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昔話(YLお題

 懐かしむ顔で、俺に笑った。
 久し振りに会った叔父の印象は、笑顔の硬い大人、だった。



「何見てる?」
 フローリングの床にアルバムを広げていた俺に、彼が訊いた。振り返ると起きたばかりの寝癖頭を気にしている。
「んー。アルバム」
 ぺたぺたと素足の足音がキッチンへ向かう。
「アルバムなんかあったのか」
「向こうの家引き払う時に、持ってこれた分だよ。見る?小学生の俺」
「…あのまま育たなきゃ良かったのにな」
 呟いてコーヒーを啜るのを、聞かなかった事にする。
「一緒に遊園地行ったよね」
「…水族館もな。マグロを持って帰るって言って」
「…忘れてよ、そういう事は」
「動物園では白熊の檻から離れないし」
「ライオンもね」
 苦笑して開き直る俺の横に、彼が座る。
「会わなかった間何してたの?」
 中学に上がってから、彼と会った記憶が無い。
「就職活動」
 コーヒーを置いて、煙草に火を点ける。
「ふうん」
 目を合わさないのは、追及を嫌う仕草。


俺の知らない彼と
彼の知らない俺が

二人で並んでいる。


「ねえ、動物園行こうよ」
「いやだ」
 灰皿を取りに立ち上がりながら、俺の声に被せる様に即答する。
「なんで?行こうよ。水曜定休でしょ」
「いやだ。たまの休みぐらい家にいる」
「家も店も変わんないじゃない。二階なんだから」
「いやだね。また迷子になるだろ、お前」
「迷子?ならないよ!幾つの時の話だよ」
「五歳」
「俺もう二十六なんですけど…」
「とにかくいやだね」
「ええー…」
「今度な、今度」
 そう言った彼は、あの頃とは違う

優しい顔をした。








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