WJ
ナルト受短文
バレネタ。
もう疲れた、そう言って金色は今まで脅えていた表情を消し去り、クナイ片手に走り出した。え、と思う間もなく消えたかと思うと襲いかかってきた忍が次々に頭と胴体を切り離され只の肉塊となり地面に崩れ落ちた。
辺りに漂う血臭に眉を潜めながらも、気を失わなかったのは下忍であっても忍であるプライドからだ。
「貴様、何者だ」
血塗れのクナイ片手に立つ金色に声をかけたのは銀色だった。その問いに金色は綺麗に微笑んだ。
「うずまきナルトだってばよ?」
余りにも綺麗に笑うものだから一瞬その微笑みに見取れてしまい、誰も声が出せなかった。いつも馬鹿みたいに底抜けの明るさを持っていた金色の艶やかで大人びた表情。ごくり、と喉が鳴ったのは誰だったか。
「オレってばもう疲れちゃったんだよねー。」
ぽたり、クナイの先から赤が一滴落ちる。
「弱い癖にプライドだけは高い奴等だとか。大した努力もせずに男を追っかけ回してる奴等だとか。見てるだけでダルいってのにプライドを刺激しないように弱いふりしてあげたらこれ見よがしに見下してくるし?それにさ、たかが数十人の相手に何手こずっちゃってるわけ?確かに足手まといはいたけどさもう少し何とかならないの?それで本当に上忍?もう1回下忍からやり直したら?弱い奴等は弱いなりに立場を弁えろよな。……お前等さ、見てるだけで本当、不愉快、だってばよ?」
綺麗に微笑んだまま吐き捨てるように言う金色に誰も言い返すことなどできなくて。けれどその中の1人だけが前に進み出た。
「ったく。俺も連れてけよ?」
「シカマル…?」
頭をボリボリ掻きながら、金色の隣に立ちくるりと此方を振り向く彼。意味が分からぬと目を白黒させる銀色達を鼻で笑って、所詮その程度か、と呟いた。
「今更だろ。と言うことで俺等下忍辞めるから。皆さんとてもクダラナイ毎日をありがとーございました。もう会うこともないでしょうがお元気で。」
「じゃーな。」
ざざ、と風が強く吹いたかと思うと2人の姿は掻き消えていた。
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海豚と鳴門
「イルカせんせ」
どこか甘く少し幼い声に名を呼ばれ、イルカは振り向いた。下の方にフワフワとした金色がいて、その暖かそうな色に誘われるまま手を伸ばした。
伸ばしたら金色は一瞬体を強ばらせ、目を堅くぎゅぅと瞑った。
あぁ、またこの子は…。
湧き上がる不快感を悟られぬよう押し止め、幾分か乱暴に頭をかき混ぜた。思ったより柔らかい髪が指に絡みつきスルリと零れ落ちる。
「せんせ、痛いってば!」
ちっとも痛そうじゃない声と顔で言う金色にほぅ、と安心して最後に軽く頭を叩いて手を離す。
「すまん、すまん。」
「もう!笑って言うなってばよ!」
ムキー、と楽しそうに怒ってその次にはお決まりの言葉。
「せんせ、一楽連れてってばよ!」
「えー、またか?一昨日も行っただろ。今日は家で鍋にするぞ!」
「えー!!ラーメンが食いたいってば!」
「じゃあ、ラーメン鍋にするか。野菜たっぷり入れて。」
「ラーメン鍋?すげー美味そうだってばよ!!」
頬を膨らまし、そっぽを向いたかと思うと次の瞬間には満面の笑みでイルカを見上げてくる。くるくる変わる表情は忍らしくないが、それはこの子らしくて良いと思う。
右手で一回り以上小さな手を握りしめ、2人で歩く。
人通りの多いところを通り抜けようとすれば、小さな手に力が入るのが分かった。ちらっと様子を伺うとどこか表情が強ばっていた。
明らかに蔑む視線を投げ掛けてくる里人。気づかないふりをして歩き続ける。途端、ナルトの動きが止まった。
「ナルト?」
どうした、と言わなくてもナルトの表情で分かった。ナルトの視線の先。数人の男。
あぁ…。みぃーつけた。
「…ナルト、なんか欲しいもんでもあったか?」
「ぇ、あ、何にもないってばよ!」
慌てて笑顔を見せるナルトにそうか、と微笑んで再び歩き始めた。
「せんせ、洗いもんこれだけだってば?」
流しの前にナルトが立って言う。準備をしたのがイルカなら後片付けはナルトがする。
イルカはコップを流しに持っていくとナルトの隣に並んだ。
「これで最後。それじゃ、ナルト洗い物頼んだぞ。先生ちょっと忘れ物取りに行ってくるから。」
「はーい!気をつけていってらっしゃいってば!」
行ってくるな、ナルトの背中に声をかけてイルカは扉を開けた。
ニタリ、口を弧に描き闇夜に溶け込む。大丈夫、忘れ物はすぐ見つかる。
右手に持ったクナイが月の光に反射した。
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ハヤテさんとナルト
※案山子好きさんは読まない方が良いです。
※読んだ後の文句は受け付けません。
Are you ready?
「カカシせんせー!」
でかい声を出しながらドタバタと走ってくる子供。仮にも忍びなんだからもう少し静かにしなさいよね、なんて言ってもこの子にはどうせ無理なんでしょうけど。
「せんせー、どうしたってば?」
直ぐ傍まで来て首を捻る子供の頬に、赤黒い痕。
「あれ。ナルト、それどうしたの?」
痛そうだね?
「え、あ、っと。しゅぎょー中に転んだんだってば!」
名誉のふしょーだってばよ!
「ふーん。まぁ、気をつけなよね。」
なんてね。ばっちり見てたよ?大の大人4人掛かりで殴る蹴るの暴行受けてたんだよね。
助けた方が良いかなって思ったんだけど、此も修行の内だと思って辞めといた。俺って生徒思いでしょ?
「あっ!ハヤテ兄ちゃん!」
「ナルト君、こんな所に居たんですね。ゴホッ…探したんですね、ゴホッ。あ、カカシさん、こんにちは。」
何其れ、俺がナルトのおまけみたいな言い方。別に良いけど。俺はどーも、とだけ返事をした。
「ゴホッ、ナルト君、荷物はどうしたんですか?」
「あーっ!家に忘れてきたってばよ!!取りに行ってくるってば!」
「そうなんですか、ゴホッ。じゃあ此処で待ってるんで取ってくると良いんですね。」
「すぐ戻って来るってば!」
待っててね!
叫びながら走るナルトの姿が遠くなった。ってか、お前ら仲良しなんだね。びっくりしちゃったや。特に興味ないけど。
「ごほっ、あの痣…」
「あ、あぁ、あれね。修行で転んだんだってさ。」
まぁ、間違ってないよ。
「そうなんですか。ごほっ、彼は頑張り屋さんなんですね。」
ぷぷ、お前ってお気楽だね。あんなのどう見たって殴られた痕でしょーが。此だから弱い奴は厭なんだよね。まぁ、真実を知った処でお前なんかがどうしようも出来ないだろうけど?
「カカシさん」
「何?」
早く帰りたいんだけど。
「火の粉はね、ゴホッ、大なり小なり早い内に消すのが1番なんですね。」
は?
「火事になると困るじゃないですか、ゴホッ。あぁ、煙草も嫌いなんですね。」
何言ってんのか分からないんですけど?
「煙が駄目なんですね。ゴホッ、目に凍みますから。」
「ハヤテ兄ちゃーん!!」
灰皿も、なんて更に意味の分からないことを言いかけた時ドタバタとナルトが帰ってきた。此幸い。じゃあね、と言って離れた。
ほんと、何が言いたかったんだか。意味が分かんないよ。ま、分かりたくもないんだけど。
さてと、お仕事に行きますかね。
とん、と軽く地面を蹴ってカカシはその場から消えた。
あぁ、呆気ない。久々のSランク任務楽しみにしてたのに、笑えるぐらい弱っちくて。楽しむ暇もあったもんじゃない。俺が強すぎるのがいけないんだろうけど?
もっとこう、心が高鳴るような事ないのかね。そう例えば今日見た狐狩り、だとか?
思い出すだけで笑っちゃいそうになるんだよね。無様に倒れて、禄な抵抗も出来ず只泥だらけになるしかない姿って。
っと、あれってもしかして、もしかする?
里に帰って火影様の元へ向かう途中、目の端に入った金色。まぁた、やられてるんだ。
報告書提出しなきゃと思ったけど少しぐらい良いよね。俺、アイツの担任だし?修行を見るのもお仕事だもんね。
さてと、楽しませて貰いましょうか。
殴ろうと手を振りかざす里人にワクワクが抑えらんない。勢い良く振り降ろされた手は右頬にクリーンヒットかな?
って、思ったのに。
なんで、そいつの手がなくなったの。ブシュ、と飛び散る赤に叫ぶ里人。けど、次の瞬間には全員赤。
1人頭から赤を被った立ってる金色が、クッ、と笑ったかと思うと此方を見上げてきた。
「カカシさん、」
え?
「降りてきてくださいよ」
「お前、誰?」
ナルトでナルトじゃない奴にクナイを構える。
「分からないんですか?ゴホッ、」
あ、と思うと同時に目の前のナルトは不健康の代名詞、ハヤテになった。
「お前、どういうつもり。」
「火の粉を、消してるだけなんですね。」
意味が分からない。
「大切なものを外敵から護るのは当然なんですね。」
もしかして狐の為?
「こんな事して只で済むと思ってんの。」
「バレなければ問題ないんですね。ゴホッ…。目撃者は消すだけなんです。」
其れって俺を殺すってこと?
「お前なんかが俺にかなうと思ってんの。」
くく、冗談にしては面白くないよ。
「カカシさん、その高慢な考え止めた方が良いんですね。ゴホッ、」
……言ってくれるね。もう知らないよ。お前絶対、楽に殺してやんないから。
遠慮なしにクナイを投げつける。
「ゴホッ、遅いんですね。」
え、
背後に誰か。
目の前は赤。
「煙さえも赦せないんですね。」
其れで、暗転。
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うずまきナルトと言えば、派手な服にドタバタと五月蝿いうすらとんかちのドベだ。所謂落ちこぼれ。そうだった筈だ。
其れが何故、全身黒尽くめの忍達に跪かれている?
混乱した頭の中で解るのは目の前にいる忍び達が表舞台では決して見ることのない暗部だということ。傍にいるだけでピリピリとした空気に圧倒されそうになる。
「それで状況はどうなっている。」
いつも馬鹿みたいに明るい声が驚くほど冷たくて、けれど高圧的なそれは強者の威厳があった。
「はっ、此方の動きを予め知っていたのか複雑な術が張り巡らされ重軽傷者が多数出て居ります。しかし敵の数は約半数になりました。」
「術者は?」
「複数いると思われますが、未だ発見出来ません。」
「解った。オレが出る。医療班を組み重傷者から救助に当たれ。其処の2人はオレと来い。」
「「「御意に」」」
ざっ、とナルトに頭を垂れたかと思うと次の瞬間には消え去っていた。
「えー!ナルト行っちゃうのっ!?先生も一緒に行ってあげるよ?ね、良いでしょ?」
「うっさい、黙れ。」
「お、おい、待てよ!ドベ!!」
「何?」
ドベ、と呼ぶにはかなりの抵抗があったが今更ナルトと呼ぶことも出来ず思わずそう言えば、実に冷たい反応をされた。恐怖に僅かに体が震えたがぐっ、と力を込めそれを留めた。
「お前、どういうことだ…」
「どうって見たまんまじゃない?なに、騙してとか言うつもり?悪いけどさ、これも任務なんだよね。」
「……っ」
「言いたいこと無いなら行くから。」
「ナルト!!お前はなんて健気なんだ!!」
「……は?」
俯いていたサスケが急に顔を上げたかと思うと意味の分からぬ事を叫びだし、ナルトは実に間抜けな反応しか出来なかった。
「分かってる、分かってるぞ!俺に嫌われまいと今まで隠していたんだろう!」
「え、いや…」
「だが、大丈夫だ!安心しろ!俺はどんなナルトでも受け入れるぞ!むしろそんなに強いなんて流石俺が選んだだけある!何、心配するな、俺もすぐ其処まで追い付くさ。なんだったらナルトが俺に修行をつけてくれればいい!」
「あの、だから…」
「手取り足取り腰取り、教えてくれればいいさ。あぁ、腰取り教えるのは俺の方だがな…。」
「ちょっと!!何言ってんの!腰取り教えるのは先生なんだから!」
「はっ!黙れこの中年が!!貴様よりピチピチ若い俺の方がナルトにはお似合いなんだよ!」
「何をっ!サスケみたいな若造より経験豊富でテクもある先生の方がナルトには似合ってるんだよ!」
ギャアギャア低レベル過ぎる事を言い合うサスケとカカシにナルトはうんざりと溜め息をついた。
「ナルト、あんた苦労人ね…」
「サクラちゃん…」
「此処は私がなんとかするからあんた行ってきなさいよ。大変なんでしょ?」
「サクラちゃん…っ!ありがとうっ!!」
今度サクラが食べたいと言ってた甘味屋に連れて行ってあげよう、そう思いながらナルトはその場から消えた。
「はっ!ナルトは何処に行ったんだ!?」
「ナルト酷いよー!先生置いていくなんてー!」
「黙れ、この変態どもが。」
数分後には2人を地面に沈めるサクラがいた。
おまけ!
ただいまー。なんか疲れてんな?
あぁ、あれか。俺も手伝えたら良かったんだけどさ…
え、あ、違うのかよ。へぇ、バラしたんだ。どうだったんだ?すげーショック受けたんじゃねぇの?あいつプライドだけは高いからな。
俺も見たかったぜ。任務で里から離れてなかったらなぁ…
え、は?変態が増え、た?は、はは!
まさかカカシに続きサスケも、か?
だーー!マジかよ!!お前は…。、たっく!
あ?怒ってねぇよ。いいから、ほら、疲れてんだろ?寝ろよ。
ん、いるって。俺も寝るし。あぁ、明日も一緒だ。久しぶりにゆっくりしようぜ。
ん、おやすみ。
…………はぁ。
そろそろ大掃除にかかるかな…。
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