、意味が違う。
「何があるんだってばー!」
ムキー、と叫ぶナルトに3人は答えを言えるはずもなく、重い空気がのしかかる。知らないだなんて、誰も想像できなかった。
まだサンタを信じてるナルトを馬鹿にして、でもそれで一緒にパーティーしましょ、って誘うつもりだったのに。
「もう!何なんだってば!」
1人騒がしく喚くナルトに、なんと言えばいいのかわからなくて3人は押し黙った。
「ごほっ、ナルト君?どうかしましたか?ごほっ…」
「あっ!ハヤテ兄ちゃん!!迎えに来てくれたんだってば?」
病人より病人らしいハヤテがそうです、と言えばナルトは嬉しそうに笑ってハヤテに抱きついた。
「じゃあね!オレ帰るってば!」
バイバイ、と手を振るナルトにひらひら手を振替して3人ははぁ、と息をついた。何とも言えない、このやるせない思い。
ナルトの背中が消えてなくなるまで3人はただただ無言でそれを見つめた。
「こほっ、何かあったんですか?」
「んー?しらねぇってばよ。なんかサンタの話してたからそれ何って聞いたらあーなったの。」
にっこり、笑いながら言うナルトにハヤテはあぁ、なるほどと頷いた。
今日の夜、一緒に任務に行くからとナルトを迎えに言ってみればなにやら重苦しい空気を醸し出すナルト以外の3人。
悔しさと怒りとやるせなさと、そんな様々な感情を耐えてるようなそんな感じ。
「サンタなんてさ、知らないってばよ!だってオレにはハヤテ兄ちゃんがいるし?」
ふふ、と笑うナルトにあぁ、またこの子はと思う。
「ねぇ、ナルト君。25日は一緒に過ごしましょうね?」
「もちろん。喜んで。」
*****
ルヒ受け
初めて会ったときから惹かれていたのだと思う。
女が好きだ。でもどうしようもなくアイツが欲しいのも事実だ。他の男に無邪気に笑いかけるお前が憎くて、でもオレが作ったメシを人一倍美味そうに食べるときは言いしれぬ幸福を感じて。
もう我慢の限界だった。気色悪いと思われてもいい。この想いを口にしなければオレはおかしくなっちまう。
「お前が好きだ。ルフィ。」
「オレも好きだぞ!サンジ!」
ニシシと笑う麦藁の船長にサンジは小さく溜め息をついた。ルフィの好きは美味しいご飯が好きだ、と同レベルなのだ。
「そうじゃねぇよ…」
グイッと小さな頭を抱き寄せて、唇に噛みついた。一瞬触れただけで体中の血液が沸騰するかと思った。
「オレは、お前とこんなことしてぇし、もっと色んな事をしてぇ好き、なんだ。」
きょとんとした顔のルフィは次の瞬間またニシシと笑って。
「オレもだ!」
サンジの唇を奪った。
体中がジンジンと熱い。まるですべての血液が沸騰しているみたいだ。そんなことあるはずがないとわかっているけど全身が興奮していた。
今でも女が好きだ。柔らかくて良い匂いのする体。男にはない凹凸がたまらなく好きだ。
上陸すれば女を探すが、それでもいつだってサンジの意識は麦藁の船長にあった。
赤いベストに膝丈のズボン。特別に着飾っているわけでもないのに輝いて見えるのは惚れた欲目なのだろうか。
すらりと伸びた手足はやはり男のそれで、柔らかさの欠片などちっともない。
ルフィの体にある凹凸と言えば、しっかりと割れた腹筋ぐらいなもんだ。
それでも赤いベストからちらちら覗くそれを見て、欲情するのはサンジだ。
どうしようもなく好きなのだ。
想いを伝えてから数日してサンジはルフィを押し倒した。早過ぎるかもしれない、と思ったが一瞬きょとんとした船長は次の瞬間にはサンジの首に手を回してきた。
ルフィも同じ気持ちなのだと思うとほっと安心して、興奮した。
女のように柔らかいわけではない肉体は、それでもしっとりとサンジの手に吸い付いた。
どんなに美しい女を抱くよりも興奮して、これまでにない快感がサンジを襲った。
サンジのものを柔らかく締め付けるソコはゴム人間だからなのか、少しの潤いを与えれば難なくサンジをくわえ込んだ。
熱くて、キツくて、たまらない快感に我を忘れて腰を振った。
いつもの馬鹿みたいな顔が頼りなく快感に染まっているのも、甘すぎる喘ぎ声にも、どうしようもなく煽られた。
愛おしくて、愛おしくて。
所有の印を、ズボンに隠れる箇所に残したのは僅かに残った理性からだ。
何度も何度も互いに求めあい、欲望を吐き出した。
腕の中で眠る麦藁の船長を見てサンジはたまらない幸福に包まれた。
船長はクルーのもので、クルーは船長のものだけれど。
今このときだけはサンジだけのものなのだ。
腕の中であどけなく眠るルフィの頬にそっと唇を落として、サンジも目を閉じた。
甘い関係に酔いしれて溺れて、気づけばどうしようもない泥濘にはまっていた。
両想いになった、と言ってもサンジとルフィの関係はこれといって特に変化はなかった。いつ何が起きるかわからない海の上。夜中に奇襲があれば、突然の雷雨だってある。
両手にも満たない少人数でこのグラウドラインの旅を続けるのだから1人1人にそれぞれ重要な役目がある。サンジはその中でも命に直接関わる、生死さえも左右する【食】を管理するコックだ。
いくらサニー号に立派な冷蔵庫があったとしても一流のコックであるサンジは鮮度は勿論、味も見た目も全てに完璧を求めるし、完璧にこなせる。それには多少の手間がかかるのだがそんなもの大したことではなかった。
そう、大したことではなかったはずなのに、今は少し煩わしいのが本音だ。
夕食の後片づけをして、翌日の朝食の仕込を終えると、起きているのは見張りの誰かぐらいだ。
翌朝は誰よりも早く起きて朝食の用意をしなければならない。
否が応でもルフィとの時間は少なくて、週に1度2人きりになれるかどうかというものだ。
今日も今日とてサンジは昼食の後片づけをして、夕食の仕込みを始める前に煙草を1本口にくわえれば、外からルフィとウソップ、チョッパーの笑い声が響いてきた。
人の気も知らないで、と唸りたくなる。
だがその無邪気さがルフィなのだと思うと愛おしくも感じる。
肺にたまった煙をふぅ、と口から吐き出すのと同時にキッチンへズカズカと侵入してきたのは緑色の剣士だ。
「おい、ぐるまゆ。」
「何だよクソ剣士。」
食事以外ではめったに近寄ることのない人物にサンジは眉を顰める。顔を合わせれば喧嘩ばかりになるのは、サンジがゾロをあまりよく思っていないからで、またその逆しかり。
剣士として、この海賊団の一員としてゾロはなくてはならない存在だと思う。副船長と呼ぶに値する実力も十分にある。
それがどうしようもなく腹立たしいのだ。
まるでルフィと心から繋がっているようで、ルフィの信頼を独り占めしているようで、腹立たしい。
これがただの嫉妬だということはサンジも十分理解しているがそれでも苛立ちは隠せない。
ただルフィと体を繋げてからは少し落ち着いた気がする。心にゆとりができたせいだろう。
「何の用だよ」
「…ナミが部屋にこいだと」
「んナミさんがぁっ!すぐ!すぐに行きますっ!」
とたん目をハート型にしたサンジはいそいそと紅茶と焼き菓子の用意を始める。迅速かつ丁寧に。午後のティータイムには少し早いが特に問題はないだろう。
は、と鼻で笑った剣士のことなどまるまる無視してサンジはウキウキと準備をする。
部屋に呼ばれるなど今までになかったことだ。きっと重要な話なのだろう。もしかしたら愛の告白かもしれない。
そうなるとナミかルフィか選ばなければならないが、そんなことできやしない。2人とも同じくらい愛おしいのだから。こうなったら3人で愛し合うのが1番なんじゃねぇの、などサンジの頭の中はお花畑状態だ。
ティーポットとカップ、デザートをお盆にのせて信じられないほどの平衡感覚を発揮してスキップでナミの部屋に向かった。
「んナミさぁぁん!お待たせしました!お話ってなん、で、しょう、か‥?」
ズバーンと扉を開きナミの部屋に入ってサンジは一瞬動きを止めた。
正面にナミ、そのすぐ傍らにロビン。美女二人が並んでいるのは絵になっていて素晴らしい。が、この二人から少し離れたところに緑色の物体を発見して気分は急降下した。
「え?え?なんでクソマリモがここに…」
ナミさん、と呟いたがそれはナミのサンジ君という言葉にかき消された。
「そこに座って。…さて、なんでここに呼ばれたか分かってるでしょ」
とりあえず愛の告白でないことは分かるが呼び出される理由が皆目見当がつかない。困惑しながらもよく蒸れた紅茶をナミとロビンの為に注ぎ、差し出す。
ありがとう、と微笑むロビンに対しナミは無言でそれに口を付けると静かに一口飲んだ。ふぅ、と小さくため息をつくナミに、そんな憂えを帯びた姿も素敵だとサンジは場違いな事を思う。
「ルフィのことよ」
「っ!」
ナミの言葉にビクリと体が硬直する。知っていたのか。気付かれていたのか。ヒヤリとする。
船長が船員の一人と深い関係にあるのはやはり不味いのだろう。ナミが男同士に対して偏見を持っていることはないと思う。
だが、とサンジは思った。悔しいことに、本当は認めたくないが、ナミがルフィを特別に思っていることをサンジは薄々気付いていた。自分と同じように、ルフィのことを想っている。そして、それはこの部屋にいる他の2人にも言えることだ。
「ぁ、ナミさん…」
やっと絞り出した声はみっともなく掠れていた。
ルフィとの関係がバレたことだとか、ナミからの怒りだとか、ロビンとゾロからの無言の圧力だとか。とにかくこの部屋のすべてがサンジを責めている気がして仕方がない。
「あのね、前から言いたかったんだけど、」
別れろ、と言われるのだろうか。もしかしたら船を降りろと言われるのかもしれない。それでも。それでもルフィを手放すことはできない。サンジはぎゅぅと手を握った。
「ルフィに痕を残すのはやめてちょうだい」
「ぇ、」
「アレ見る度に不快になるのよ」
だがナミからの言葉は想像していたものとは遥かに異なっていた。
「第一、ルフィに痕を残すのはルール違反じゃない」
何を、言っているのか。サンジの頭の中はぐるぐると嘗てないほどめまぐるしく回転していた。
痕とは、恐らくキスマークのことを言っているのだろう。ルフィのしなやかな脚の付け根に刻印した赤い花びら。他人に見られないようにと服で隠れる箇所に刻んだそれ。
なぜナミが知っているのか。
「ね、ロビンも何か言ってよ」
「そうね。私もあまりいい気分にはならないわ。でもそれを消すのも楽しいわよ。ナミ?」
ふふと笑うロビンにそれもそうだけどと呟くナミ。
「とにかく!ルフィにあぁいうものをつけないでよね!私達だって我慢してるんだから!」
そこで漸く。サンジは何故ここに呼ばれたのか理解した。サンジはルフィのものだけれどルフィはサンジのものではなかったのだ。ルフィはクルーのものでクルーはルフィのものだったのだ。
分かったサンジ君!と言われてサンジはなんとか分かったと呟いた。
ふらふらと立ち上がって、気付けばサンジはキッチンにいた。指に挟まれた煙草を深く吸って、ため息と一緒に煙を吐き出した。
「サンジっ!腹減ったー!」
「ル、フィ…」
バーン!とキッチンに駆け込んできたのはこの船のキャプテン。サンジは知らず知らずルフィを睨みつけていた。
「サンジ?どうしたんだ?」
「……、だよ?」
「ん?」
「どういう事だよ!お前はっ!オレのものじゃねぇのかよっ!」
ガンっとルフィの胸倉をつかみ、床に押し倒した。裏切られたとか騙されたとか、いろんな感情がサンジの中で暴れ回っている。ギラギラとした目で自分を見るサンジをルフィはきょとんとした顔で見返す。
「何言ってんだ?おれはおれのものだぞ?」
「ならっ!」
「でも。サンジも、ゾロもナミもウソップも他のみんなもおれのもんだ。」
真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに告げる。
サンジはあぁ、と両手から力を抜いてルフィの胸に顔を押し当てた。目頭が熱くて、胸が苦しい。
「サンジ!なぁ、おれ腹減ったー!」
ぐぅぅと鳴る腹は持ち主と似て全く空気を読んでくれなかった。
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