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Cioccolato-2.14



「ありがとう。
でも、きみの気持ちは受け取れないよ」


Cioccolato-2.14


木枯らしの中、恋人が現れるのを待っていた俺は、ほんの数分で凍り付いた体で彼の行く手に現れた。
「伊南〜…」
「高崎か。柱の影から急に出て来るなよ」
殴るところだった、と言う恋人はすでに拳を構えていて、俺はひやりとする。伊南は空手をやっているのだ。
「何やってんだよ、先に帰ってろって言っただろ」
主人を待ち続けた忠犬ハチ公にも、伊南ならこう言っただろう。
俺は並んで歩きながら言う。
「経理の田岡さんに本気チョコ貰っただろ」
「何でお前が知ってるんだ」
そう答えた伊南の手には、有名な洋菓子屋の袋が何個もある。
一番目立つ濃い金の袋──俺でさえ貰えなかったゴディバ。
「恨めしそうな顔すんなよ」
そこまで言って、整った顔でにやりと笑う。
「あとで分けてやるから」
「伊南、そういう問題じゃ」
「何心配してんだよ」
俺の声を遮る様に、伊南が言う。
「何って、…」
「田岡さんはそりゃ、美人だ。
でもな、…でも、お前、俺が」
歩いていた伊南が急に足を止めて、俺は慌てて立ち止まる。
「俺、が」
俯いて、迷う様に口を閉ざす。
それから突然、手にしていた袋の中から、金の袋を俺に押し付ける。
「俺がどれだけお前を好きか」
早口で言って、今度は走る様な速さで歩き出す。
「…い、伊南…!」
慌てて追いかける。


俺が どれだけお前を好きか、
お前は
さっぱりわかってないな。


気怠いベッドの中。
二人揃って、会社で貰った包みを開けて。
「なあ、一哉。これ自分で買いに?」
俺は最後に、金色の袋を手に取る。
「……何か文句あんのか」
照れているのか、ぶっきらぼうに言う。
「ないよ」
可愛いな、とキスをする。
「言っとくけどな、高崎」
洋酒のきいたトリュフを味わっていた俺に、彼はにこりと笑む。
「ホワイトデーは倍返しが基本だそうだぞ」
しばらくの間があって、俺はその微笑に力なく、はい、と答えた。





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