Heaven is a place on earth
ふと、下腹が膨らんだ若い女が目に入る。
子供や赤ん坊を好む奴もいるが、気が知れない。
育ち切らない子供や赤ん坊はまだ神の国に近い所にいて、私には、その血はあまりに神聖過ぎる気がするのだ。
果汁百パーセントの新鮮なジュースを飲むようなものだ。
気が知れない。私は程よく熟成された、美味いワインが好きなんだ。
今時ありえない、と知人に良く言われるクラシックな黒い外套を私に渡して、
「行こう」
と彼が言った。
堂々と正面から出た所で、ばさりと外套をひるがえす。首の辺りの留めづらいボタンを、彼が掛けてくれる。
帽子をかぶれば、十九世紀ロンドン───みたいな格好だが、ハロウィンの夜だからかまわないだろう。
「ちょっと待て」
歩き出した私を止め、向かい合ってぐいと顔を上げさせる。私はされるがまま、彼を見上げた。
「子供みたいだな。パン屑が…」
苦微笑と一緒に唇にのばされた手を、私はふいと避けた。結構な身長差のある彼を、上目遣いで見上げる。
「Trick or treat」
少し間を置いて意味を理解した彼は、やれやれと溜息を吐く。
外套ごと腰を抱くようにして私を引き寄せ、金の目でじっと見つめると、彼はいつもよりロマンティックな、長いキスをくれた。
HIRENさんリク
「吸血鬼」と「狼男」
ハロウィンなんでフライング公開にしてみました。
タイトルは
Belinda Carlisleの
Heaven is a place on earth(天国はこの地上にも)