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WJ
代償※
藍染隊長が酷いです。

恋次が可哀相です。

一護はいつも素敵です。

大丈夫ですか?














鮮やかな橙色に目を奪われた。

笑顔に胸が高鳴った。

だれかと話す所を目にしたら無性にイラついて。

これが恋なんだと自覚したら、その気持ちは急に加速した。

手に入れたいと願った。




【代償】




任務で現世に降りた恋次は一護の顔を見ようと一護の家に寄った。


「一護〜?」


小さく窓をノックするが返事はない。

もう夜は更けてしまい、明日も学校がある一護が寝ていてもおかしくはない。

一護を無理やり起こしたくはないが、でも一目でも顔を見たい。

窓に手を掛け横に引くとそれはアッサリと開いた。

不用心だ、と思いながら不法侵入するとベッドの横に屈んで、寝ている一護を見詰める。


「……。」


規則正しく動く胸に、薄く開いた唇。

頭の中で何度も貪ったソレが目の前にある。

ドキドキと五月蠅いぐらいに心臓が脈打った。

少しだけなら…と、ホンの一瞬。


「っ!!」


触れるだけのキスをしたら。

あまりの甘さに、再び一護の唇に食らいついていた。

薄く開いた唇に自分の舌をさしこんで、一護のソレと絡める。

口腔内を余す所なく犯して、一護の唇を堪能する。


「んっ…」


一護の微かな呻き声で一瞬にして我に返ると、もの凄い勢いで窓から出て行った。










昨日の夜の事を思い出すと、ニヤけそうになる顔を引き締めて歩いていると。


「少しいいかな、阿散井君。」


「藍染隊長。」


かつての上司が珍しく困った顔で恋次を引き止めた。


「雛森君が長期任務でいなくてね。少し手伝って欲しいんだ。」

「あ、はい。全然良いですよ。」


頼ってもらえるのはそれだけ自分を信頼してもらっていると言うことで。

自分に出来ることなら何でもしよう、と張り切って五番隊の隊舎に足を踏み入れた瞬間。


『縛道の一 塞』


え?と思う間もなく恋次の体は床に打ち付けられ、四肢の自由を奪われた。


「あ…いぜん隊長?」


何が起きたのか分からない、と見上げたら、藍染は薄く笑って。


「人のモノに手を出しちゃいけないって習わなかったかい?」


子供に言い聞かせるような優しい声色なのに、ゾクリと体が震えて嫌な汗が恋次の体を包んだ。

























藍染に体を引きずられ、物置に押し込まれた。

そして椅子に座らされ、両手は後ろで縛られ、口は布で覆われた。

さらに縛道で四肢の自由を奪われ、動くことなど不可能だ。

これはもしかしたら鍛練の一つかと思ったが、その考えはすぐに打ち消した。

僅かだが、しかしはっきりと藍染の目には怒りが含まれていたからだ。

何か藍染を怒らせる様な事をしたのか、と思いを巡らすが思い当たる様な事はない。

ただ、恋次の何かが藍染の逆鱗に触れたのは確かで。

すのこ状になっている物置の扉から藍染の様子を窺う。

藍染はやはりどこか機嫌が悪そうだ。


自分に非があったのだろう、と恋次がこの状況を甘受しようとした時、誰かが入って来た。

その途端藍染は嬉しそうに笑って、誰かに向かって手招きをした。


(……一護?)


あまり接点のない2人が何故?と恋次が疑問に思っていると、藍染が軽々と一護の体を抱き上げた。


(え…?)


「ちょっ、雛森さんがっ!」

慌てる一護に藍染は楽しそうに返す。


「長期任務でいないよ。」


「誰か来るっ!」


一護の言葉に、恋次はドキリとした。

同じ空間に恋次はいるのだ。

だが、藍染は恋次の事など忘れ去っているかの様に答えた。



「僕は任務でいないことになってる。」


「…職権乱用だ。」


「君との時間の為ならなんだってするよ。」


一護は「バカ」と小さく呟いて藍染の事を愛しげに惣右介さん、と呼んだ。


藍染は嬉しそうに笑って、一護の頬を撫でるとどちらからともなく唇を合わせた。


(…っ!)


そのまま藍染はスルスルと一護の腰紐を取り去ると、ゆっくり死覇装を脱がした。


(っ!?)


恋次は思わず息を呑んだ。

死覇装の下から現れた一護の身体には、何かの病気かと思う程に赤い点がちりばめられていて。

それは明らかに情交の痕。


(う、そだろ……)


子供にだって藍染と一護の関係など理解できる。


「んっ…!」


徐々に深くなっていくキスに一護が甘い声を零す。

熱を孕んだ一護の目が藍染を見詰める。


「惣右介さん…」


そんな一護は見たくないと恋次はギュッと目をつぶった。


「阿散井君とは何もないよね?」


急に自分の名が出て、恋次は閉じた目を思わず開け藍染たちを見詰めた。


「恋次?なんで?」

「昨日の夜、阿散井君が一護の部屋にこっそり入っていったからね。」


恋次は顔からサァァッと血の気が引くのが分かった。

あの時、自分の行動を藍染に見られていたのだ。

だから。

だから、こんな事をするのか。


「恋次とは何にもないよ。」

「本当に?」

「ただの友達だよ。」


一護の言葉にツキン、と胸が痛くなる。


「絶対?」

「絶対。惣右介さんだけ。惣右介さんだけが好き…」


失恋。

いや、そんな優しいものじゃない。

芽生えた思いは告げること無く、踏み躙られ呆気なく散った。

恋次が悲しみに呆然としていると、藍染が恋次の方を見て、クッと笑った。


(なっ!!)


藍染は一護が誰が好きで、誰の物なのか、恋次に解らせるためにこんな事をしたのだ。

残酷すぎる仕打ち…。

気がつけば、幾筋もの涙が恋次の頬をつたっていた。

恋次はごめんなさい、ごめんなさい、と何度も何度も謝った。

無情に進んでいく行為。

一護のなまめかしい声が恋次の鼓膜を犯す。


「あぁっ…ん」


卑猥な水音が部屋に響く。


「やぁ…ぁっ!そ…すけっ!!」


好きな奴が他の男に抱かれているのを見て、下半身を熱くする自分に吐き気がする。


「そ、すけっ!!そぉすけぇ…」


ただ、ひたすら。

早くこの時間が過ぎることを切に願った。























「ご苦労様、阿散井君。」


どのくらい時間が経ったのか。

いつの間にか恋次の体を拘束する物は無く、目の前には藍染がいた。


「ぁ、いぜん隊長…」


怯えた声で藍染を呼べば何時ものように穏やかな笑みで恋次を見下ろしていた。


「あぁ、大変だ。手首から血が出てるじゃないか。」


先ほどの凶行が嘘のように、丁寧に鬼道で傷口を治療してくれる藍染。


「ありがとうござい…ます」


素直に礼を言った瞬間。

藍染が鋭く恋次を睨み付け。


「次は無いと思え。」


ドン、と藍染の霊圧が高まった。


「っ!!」


息ができない程の恐怖。

灰になってしまいそうな程の霊圧。

指一本、動かす事ができない。

冷や汗が恋次の頬をつたい、床に落ちた瞬間。


「さ、これで大丈夫だ。」


一瞬にしていつもの藍染に戻った。

だが、恋次はしばらくの間動く事ができなかった。


end。


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あきゅろす。
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