がんじがらめ
束縛。
身動きがとれない。
ああ、今の私そのものじゃないか。
彼が私の頬に唇を寄せる。
たったそれだけで体がばらばらになってしまいそうなんだ、と言うと、猫のような琥珀の目を細めて笑う。
「可愛いことばっかり、言うね、舘木さん」
濡れた舌先でぺろりと目元を撫でられて、慌てて目をつぶった。
彼の、思うままになってしまう。
「トラくん」
なあに、と甘い声が私を引き寄せて、包み込む。
まだ陽の高いうちから、庭に面した縁側で、こんな事をしていていいのだろうか。
そう思うけれど、私を抱き込んだ彼の手は、私を逃がす気はないらしい。
陽の光はやわらかで、このまま永遠にこの時間が続きそうな、そんなことばかり思う。
「トラくん…」
声にならない声で呼ぶと、眠そうな猫そっくりに目を細めて、喉の奥で鳴くような声を出した。
私は少し笑う。
彼も、微笑む。
長い指が私の頭を探るように撫でて、キスして、と彼が囁く。
私がためらうと、彼は微笑んだまま私を引き寄せて、所構わず何度もキスを落としていく。
笑いながら、私達はきっと同じように、ずっと続けばいいと思っていただろう。
この、優しい束縛が。
永遠に。
お題提供:ホシトミズナミ様
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