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GUARNIGIONE
「上官に向かってそういう口のききかたはないんじゃないかな、周藤くん」
 派手な男は長机の上に腰掛けると、日本人離れした長い足を組む。
「───…上官?」
「明日付けでね。特殊隊の副隊長になる」
「…なら、IDは?あるはずだろう」
 男は制服の袖をぐいと引き、右腕の手首の辺りを二人に向けた。途端に、周藤の携帯パソコンに照会済みのファイルが出る。
「体内埋没型のIDだよ。手首を切り離さない限り奪われない」
 いいだろう?と微笑む。
「…紫暁寺」
 周藤が名前を読み上げると、篠戸が構えていた銃を下げた。
「紫暁寺?あの、狂犬紫暁寺?」
「そう。国家特別機動隊で狂犬と呼ばれた、その、紫暁寺」
 自ら狂犬と名乗り、紫暁寺は目を細めて笑った。
「これからよろしく。周藤くん、篠戸くん」





「本当だったのね。あの紫暁寺が特殊隊に入るって噂」
 仁科が真っ黒なコーヒーを啜りながら人ごとの様に言うのに、周藤が顔をしかめた。
「噂なんて聞いた事ないですよ」
「情報遅いんじゃない」
 つらっと言い返されて、周藤はますます渋い顔になる。
「でも、特殊隊に入るって事は、能力持ちだろ?」
 言いながら、篠戸は周藤が残した玉子焼きを口に運ぶ。
「国家特別機動隊に居たって事自体が、特殊と言えば特殊だけどな」
「僕の話?」
 耳元で囁いた声に、篠戸は思いきりむせた。席を立とうとした周藤の腕に、意外にも強い指先が食い込む。
「動くな」
 途端に、抗いかけていた周藤の動きが止まった。
「何を…!」
「きみもだ、篠戸。座っていろ」
 立ち上がりかけた篠戸がゆっくり椅子に戻るのを、仁科が不思議そうな顔で見た。上官とは言え、そう簡単に人の言う事をきくような二人ではない。
 紫暁寺は周藤の腕をそっと放して、テーブルに着く。
「───許可する」
 その声が響いた途端、周藤と篠戸は立ち上がって紫暁寺から素早く離れた。
 嫌悪にも似た複雑な顔の二人に紫暁寺は目を細めて微笑する。
「…気持ち悪」
 無意識に呟いた篠戸が慌てて口をつぐんだが、紫暁寺には届いてしまっていた。薄い唇がますます笑みを深くする。
「これが、僕の能力」
 仁科がコーヒーを啜る。
「物に宿る記憶を読み、電脳世界を支配するように、僕は他人を支配するんだ」
 紫暁寺は二人の視線を楽しむように笑っていた。
「この声でね」





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