いっしょにいたいの。
病める時も
健やかなる時も
貧しき時も
富める時も
いっしょにいたいの。
放課後の街は、危険な香り。
「パンツ見えてる、藤原」
「うっせーな。いいんだよ」
「藤原くんはイチゴのパンツでーす。100%ですよー」
「あほか」
藤原が笑うから、俺はひどく嬉しくなる。
好きだなあと思う。
藤原が。
「暑っちーぃ。玉置、アイス食わね?」
藤原が言うから、コンビニ寄って、マガジン立ち読みして、アイスを買う。
藤原はいつもジャイアントコーンの赤いのを買うけど、上手く開けられたためしがないから、俺が開ける。
「はい」
「さんきゅ」
俺はそれから、自分の分のガリガリくんを開けて、ちょっとゆるいソーダ味の氷をがりがり食べる。
パンツ見えそうなスカートの女の子達が、ベンチに座った俺達の前を暑い暑い言いながら歩いていく。
「夏だねえ」
「見りゃわかるっつの」
入学した時に席が隣り同士になって、仲良くなって、音楽だったり漫画だったり、好きになるものも似ていて。
「なあ、女子ってさぁ」
コーンの部分を食べながら藤原が言う。俺は、とっくに無くなったガリガリくんの棒を奥歯で噛んで藤原を見る。
「くそ暑いのに手とか腕とか組みたがるよな」
組んだことあんの、とは言えなかった。きつい口調になりそうだったから。
アスファルトがじりじりと西日を反射してる。制服の膝の上に投げ出された藤原の手が目に入った。
それは少しひんやりしていて、少しだけぬるい。
「あ?」
「あ」
それが───俺の手の中にあるそれが藤原の手だという事に気付くまで、時間がかかった。
瞬間、頭が真っ白になる。
俺を見てる藤原の目が、握られた手と俺の顔を行ったり来たりする。
放さなきゃ、と思うのに、放せない。
笑って、誤魔化す。
簡単なはずのそれができない。
「───なに?」
藤原が訊いてる。
答えなきゃ。
笑って、誤魔化して、答えなきゃ。
「…ふじ、わら」
無理やり出した声が、みっともなくひっくり返った。
「───なに」
「藤原」
手、つないで帰ろう。
俺達は互いに絶句した。
藤原の顔が、首から上がってきた赤に染まるのを、俺はぼんやり見てた。ぼと、とジャイアントコーンが地面に落ちる。
俯いて、ばかじゃねえの、と藤原は耳まで赤くして呟いた。
けれど藤原が、俺の手を振り払う事は無かった。
ばかじゃねえの、と藤原はまた呟いた。
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