ワールズエンド(鋼-ヒュロイ前提ハボロイ
錆びてゆく指先を
朽ちてゆく唇を
せめて最後に
ワールズエンド
シリアスは似合わない体質だ。ジンマシンが出る。
だから、こんなのは質の悪い冗談だと、いつもの様に笑い捨てて欲しい。
黒い棺。
あんた、白い花なんて自分に似合うと思ってるんですか。
らしくなく、泣き腫らした目のホークアイ中尉は朝から一言も口をきかない。
誰も彼もが悲愴な顔で、色んな所が欠けたままの彼を花で埋めてゆく。俺は、冷たくなって固まった彼の指をとり、口付けたい衝動に襲われて、じっと堪えた。
「───私はもう誰も裏切りたくない。自分を含めて、誰も」
彼が言った言葉を思い出す。
「私は、私を裏切れない。…私の心をだ」
書類を繰りながら、俺と彼は二人きりで机を挟んで向かい合っていた。
湯気の消えたコーヒーと、二人分の呼吸。そして、残酷な言葉。
「…私は、お前には応えられないよ」
どこかで予想していた状況だった。彼の静かな声も、自嘲的な微笑も。
良き父で良き夫で、彼の、ただ一人とも言える親友。
だった人。
「私はまだ、忘れられない」
「だったら…」
「忘れる事はないだろう」
そんなきっぱり言わなくても、と俺は苦笑したのだった。あまりに、遠くを見る彼の目が辛くて。
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